見出し画像

冬のソルジャー

どうも。

KONGです。

冬が始まったということで、本日は高校時代の冬にあった話・・・。

皆様も記憶にあるだろう。

小学校に1人はいた、年中短パン半袖の『冬のソルジャー』

「別に寒くないし。」


「長袖なんて、女子が着る服じゃん?」


理由は人それぞれ。

そしてKONGも、そんな『冬のソルジャー』の1人だった。

だが、あくまでそれは小学生の頃の話。

高校生にもなれば、大人同様に寒さの耐性は低くなっていくのが現実。

体育の授業では全員、上下ジャージ。

ポケットに手を突っ込み、寒さに震えている風景が当たり前だった。

そんな縮こまっている生徒たちに対して、体育教師があるトンデモ発言をした。

「よーーし!冬場も半袖短パンだった奴は、通知表5をやる!」


当時の通知表評価は5段階。

当然、常にボロボロの成績を納めていたKONGだったが、『保険、体育』だけはほぼ毎回5を取っていた。

KONGにとっては、まるで必要のない、馬鹿馬鹿しい新ルールである。

しかし。

(・・・これは目立てるチャンスかも?)

ついつい、色めき立ってしまった。

こうしてKONGはその日から、学年でただ1人、体育の時間はどんなに寒くても半袖短パンの、『冬のソルジャー』スタイルを決行する事になったのだ。

棒高跳びだろうが、ハードルだろうが、紺色のジャージの軍団から1人だけ白シャツに青い短パンが明らかに浮いており、授業中に校庭を見ている窓際族達も、KONGを見つけると手を振ってくる。

『みにくいアヒルの子』『スイミー』

歴代の名作達に登場する、1人だけ見た目が違うキャラクターという存在は、華々しい最後を飾っているではないか。

この授業中だけではあるが、まるで主人公の様なポジションになったKONGは、周りからのクスクス笑いがむしろとても心地よかった。

———————

冬場の体育の授業では、球技の日にサッカーをする事が多かったのだが、当然ここでもKONGはビブス(体操着の上から着る、背番号が書いてある赤とか黄色の薄いベストみたいなやつ)すら重ね着をしなかった。

そんなある日の事である。

いつもキーパーを担当していたクラスメートが

「今日、怪我して手が痛くてさ・・・誰かキーパー変わってくれない?」


と周りに聞いていた。

サッカー部所属の生徒が放つシュートは、想像以上に速く、固く、重く・・・恐怖すら感じることもある。

そんなボールを受け止めるポジションを、怪我した手でやらせるほど、KONGの性根は腐ってない。


「よし!俺に任せろ。」


こうしてここに、『冬のソルジャーキーパー』が爆誕したのだった。

———————

開始数分後。

自称『冬のソルジャーキーパー』にして『ゴールの守護神』であるKONGは、当然ゴール近くに陣取って、仁王立ちをしながら周りを睨み付けていた。

試合が進むにつれて、白熱する他の生徒達。

汗もキラキラと流れ始めている。

しかしその一方で、なかなかボールが回って来ず、殆どぼーっと立っているだけだったKONGの体温は温まることもなく、ただただ冬の風にさらされ続け、著しく下がって行く。

(ガチガチ…ガタガタ…。)

せめてポケットに手を突っ込みたいが、短パンにポケットはついていなかった。

(ガチガチ…ガタガタ…。)

早くボールが来ないかな…

そう思っていた矢先。

「行ったぞー!!!」


一本目のシュートが飛んで来た。

「っしゃああ!!」

自称、『冬のソルジャーキーパー』にして『ゴールの守護神』、又の名を『昭和の鉄壁"羅生門"』ことKONGは、何なくボールをキャッチング。

『バチンッッッッッッ!!!』

そう。

『ドン!』

ではなく、

『バチン!』

ボールが皮膚を叩いた。

いくら鉄壁のガードとは言え、衣類に関しては、真夏のビーチでバカンスをするように開放的なのだ。

KONGの腕や胸の辺りを、まるで鞭で叩かれたような痛みが、襲ってきた。

ヒリヒリするだけじゃない。

そこへ更に真冬の風が、真っ赤になった皮膚を撫でてくるのだ。

まるで拷問を受けているような気分だった。

そんな痛みを堪えながら、なんとか自軍にボールをパス。

すかさずキョロキョロと周りを見渡すKONG。

・・・ふと視界の中に、グラウンドの隅で、あまり意欲的に参加してないクラスメートが目に飛び込んできた。

試合になんてまるで興味なさそうに、ポケットに手を突っ込みながら、よそ見をしている。

そんな彼の両手首から先に、何やら白い布のようなものが見えた。

・・・あれは・・・もしや?

手袋がわりに使っている、『軍手』ではないか?



・・・シャキーン!



◤           ◥
 ユニークスキル発動!!
  「ジャイアン」!!
◣            ◢


KONGは、ボールの行方も気にせず、まっすぐにその生徒の元へ駆けて行った。

クラスメートから『軍手』を奪う事に成功したKONG。

これは凄いぞ。

手が温まるだけで、先程までの寒さが嘘のように感じる。

(こいつぁ楽しくなってきたぜェ!)

暖かさだけでなく、キーパーの楽しさまで感じるようになったKONGは、まるでギア2(セカンド)を初めて発動したルフィのように、湯気の立つような熱気のこもったプレイで、キーパーとしての責務を全うしたのであった。

・・・そして試合終了後。

元々のキーパーがKONGの元へやってきて、KONGの活躍をとても喜んでくれた。

「ありがとう、冬のソルジャー!
これからも、俺の手の怪我が治るまでの間、代わりにキーパーをやってもらえるかな?」




「ふっ。何を言ってる?
・・・そんなの、当たり前だろ?」


こうして。

軍手を手に入れ無敵となった冬のソルジャーは、みんなの期待を背に受けながら、サッカーの授業がある度に、いつまでもいつまでも、元気にキーパーをしていたとさ。。。

めでたし。
めでたし。

と、終わるわけもなく…




問題の通知表は『5』ではなく『4』だった。

もちろん、直談判をしたKONG。


「なぜだ!嘘つき!」



体育教師は言う。

「確かにオマエのガッツは褒める。



だがな。



・・・授業中の軍手は校則違反だ。」

こうして…。

ついに良い所が一つもなくなった通知表を自宅へ持ち帰ったKONG。

彼にはその夜、母親との新たなる激しい試合が待っているのであった。

それでは!

また!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?