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白鳥

[ 白鳥  ]

遠いシベリアの極寒の地から、白鳥達がV字飛行隊を編成しながら、僕の住む雪国にやって来た。
 温かな春に恋愛し出産する白鳥達は、育児を食糧が豊富で安全なシベリアで過ごし、秋には雪国に南に向けて旅立つ。
 長い距離を羽ばたき、天候に左右され敵に警戒しながら、遠くのゴール地点へ必死に飛び続ける。
 春に産まれヒナ鳥だった白鳥の子供は成長して、僕の住む雪国の町まで辿り着いた。 
 


[  一瞬の様な…  ]

「この子は大きくなったら、どんな大人になるのかな…?」と、3歳の誕生日を祝っていたのは、白鳥が飛来してくる11月頃だった。

 毎日を忙しく暮らし、子供の成長と、その時々の悩みを真剣に考えたりして…。
 そこらによく見かける親子の一緒に過ごす時間は、あっと言う間に過ぎ去り…、気がつくと子供から大人になっていた。

 あれが僕等夫婦が過ごした春と夏の季節だったのだのだろう…。
 無風の帆船の様にゆったりとし、船を漕ぐ船員の様に忙しくも感じたけれど、いつも心地よい微風が吹いていたのは、この子が小さな口で吹いていたからだった。

 
[ 飛翔 ]
 春になり白鳥が“北”へと渡る頃、この子の飛んで行きたい方向は、目をキラキラさせて“南”を向いている。

 雲一つない青空を、“南”へ羽ばたく白鳥の姿を眺めてる。
 願う様な思いで「翔べ…!」と。

 ……………… 終 ……………
 
 


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