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きつねの登場する絵本感想、10冊分詰め合わせ記事②


序文

以前、きつねが登場する絵本を10冊読んで、その感想をご紹介する記事を書いたのですが、こちらは第二弾です
前回のご紹介からこっち、更に意識してきつねの本探しをしてみたのですが、きつねの登場する本って世にたくさんあるもんなんですね
また、前回の記事に寄せられたコメントを参考にさせて頂いて、読んでみた作品もあります
コメントを下さった方、前回の記事を読んで下さった方、どうもありがとうございます


『きつねにょうぼう』

長谷川摂子 再話  片山健 絵 

男やもめ暮らしの家にある日突然麗しい女が現れて嫁となるが、正体は化生のものであったために夫と子どもを残して去る、『つるのおんがえし』や『雪女』を代表とする異類婚姻譚のひとつのお話です…
と、分かってて読んだのに、おそらく東北の方言のお話の文体と、荒々しく逞しい油絵の美しさに! すごくびっくりした作品です
雨の日に“いとしげな わかいおんな”が、びんぼうなひとりもんの男と出会い、流れるように夫婦となって息子も生まれ、幸せに暮らしていたのに、ほんのささいなきっかけで、母親はきつねである正体を息子に見せてしまって姿を消し、しかしとびきりの富と愛情を息子と夫に残す、きつねのにょうぼうのお話です
きつねの姿に戻ってしまうきっかけが、すごく可憐で類を見ない理由だし、家を出てからも田植えを一人で一晩で終えて息子に乳を飲ませてあげたりする…めちゃくちゃ素晴らしいにょうぼうさんなんです 三国一と言っても過言ではない
むしろきつねの尻尾が可愛いんだから、そのまま一緒にいればいいじゃない…
夫と子どもに別れを告げる場面が、澄んだ水田に逆さに映る一家の姿が、あまりに美しくて素晴らしいのです
そう言えば、こちらのきつねにょうぼうさんの鳴き声は(ぐえーん)だったのですが、以前読んだ『たぬきときつねのばけくらべ』に登場したきつねの鳴き声(ぐえんこぐえんこ)にちょっと似ててびっくりしました
地域ごとに分布している動物の鳴き声って、特色があったりするのかも知れないですね
あと、きつねの鳴き声って(コンコン)のイメージだけど、コンコン言ってるきつねが出てくる絵本は、今のところ読んでません そのうち見つかるかな


『キツネくんとツルくん』

木坂涼 作 洞野志保 絵  

画像の帯にもある通り、ツルにしてやられたきつねくんが「ツルのやつ、ゆるさないからなー!」と色んなしかえしを頑張るのですが、毎回ツルの方が一枚上手で「ツルのやつ、ゆるさないからなー!」が何度も何度も出てきちゃう、ほっこりきつねのお話です
題材はイソップ童話集からの翻案ですが、絵本自体は新しめの作品のため、絵柄も今風というか、きつねくんがずんぐりむっくりなデザインで赤いチョッキなんか着てて可愛いです 
そんなずんぐりむっくり感と共に、きつねくんの毛並みのさふさふサラサラしてそうな質感や、作中登場するお料理や食器、洋服、おうちに至るまで、ポップにデフォルメされていながらも、写実感もある絵が魅力的です
そして、イソップ童話には無い追加のエピソード部分は、そんなに尖ったものではない、ありきたりと言えばありきたりな内容なんですが
きつねくんがツルくんを想って走る姿、悲しみにくれる涙をこらえる表情、ツルくんからの手紙を見た時の驚きと喜び、楽しみなのを隠せない表情で眠りにつくときの笑顔、そんな思いを画力でまっすぐに伝えてくれる作品です
そして、ちゃんと裏表紙はツルと再会した姿なんですよね…
こういう、絵本の裏表紙が物語の結末の一部になってたり、ちょっとした後日談になってたりする演出は定番ですが、やっぱりあると嬉しい
そう言えば、この作品はタヌキもちょい役で出てくるのですが、タヌキとは張り合ったりしておらず良好な関係なので、やっぱりツルとは特別なんだな、と思いつつタヌキの絵ももっさりモフモフで可愛かったので、こちらのタヌキときつねのデザインで、他の童話も見てみたくなりました

『アトリエのきつね』

ロランス・ブルギニョン/作 ギ・セルヴェ/絵
中井珠子/訳

こちらは、前回のきつね絵本の記事のコメントらんにお寄せ頂いた情報により知った作品です 傘籤さん、ありがとうございます

山にアトリエを構える画家が、ひょんなことからアトリエの建物に迷いこんできたきつねと淡い交流をし、街中でも同じきつねとすれ違い、ずっとずっとその子のことを想い続ける話です
表紙のほの暗い美しさにまず目が奪われ、そしてページをめくるごとに、一匹のきつねの様々な表情、そしてこちらを見つめる眼差しから受ける緊張感に、こわごわしながら読みました
犬や猫を街中で見かけて、あの子は迷子か野良なのか、安全な住み処や食事を得ているのか、気になるけど何も出来ない、ただ案じるしかない、という経験をしている人なら、このきつねの想う作者の気持ちは痛いほど分かるはずです
でもこの作者さんの凄いのは、その思いを乗せたスケッチを執拗に重ね、自身がきつねと邂逅した場面や、その消息を人に尋ねた情景をとびきりの絵にしているところです
裏表紙の池のほとりの光がきらめくような絵は、本文とは趣がだいぶ違う どうかこうあってほしい、そんな切なる願いを感じます


けど、それにしても、画家さんはあまりにもきつねに心を奪われすぎ、囚われすぎているようにも読めます
絵にもそうした不安な執着心がこびりついてるように見える、あやうさも感じるのです
とびきりの美しい作画だけに、よりその偏執さがこわい
画家さんは娘さんがいらっしゃるようなのですが、ある日、親がきつねの絵ばかり延々と描いてはため息をついていたらすごく怖いと思います
(日本の“狐憑き”の連想で、この作品にはそぐわない感想なのかも知れませんが)


『キツネ』

マーガレット・ワイルド/文
ロン・ブルックス/絵
寺岡襄/

これまで出会った中でも、どう解釈したら良いか迷うきつねが現れました
登場するキャラクターは、片目を失った犬、翼を失ったカササギ、そしてキツネ
失ったもの同士が支えあって一心同体となって暮らしていたところに、ある日キツネが現れてふたりの仲を羨み、妬んで、裂く話です

心理テストにこういう内容のものがあった気がする
愛し合う2人の男女がいて
男が病気になってしまい
医者に助けを求めると女の身体を要求する
女はそれに応じるが、病気が治った男は貞節を失った女を責めて別れた
悪いのは誰か? というようなやつ

この作品では、上記の心理テストの中での、女が医者に身を任せた直後に相当する場面で話が終わるので、男である犬がどういう反応をしたのかは定かではないのですが、この物語の犬のキャラを鑑みるに責めたりしない、ただ悲しみそう
いやむしろ、女に相当するカササギはもう犬には会えない、死亡する可能性が高い
そのくらい、キツネはふたりの仲を徹底的に裂いた、恐ろしく悪どいキツネと言えます
しかし、きっと読む人によって誰を悪いと、許せないと、感じるかは違うとも思います
犬にずっとわがままを言い続けてキツネの甘い囁きにも乗ってしまったカササギも
犬とカササギの絆を羨んで呪うような悪意を抱いて罠にかけたキツネも
そんな想いを抱いているふたりを察せず仲良く三者のまま暮らそうとしていた鈍感な犬も、どれもじくじくと辛い気持ちにさせられるキャラクターです

この物語を心理テストに用いるなら、最も悪いのはキツネだと自分は回答します
しかし、最も感情移入出来るのは誰か? という質問でも、やはりキツネと回答します
色んな方の感想を伺いたい、しかし毒のように心を蝕まれる、そんな絵本です
こんな書き方をしていますが、すごく好きな作品です



『かもときつね』

ビアンキさく 内田莉莎子やく 山田三郎え

こちらのお三方の作品は、前回のきつね絵本記事の『きつねとねずみ』の項目でも拝見しましたが、改めてきつねの活躍する絵本、ということで読んでみました
まずは表紙のきつねさんですが、頬杖をついたアンニュイな表情がたまりません
柔和で優しげで、色気すら感じます
しかし本文でのきつねさんは、これと定めた獲物の鴨を秋から冬を経て春に至るまで、執拗に追い続ける精悍な狩人、いや狩狐です
それぞれの季節ならではの河川の風景や、水辺に集まる動物たち、水面の様々な水紋の表現など、やはり山田三郎さんの絵が素晴らしい
精密なペン画に単色で彩色されているページと、水彩のフルカラーのページがあるのですが、どちらも素敵です
しかしお話の方はなんと!『きつねとねずみ』とほぼ同じなんですよね…きつねが獲物に逃げられる、と言ってしまえばそれだけのお話です
きつねが獲物を取っ捕まえてボリボリ食べてる話は需要がないということでしょうか 自分にはありますが
山田三郎さんのきつねは、とにかく見た目がよろしいし、この作中では「ええい! いまにみてろ!」とか言う分かりやすい小悪党なしゃべり方なので、どじっこ愛され属性も感じてしまうのでした
きつねと鴨の追いかけっこ以外の、季節を印象づける見開きの一枚絵もそれぞれ趣向が違うので、ページ数は少なくてもとっても満足感があります
冬の風景と春の風景、どちらが好きですか? って難問を投げかけたい作品です
そして、きつねはしてやられてしまいましたが、飛び立つ鴨の絵の裏表紙もとても美しく、春の息吹も感じる一枚です



『きつね山の赤い花』

安房直子 作 えがしらみちこ 絵

きつねの出てくる絵本シリーズで、以前取り上げた『きつねの窓』の作家さんの安房直子さんの絵本を見つけたので読んでみました

おとうふ屋さんの娘のゆみ子ちゃんが、菜の花が咲く丘で、きつねの女の子と出会い、一緒におままごとをして遊び、とっても楽しい時間を過ごす…という可愛いに溢れた作品です
優しい水彩画の絵が実に美しく、まもなく訪れる春の暖かさを感じる作画です
いちめんの菜の花の、ほわほわと柔らかな様子に、その中でおままごとをしているきつねの女の子の後ろ姿のしっぽが絶品です
しかもそのきつねの女の子は、葉っぱにふぅっと息を吹きかけることで、薄緑、新緑、青緑、翡翠、浅黄、のつやつやの食器に変身させてしまうおまじないの使い手です
その食器と、菜の花と、ゆみ子ちゃんがおうちから持ってきたお豆腐でおままごとをするふたりが、その笑顔が、春の陽気のような明るさで絵力の強さを感じます
しかし、きつねのお母さんが迎えに来てしまい、きつねの女の子は帰らなくてはいけなくなります
そこからがなかなかの不穏な展開で、なんと母さんきつねは、ゆみ子ちゃんの家のできたての油揚げを、チョロまかしてお買い物にぱんぱんに詰めてきているのです

「ちょうど あぶらあげがおいてあったのよ」

それに気がついたゆみ子ちゃんが、それはうちの油揚げ…と言い淀んでいると、きつね母さんはうちの子と遊んでくれてありがとうとお礼をのべ、爪を椿の花の色に染めてくれて、ゆみ子ちゃんはその美しい色合いに魅了される…という『きつねの窓』を思い出すシーンになるので、これ…これ、大丈夫なのか? とソワソワしてしまいます
あくまでこの絵本としては、一貫してほのぼのと可愛いお話のままで、きつねのお母さんの油揚げ窃盗も掘り下げる事なく、ゆみ子ちゃんはおうちの親御さんの元に無事に帰るシーンで終わるので、ただただいい話として読むべきなのでしょうが…
絵も文も素晴らしいだけに、モヤモヤが止まらぬ読後感になったのでした
とはいえ人間だって、いやむしろ人間の方がよほどに、野生動物を狩って、ころして、あるいは家畜化して食べて暮らしてる生き物なのだから、きつねのお母さんができたての油揚げを持っていってしまうなんて、些細なこと…ですよね、そういうことにしとこう

きつねは愛嬌ある素敵な生き物として描かれている作品が多い一方、身近な害獣でもあるのだと改めて思い出した次第です、この作品のテーマはそういうのではありませんが…
椿の花の色に染まった爪には、どんな力が宿っていたのだろうか、もしくは、きつねと会ったことを忘れてしまう、おまじないだったのだろうか?


『きょうだいきつねのコンとキン』

村山桂子/作 岡田千晶/絵

こちらは以前読んだ『おかえし』の作者の村山桂子さんの作品であったため、購読しました
絵の個性がとても強く、きつねの子どもたちが日向ぼっこをする冒頭のシーンでの柔らかな木漏れ日と萌えいずる緑の生命力を感じる描写が独特で、きつねの母子たちの表情や仕草は生き生きとし、またその母子とふれあう他のどうぶつの子どもとその親御さんも、そのどうぶつのイメージそのままの動作をして、そのお住まいも見れるので、絵の面白さがより際立ちます

お話の内容は、きつねのきょうだいのコンとキンが、迷子になっているどうぶつの子どもに出会い、その子のおうちを探してあげる、というものでコンとキンの優しさや行動力にほっこりします
きょうだいは2回、別々のおうちの迷子をおうちに届けてあげるのですが、その際にはきつねのお母さんがお土産を一緒に持たせてあげる描写もあって、同じ作者さんの『おかえし』に思い入れがあるとニヤリとします
しかしその一方、『おかえし』という作品がとてつもなくアグレッシヴでアクの強い作品なので、そのイメージで読んでしまうと、なんと言うか“普通にいい話”なのが物足りなくなってしまうかも知れません、自分はなりました
迷子のおうちを探してあげるために、試行錯誤するコンとキンは、もちろんとても尊くて可愛いし、その努力も報われるお話です
でも、自分がコンとキンだったら、リスクがあるかも知れない迷子のおうち探しはしませんし
そもそも迷子にならないように出かける際には注意する子どもだったので、迷子の子不注意だな~とも思ってしまったのでした
もしこの作品を子どもに読み聞かせるなら、そのところを言い聞かせずにはいられないな、という感想になってしまうのです


『きつね森の山男』

馬場のぼる 作・絵

きつねの登場する絵本を探すシリーズに馬場のぼるさんの作品を上げるのは2冊目になります
以前読んだ『五助じいさんのキツネ』は、キツネの子と五助じいさんの特別な関係が描かれる作品でしたが、こちらの『山男』はとにかく山男! の存在がめちゃくちゃ強くてたくましい、素敵な作品です
すごく寒がりなもんだから、キツネを狩ってその毛皮でお召し物を作ってほかほかになって暮らしたい殿様と、毛皮を狙う殿様に逆にいくさを仕掛ける決意をしたキツネ軍団、両者の激突はあわや大惨事が起きるかと思われるのですが、そこへ現れたのが山男!
山男は思いもよらない方法で、キツネと殿様の争いを収めてしまうのでした…! というコミカルでありながら考えさせられる内容の物語です

風来坊の山男が、拠点に決めた山で畑を耕したり葡萄酒を醸したりする姿
敷き詰められたキツネの毛皮と着る毛皮でほかほかになって過ごす御殿の妄想をする殿様
怒れるキツネたちがずらっと勢揃いし、次々と足軽の姿に化ける様子
キツネ軍団と殿様の軍隊があわや激突する瞬間の山男の力業の仲裁
山男をどうにか家来に召し抱えようとする殿様との問答と山男のフィジカルの強さ
山男のあったかくておいしい山の恵みのお料理がふるまわれる、舌鼓が打たれる場面

話の展開がなかなかに込み入っており、また個性的な名シーンぞろいで、各シーンの馬場のぼるさんの絵を眺めてもすごく情報量が多く、どのページの絵も飽きない魅力がたくさんです
この物語に登場するキツネは、パーソナルな特徴のある子はいなくて、あくまでも“キツネ軍団”なのですが、キツネ軍団の合戦の描写や平和になった後のキツネ集落が素敵なので、こちらもぜひキツネ絵本シリーズに上げたくなりました

それにしても、山男どのの魅力がたっぷりの作品です
地の恵みを大切にして、畑を耕して、おいしいお料理を振る舞うことを楽しむ山男、どこか『ダンジョン飯』の素晴らしいドワーフのセンシを思い出すキャラ造形なのでした
そう考えると、お料理の時の食材がぽぽぽんと飛ぶ演出とか、毛皮を着てひげ面でとぼけたまん丸まなことか、見れば見るほどセンシっぽい山男で、ひょっとしてセンシのモデルなのかな…なんて妄想してしまいます
山男が争いを止めるために提示した策は“食べること”であることが、両者に共通する生き方そのものを感じます
込み入った個性的なお話だけど、食べることって大事なんだっていう、シンプルな事を真っ直ぐに伝えてくれる絵本です
続き絵になっている表紙と裏表紙に描かれた、山男とたくさんのキツネの行列も素敵な一作なのでした



『きょだいなきょだいな』

長谷川摂子 作 降矢なな 絵

こちらも、前回の記事のコメントらんにて、きつねが登場人物する絵本として紹介して頂いた作品です
つねたまじめさん、ありがとうございます
この記事で先にご紹介した『きつねにょうぼう』と同じ作者さんの作品です
絵師さんは別の方なので、ぱっと見の印象は違いますが『きつねにょうぼう』にもあった独特のオノマトペの、なんというか湿り気のある面白さがたっぷりの不思議なお話です
ひろいひろい野原に、きょだいな品物が現れて、そこへ100にんのこどもがやってきて、きょだいなもので様々な遊びをする、という、荒唐無稽な内容ですが、きょだいな品物と100にんのこどもの接し方が凄くリアルでもあるのです
きょだいなピアノであれば、鍵盤の上で鬼ごっこする子もいれば、大きなピアノの音色に耳をふさぐ子、ツヤツヤの天板に登って遊ぶ子、さまざまです
次々と、きょだいなせっけんだったら? きょだいな黒電話だったら? トイレットペーパーだったら? と、きょだい→100人のこども→きょだい→100人のこども→と、1ページずつ交互に現れる、ぐいぐいと早い展開で、グルーヴ感に溢れてます
こちらの作品の絵を担当されているのは『ともだちや』シリーズなどの降矢ななさんですが、絵もまた独特で、水彩絵具で色付けをした紙を張り合わせたコラージュに更に描き込みもされています
物体のきょだいさがリアルに感じられる遠近感があり、100人ものこどもたちの動作や表情が繊細に表現されていて、テキストの魅力も絵の魅力もたっぷりの一作です

ところで、この作品はきつねについての記述は1ヶ所もありません
でも、きょだいな品物の登場ページに必ず一緒にきつねが現れて、そのきょだいさにびっくりしたり、怖がったり、喜んだりしています
きょだいな何かに相対して、真っ先にリアクションをするおいしい役割、それがキツネです
様々なリアクションのキツネが可愛いのですが、どうしてこういう登場の仕方にしたんだろうと、不思議でもあります
作者のお二人とも、キツネの登場する作品を手がけてる方だから、お二人してキツネ推しなのかも知れないですね


『てぶくろを買いに』

文・新美南吉 絵・わかやま けん

きつねが出てくる昔話の定番で、そして名作である作品ですが、たしか小学校の教科書で読んだきりで、それ以来の鑑賞になりました

きつねのお母さんがぼうやに、おててだけが人間のぼうやになるおまじないをかけてあげ、てぶくろを買うおつかいに送り出してくれる
しかしぼうやはうっかり、きつねのままの手を、てぶくろやさんに出してしまう
しかし、てぶくろやさんはとても優しくて…というお話だと記憶していたものの、色んな細かい物語の背景や、ちょっとしたセリフ回しが、改めて新鮮に鑑賞ができました
ぼうやのきつねは雪を見るのは初めてだという事は、春に生まれた子が初めて迎える冬なのかなあとか、雪が眩しくて目に刺さってしまうように感じた鮮烈さとか、お母さんきつねは、むかし友だちと人間の町で盗みをはたらいて命からがら逃げたとか、
てぶくろを販売してくれるのは、てぶくろやさんではなくて帽子やさんだったとか、
帽子やさんは差し入れられたきつねのおててに
「さきに お金 をください。」と、ちゃんと警戒しているとか、こんな話だったのか…とあちこち驚くことがしきりでした

すごく現実的なところも幻想的なところもあるし、ちゃんとしてる帽子やさんも、心配をしつつおつかいに送り出すお母さんも、堅実で誠実でとても好感が持てるし、何よりぼうやがかわいいです
でも、このおはなしは(執筆された当時の)既存の他の物語には近しいものがおそらくない、斬新なものだったように思います 実は昔話のジャンルにおいては『奇書』にあたるのかも、とやや飛躍したことを感じました

ところでこの作品は、色んなバージョンが刊行されていますが 『こぐまちゃんのほっとけーき』などの、わかやまけんさんの絵のもので読んでみました
独特ののっぺりした作画、のしのししてそうな足取りのきつねおやこ、モダンな帽子やさんの頭が凄いもじゃもじゃしてるところ、あちこち癖になる魅力があります
タイトルの手書きフォントもいいですね


という訳で、きつねの登場する絵本のご紹介10冊分の第2弾でした
昨日にはこちらの記事をあげたのですが

こちらもきつねの登場する絵本をご紹介するシリーズの記事なので、よろしければあわせてご覧頂けると嬉しいです


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