忘れられない恋物語 学生服の第2ボタン伝説

僕が中学生から高校生の頃は男は昔ながらの黒い学生服を着ていた。中学に入学してこの黒い学生服を着て毎日学校に通うことになった。
昔ながらの黒い学生服、分かってもらえると思いますが、首の部分の襟が立っていた、所謂詰襟、これに慣れるまで痛くて時間がかかった。

この頃、僕の通っていた中学では女の子たちの間で
好きな男子の学生服の第2ボタン(上から2つ目のボタン)を持っていると、その男子との恋が成就するという学生服第2ボタン伝説があった。
このため、学生服の第2ボタンを女の子に取られてしまうことが頻繁に起こった。
取られてしまった男子のために、家庭科の先生と医務室の先生がその男子にボタンを縫い付けてあげていた。
人気のある男子は年がら年中取られることになった
僕のクラスで1番女の子に人気のあった男子は、
朝、登校して直ぐに取られ、保健室縫い付けてもらってクラスに帰る途中で取られ、学校の帰りにまた取られと1日に3回も取られた。
学生服を脱いで置いておいたら取られていたという友達もいた。

迷惑な話しだと思いがちだが、取られた男子は悪い気はしない。自分が女の子にモテているという証拠になったからだ。
当然、1度も第2ボタンを取られない男子は惨めな思いをしていた。
中には、自分で第2ボタンを取って、俺も取られたと見栄を張る男子まで現れた。

僕も第2ボタンを取られなかったが、僕には3年生の彼女がいたので気にしていなかった。
ところがある日、放課後、彼女に会いに行くと
「鈴原くん、学生服の第2ボタンがないけど、気が付かなかった?」
「ホントだ、ない。」
「どこの女だ!?」
そう言った彼女の顔は、それまでに見たことのない
怖い顔だった。僕はその時、浮気は絶対にしてはいけないと学んだ。

その日から彼女の犯人探しが始まった。
1年生の女の子を端から調べて行ったが該当者が見つからなかった。そして、自分の同級生の女子であることが判明し、取っ組み合いの大喧嘩になった。
そして、先生たちも出て来て止めに入った。
その結果、僕たちが付き合っていることが学校中に知れ渡った。

それから少しして、
「鈴原くん、女の友情なんて脆いよ。私、美由紀とは仲が良くて、美由紀は鈴原くんと私が付き合っているのを知ってたんだよ。なのに密かに鈴原くんを狙っていて第2ボタンまで持っていたなんて。」

それから少しして、僕は学生服の第2ボタンが無くなっているのに気づいた。
僕は彼女の所に行った。すると彼女は
「大丈夫、それ私が取ったから、私が鈴原くんの
第2ボタンを持っていないのはおかしいから。」

結局、学生服のボタンの予備を買わなくてはならなくなった父兄から学校にクレームが届き、学生服の第2ボタンを取るのは厳禁というプリントが配られ事態は収束の方向に向かった。

今でも思う。
学生服の第2ボタンを持っていると恋が成就するという根拠は何だったのだろうか、と、そしていったい誰が言い始めたのだろうか、と。





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