エッセイ : ビートルズのNorwegian Woodはノルウェイの森という曲ではない、ノルウェイ製の家具という曲

1990年、出張でフランス支社のあるパリに行った。フランス人の課長さんがディナーをご馳走してくれた後、車で宿泊先のホテルに送ってくれた。
その課長さんは車を運転しながら、ビートルズの
Norwegian Woodを鼻歌混じりに歌っていた。 
僕はこの時、ビートルズのNorwegian Woodは
ノルウェイの森という曲だと思い込んでいた。
僕はその曲の歌詞を覚えていたので一緒に歌い出すと、その課長さんは、

「ユウキもビートルズが好きか、 
ところでお前Norwegian Woodを見たことがあるか? 
素晴らしいぞ。」
「まだありません。」
「そうか、俺の家に寄っていけ、Norwegian Woodを見せてやる。」

家にノルウェイの森がある??????

課長は家に着くと1番奥の部屋に案内してくれた。
そこにあったのは見事な家具だった。
僕がNorwegian Woodはノルウェイ製の家具のことなのか? と訊くとフランス人の課長は
そうだ、お前、何だと思っていたんだ?
と言った。

ビートルズが名曲Norwegian Wood(ジョンレノンの作品)を発表した当時、ヨーロッパではノルウェイ製の家具が大流行していた。
チーク材と言われる高級木材で作られたノルウェイ製の家具は丈夫でデザインも良かった。
ヨーロッパの人たちはノルウェイ製の家具を
Norwegian Woodの愛称で呼んでいた。
ジョンレノンもノルウェイ製の家具を気に入り買った。そして、そのノルウェイ製の家具をモチーフに
名曲Norwegian Woodを作ったらしい、ということだそうです。

そもそも冷静になって考えてみると、英語の得意な高校生ならばNorwegian Woodがノルウェイの森という意味にならないことが分かります。
森という意味にするならば、Woodに複数形のsをつけてWoodsにする、もしくはWoodの前にTheをつけてThe Woodにしなくてはならない。
Woodは木もしくは木の加工品という意味。
ビートルズの曲名はNorwegian WoodでWoodに複数形のsがついていない。つまり、元々ノルウェイの森という曲名ではないことが分かると思います。

何故日本ではノルウェイの森という曲になってしまったのか?だが、最初にこの曲を日本語訳した人が間違えてしまった。ところが、今日に至るまで 
約60年近く、日本のレコード会社は間違いを訂正していない。
このため世界中で日本人だけがNorwegian  Woodをノルウェイの森と思い込んでしまっている状態になっている。

問題はビートルズのNorwegian Woodは世界中で誰でも知っていると言うくらい有名な曲。
それを日本人だけが間違って理解しているということ。
Norwegian Woodをテーマにしたコンサートはノルウェイの森をイメージして行われることが多い。
またNorwegian Woodの歌詞がノルウェイの森のなかにいるような幻想的な感じがするみたいに評されていることもある。
海外の方がこれを見たり聞いたり読んだりしたら、
どう思うだろうか?とも思う。
場合によっては馬鹿にされかねない気がする。

Nowegian Woodの歌詞をノルウェイの森で訳すと
かなり無理がある感じがするが、ノルウェイ製の家具で訳すと、すんなり意味が通る。
彼女の部屋に素敵なノルウェイ製の家具があった、
ということになるからだ。
僕がノルウェイ製の家具で拙い英語訳をします。

Norwegian Wood(This Bird Has Flown)

かつて僕には恋人がいた
と言うよりもむしろ
彼女が僕を恋人にしてくれていた
彼女は僕に自分の部屋を見せてくれた
素敵なノルウェイ製の家具じゃないか

彼女は泊まっていってと言い
好きなところに座って、と言った
僕は部屋を見まわしたが
椅子はひとつもなかった

僕は敷物の上に座り
彼女のワインを飲みながら時を過ごした
彼女と話し込んで深夜の2時になってしまった
そして彼女は、もう寝る時間だわ、と言った

明日は朝から仕事なのよ
と彼女は言って笑った 
僕は仕事はないからと言って
風呂まで行って眠ることにした

翌朝、目が覚めると
彼女の姿は何処にもなかった
この鳥は飛んで行ってしまったのだ
僕は暖炉に火をつけた
いいじゃないか
このノルウェイ製の家具は

この歌詞で、彼女の家がノルウェイの森のなかにあるとか、ノルウェイの森みたいな雰囲気、と想像出来る箇所はないと思う。
単純にNorwegian  Woodをノルウェイ製の家具と訳せば、何も注釈も意訳も必要ないと思う。

グローバル社会が進むなか、日本人だけが
ビートルズの名曲を勘違いしているというのは
僕は問題だと思う









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