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【①インテリアの背景を調べてみる】01:SDGsとkitakami @アンダイの家具


SDGsの解釈

SDGsという言葉はよく聞くと思いますが、開発って何だろうとか17も目標があって分かりづらいという人が多いのではないでしょうか。私の専門分野である木材やその活用方法を中心に分かりやすく解釈してみたいと思います。

SDGsは持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)のことで、2015年の国連サミットで採択されました。私も仕事の関係で以前から取り組みをウォッチしていたのですが、ここ1~2年で大きく注目されるようになったのは『貧困、紛争、気候変動、感染症等』の問題を解決しないと、近い将来人類の存続が難しくなることが見えてきたからだと思います。

『我々は、貧困を終わらせることに成功する最初の世代になり得る。同様に、地球を救う機会を持つ最後の世代になるかもしれない』
これは「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」からの抜粋ですが、『持続可能』という言葉を分かりやすく説明していると思います。

つまりSDGsは『平和と平等により困っている人を救う』ということと『地球を環境の悪化から救う』という事を目標にしていることが分かります。これによりこの先永く地球上で人が生活できるようにするというものです。
とても正しくて当たり前のことだと思います。

以下具体的に掲げられた17の目標を列記します。

1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3.あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4.すべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
5.ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
6.すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7.すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8.包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
9.強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10.各国内及び各国間の不平等を是正する
11.包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
12.持続可能な生産消費形態を確保する
13.気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15.陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16.持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセス〇14.持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用するを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17.持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
※出展 SDGs総研「SDGsとは?」

この中で1から12までが『困っている人を救う』ことで、13から15までが『地球を救う』ことに当たります。(16、17はその実施のための目標ですね)

『地球を救う』取組み

アンダイでは特にkitakamiというプロジェクトを通じて、『地球を救う』取組を行っています。
具体的には『森林を適切に管理することにより、そこで発生した木材(国産材)を家具や内装材として活用する』ということがこれに当たります。

SDGsの目標に当てはめると『目標13』と『目標15』に該当します。

『目標13』では主に気候変動の対策を行うことが書かれています。

気候変動とは長い時間軸で考えたときの大気の状態の変化(気温、降水量等)のことを言います。
これには、自然の要因と人為的な要因があります。
自然の要因としては太陽エネルギーの変動に起因する氷河期などのようなものがありますが、SDGsで言われる気候変動は人為的要因によるものです。
この気候変動の中で現在一番問題になっているのは温暖化に関するものです。よってここでの気候変動はほぼ『地球温暖化』という言葉に置き換えられます。
つまり『目標13』は何とかして『地球温暖化』を止めましょうという事を言っていると思ってください。

さて、それではなぜ地球は温暖化しているのでしょうか?
これはみなさんご存じかと思いますが『温室効果ガス』が増えているからです。
温室効果ガスには二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガスがあるのですが、この中で最も影響が大きいのが『二酸化炭素』です。
我々はこの『二酸化炭素』を減らさなくてはなりません。

これには大きく2つの方法があります。

1つ目は二酸化炭素を発生させないことです。
人間が呼吸するときに二酸化炭素を吐き出しますが、これは人間が食べるものの中に含まれているものと考え、二酸化炭素を増やすものとしてはカウントしません。一旦減らして同じだけ出すので±ゼロという、いわゆるカーボンニュートラルという考え方ですね。また木が燃えると二酸化炭素を発生しますが、これも同じくカーボンニュートラルです。木が二酸化炭素をストックしているからです。
ここで減らそうとしているものは、主に化石燃料を燃やして発生するエネルギーを減らそうという意味になります。火力発電所や内燃機関を持つ自動車やバイクの活動を減らすということですね。最近衝撃を受けた2030年台までにガソリン車/ディーゼル車の製造を止めるという欧米の取組がこれに当たります。

2つ目の削減方法は発生した二酸化炭素を吸収するというものです。
これは森林吸収減という言い方をしますが、植物(特に樹木)が成長するときに行う光合成によって、二酸化炭素を植物の内側に閉じ込めるというものが代表としてあげられます。
近年、南米や東南アジアで大規模な森林の違法伐採の問題が取りざたされていたと思います。
これによって増加した二酸化炭素もかなりの量になります。
と書くと皆さんは、できるだけ木は切らないほうが良い、使わない方が良いと思われるのではないでしょうか?
これ実は誤っています。
木は光合成によって幹が太く、樹高が高くなっていきます。ただし木にも寿命があるので、ある程度大きく育った木はそれ以上大きくならないのです。これは二酸化炭素を木の中に取り込めなくなるという事です。
ではどうしたら良いかというと、ある程度大きくなった木は伐採して新たな木を育てることによって成長による二酸化炭素の吸収を促すことが重要になります。
樹木が二酸化炭素の大きなタンクになるわけです。
1本の木がストックする炭素量はその重量の50%と言われます。
幹だけではなく葉や根も含めた部分の乾燥重量が100kgであれば50kgが炭素の重量です。つまり炭素を50㎏分固定したことになります。これを二酸化炭素に換算すると50×44/12(C=12、O=16)となり約183㎏分の二酸化炭素を吸収したことになります。この木材を丸まる焼却すると183㎏のCO2が発生することになります。具体的に言うと35年生のスギ(胸高直径20cm、樹高18m)の固定炭素量が68㎏くらいなります。(249㎏のCO2を吸収しているイメージ)

森林を適正に管理すること

日本は国土の66%が森林と言われています。これは先進国の中でもフィンランド、スウェーデンに次いで3番目に高い比率です。
そしてその40%が人工林です。人工林とは主にスギやヒノキ・カラマツと言った成長の早い針葉樹を畑のように植えた森林です。

各国の森林比率(2018年) ※計算方法の違いで日本の森林率は66%になっていません)

高度成長期におじいちゃんやひいおじいちゃんが植えた木が山にはたくさんあります。ところがこれらの木は、輸入材の増加や日本家屋の減少によって需要が減少し、伐採しても利益が出なくなってしまいました。そのため近年山が荒れたままになってしまうという問題が発生した訳です。

日本がSDGsに貢献する方法として、この豊富な森林を生かさない手はありません。

この森林を適切に管理することによって、以下のことが期待できます。
1.『目標13』の気候変動を止めるため二酸化炭素発生源となる違法な伐採を減らす。
・国内での違法伐採はほとんどなくなったと聞きますが、より明確な管理基準のある森林認証制度(FSC、PEFC、SGEC等)の活用が求められます。
・海外の違法伐採された樹木を使わないようなチェックが必要です。
2.『目標13』の気候変動を止めるため二酸化炭素発生源となる船やトラックによる輸送を減らす。
・国内の木材を活用しできるだけ地産地消を行うことにより輸送によるCO2の発生を減らします。
3.『目標13』の気候変動を止めるため二酸化炭素吸収源となる樹木を育成する。
・間伐等を行うことにより、低い樹木や下草・新たな樹木の生長や更新を促します。
・植樹等も一つの方法です。
4.『目標13』の気候変動を止めるため二酸化炭素吸収源となる樹木を焼却しないで活用する。
・伐採した樹木は価値が低いもの(細い、節がある、割れがある等)でもできるだけ活用します。カーボンニュートラルと言われていますが、できるだけ焼却によるCO2の発生を押さえます。
5.『目標15』生物多様性を含む山地生態系の保全のため森林を適切に管理する。
・森林を適切に管理すること(道を作る、適度に伐採する、下草や低木の育成により土壌を改善し、水源涵養機能を回復する。
・森林や土壌、河川の改良により生物多様性を確保する。

具体的な森林管理の一つの方法として、『間伐』という伐採方法があります。
これは密植した人工林に対して、例えば50%の木を間引くことによって残った木を大きく健康的に育てるとともに、地表に下草や低木を生やすことによって水源涵養や生物多様性の役に貢献するものになります。



段階1:木が密に植えられていて森林内が暗い。
下草が生えず雨が降ると土が流れ出す。 動物や昆虫も住まない。
段階2:間伐がなされて林内が明るくなる。下草が生え始める。


段階3:下草が十分に生える。この段階で十分な水源涵養機能がもたらされる。


段階4:下草や低木が大きく育つ。この状態であれば動物や昆虫の多様性も担保される。


段階5:低木だけなく広葉樹の高木も生えている状態。
針広混交林として広葉樹の活用も期待できる。

kitakamiで使用している木材には以下の特徴があります。
1.FSCの森林で伐採された木材ですので、適正に管理されていることが証明されています。
2.国内産の木材ですので輸入材と比較すると、運搬によるCO2の発生は大きく軽減されます。
3.すべての樹木を伐採(皆伐)するのではなく、これから育つ樹木を残した伐採方法を行っています。
4.通常焼却されることが多い広葉樹をフローリングや家具という製品の形で残すことによりCO2を発生させません。
5.森林が適正に管理されているため、生物多様性が守られます。

最後に宣伝になってしまいますが、結論として以下のコメントを付け加えさせて頂きます。
 ・適正に管理された森林の木材(特に国産材)を使うのは良いことです。
 ・十分な量の木材をご活用いただき、できるだけ長く使って頂くとによってCO2の大気への放出を防げます。

参考:登米町森林組合の手法(広葉樹林の場合)

1.道をつける
2.伐採は用材の3割を山に残す
3.萌芽更新をさせる

以上、何かのご参考になりましたでしょうか?
ご質問等ございましたら、contactまでお問い合わせください。
また、SDGsに関連した木材の扱いについて勉強会等のご相談もお受けいたします。

よろしかったらホームページもご覧ください。
https://anda-i.com/category/project/knowhow/

この記事を書いた人【森林インストラクター:鹿野勝則】


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