仁義なき戦い(1973)
仁義なき戦い(1973、東映、100分)
●脚本:笠原和夫
●監督:深作欣二
●出演:菅原文太、松方弘樹、渡瀬恒彦、伊吹吾郎、中村英子、川地民夫、名和広、内田朝雄、金子信雄、田中邦衛、梅宮辰夫
原爆のキノコ雲を背景に、「昭和二十一年 広島 呉」の文字と共に始まる。
冒頭からとにかくカメラが動き回り、船の中かなっていうくらい全然水平にならない。
いきなり刀で腕を叩き切る残酷な暴力描写がありつつ、戦後の闇市から始まったということを象徴するように丁半のサイコロを入れるのが缶詰の缶になっていたりと細かいところの描写はリアリティがある。
「盃がないけん、これで腕切って血すすろうや」
「いったん口に出したんじゃけん、やらにゃいけんよ」
「兄貴、わしゃ今度出たらあんたんところへ行くよ。のう。絶対行くけん。待ったってつかいや」
など印象的な台詞の数々、思わず口に出して言いたくなる。
物語は山守組と土居組の抗争というのが一つの軸になっている。
もめ事を起こし詫びを入れるために広能(菅原文太)が指を詰めるシーンで勢いよく飛んで行った小指をみんなで探し、庭のニワトリ小屋で見つけるところとか怖さと面白さが同居する場面。
英雄的なかっこいいヤクザでもなければ極端なコメディでもない、日常の中に殺し合う時もあれば笑い合う時もある、そんなリアルを切り取ったシーン。
映画全体としてもテンポのいいカット割で、ドンドン進んでいって心地よい。
だからこそ、広能と坂井(松方弘樹)が山方の女房のアパートで再会するシーンはジックリと間を持って撮っていて、そこがめちゃシビれる。
「わしらどこで道を間違えたんかのう」
という台詞も後の『キッズ・リターン』とかも想起されて、いいなあと思った。
殴り込みする前に妊娠中の女房をダシに逃げた組員や、自らの保身と金のことしか頭にない組長が生き残ってる一方で、映画の中でカッコいい人物設定とされている男たちは、情婦の家の子供部屋から逃げ出すところ(若杉=梅宮辰夫)、床屋(上田=伊吹吾郎)、おもちゃ屋(坂井)と勇ましくドラマティックに銃撃戦で、とかではなくそれぞれの生活の中であっけなく無様に殺される。
この第1作だけDVD所持していた。映像特典で「人物相関図」ではなく、「抗争関係図」が付いている作品など他に見たことがない。
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