にんじん

2007.4.5

 

目の前にぶら下げられて、必死に走る。
追いつけ、そして手に入れろ!

そうすれば、のし上がれる。
地位が約束される。
権力だ。名声だ。金だ。

そうすれば、幸せになれるんだ。
そうすれば、安心なんだ…!

…って…気の毒だけど
そのにんじんには、永遠に手が届かないよ。

走るのと同じ速さで、
ずっと目の前でゆらゆら揺れ続けるんだから。

だいたい『安心』を謳う言葉ほど
あてにならないものはないよ。

だって、必死に追いかけてる
そのにんじんの本質を知ってるの?

『不安』だよ。

人間は幸せを追い求めたりはしない生き物さ。人間はただひたすら不安を追いかけるんだ。

幸せの中でも、常に不安を見いだそうとする。不安の中では、更なる不安を見いだそうとする。

今日の人生を思う存分に生きることより、
明日の不安を追いかけることの方が、
みんな大事なのさ。

明日の不安。
来年の不安。
将来の不安。
老後の不安。

煽られ脅され、
死ぬまで走り続けなきゃいけない。

人間は一生をかけて不安を追いかけるんだ。

でも。

少しだけ立ち止まって…
かたく握った手を開いて…
その中で握り潰してしまったものを、
よく見てごらんよ。

それは何だったの?

『幸せ』は誰もくれないし
『安心』もお金じゃ買えないよ。

どっちも『不安』を追いかけるのをやめた時、
初めて手に入るんだ。

目の前にぶら下げられたにんじんが何なのか、
よく見て。

自分が追いかけたいものは、
ちゃんと自分で決めることさ。

自由に走って、いいんだから。




 

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