自分にとって良い精神科と出会うには
「どこかいい精神科知ってますか?」
「オススメの精神科があれば紹介してください」
これは本当に何度も聞かれる質問なんです。
この相談を受けたことがない精神科医療従事者はいないと言ってもいいぐらい
YoutubeやGoogleとかで検索するとそれなりに答えっぽいのが出てきます
「話を聴かない医者はやめとけ!」とか
「薬を出すだけのクリニックはNG」とか
こうして調べれば教えてくれるレベルの情報はすでに皆さん持っていることでしょう
今日は調べても出てこないような「精神科にずっと勤めていたからこその意見」を踏まえて
私が考える「良い精神科とは何か」を再考してみたいと思います。
そしてよく相談されることの一つとして
「医者が話を聞いてくれない」
「薬を出すだけで何もしてくれない」
というものがあります。これは本当に多い。
しかし、この情報だけで「ダメな精神科」と判断するのはちょっと待ったをかけたいと思います。
そもそも何故診察時間は短いのか?
これは永遠のテーマですね。
答えは「国のルールでそうなっているから」と言う答えになるでしょう。
正確には病院の経営は「診療報酬」で成立しています。
皆さんが加入している健康保険からお金が病院に支払われています。
「〇〇をしたら〇点」と医者や看護師などが行う行為が一つ一つ決まっており、これから外れた行為は1円にもならない仕組みです。
「診察5分以上行うと〇〇点」と決められているため、医者はそれ以上診察することが難しい状況になっています。
いや、厳密に言えば何十分でも診察してもいいのですが、1人の方の診察に時間をかけ過ぎてしまうと、結果的にその病院の経営は圧迫され、病院という事業を続けることが出来なくなります。(検査やオペなど沢山お金がかかる診療科と違い、精神科はほとんど検査もなく診察以外に収益化できるポイントがないのです)
なので医者は最短の時間で最高のパフォーマンスを出すことに全力を注ぎます。「話をゆっくり長く聞いてくれる医者」に出会える確率がめちゃくちゃ低いのはこういうカラクリがあるためです。
全体のバランスを見てみる
医者「のみ」を病院選びの基準にするとしんどい戦いになる気がしています。もちろん医者は重要です。
しかし、もし医者がとてもあなたと合っていて、最高だと思えていたとしても、その後採血をしてくれる看護師や受付スタッフに毎回あなたが傷つけられていたとしたらどうでしょう?カウンセラーやソーシャルワーカーがあなたを傷つけたとしたら?これは本末転倒です。
そして医者も一人の人間ですから転勤もしますし、医者を辞めることだってあります。医者のみに強く依存してしまうと、離れた時のダメージは相当なものになりますし、そもそも日々の診察の時に医者に嫌われることが怖くなってしまいそうです。
一つの打開策として、病院やクリニック全体のバランスを見てみるのはいかがでしょう?
・受付の人とそれなりにコミュニケーションが取れる
・医者もそれなりに話せる
・看護師さんが診察の前後で少し話を聞いてくれる
・カウンセラーやソーシャルワーカーがいて30分以上話ができる
このように、一人のスタッフがいなくなったとしてもどうにかなるスタイルを維持しておくのも一法です。カウンセラーやソーシャルワーカーはクリニックにいない可能性も高いので、その場合は看護師さんが話を聞いてもらえる体制があるのか、確認しておくのも良いかもしれません。
自分にとって必要な処置ができるのかを確認しておく
これは特にクリニックに通う方に読んでほしいパートになります。
ここで言いたいのは「クリニックによっては出せない薬がある」ということです。
例えばADHD治療に使われる「コンサータ」という薬は一定の研修を受けた医者しか処方することが出来ません。また、注射薬などを使用している方はクリニックなどではそもそも取り扱っていないケースもあります。
どれだけ話を聞いてくれるという医者に出会ったとしても、あなたにもし、特定の薬が重要な治療の要素となっているのなら、「あなたにとって重要な薬を処方できる体制があるか?」はとても重要になってきます。
また、クリニックでは夜間の対応などは一切できないところが多いでしょう。病気がかなりしんどい時期であれば夜間に相談しなければならないこともあります。そうなると病院など常にスタッフが常駐しているところでなければ、対応してもらえないなどの弊害が出てきます(病院だからといって、いついかなる時も対応してくれるというわけではありません)。
診察や薬の対応以外にも、他者と関わりリハビリをしながら社会復帰をしていきたいと思うのであれば、「デイケア」が併設しているところがいいかもしれません。デイケアとは、高齢者のデイサービスのようなものをイメージする人もいるかもしれませんが、端的に言えば「リハビリの場」です。作業療法士が精神疾患によって低下した脳の働きを回復できるような脳トレメニューを提案してくれることもあれば、カウンセラーの方々が再発予防のためグループワークを実施しているところもあります。
こうした「自分にとって必要な処置ができるだろうか?」という視点も重要です。
逆を言えば、
医者以外にも話せるスタッフがいて
あなたにとって必要な処置が取れている
こういう状況であれば、もしかするとパッとしていないなと思っていたとしても意外とあなたにとっては「良い精神科」なのかもしれません。
良いかどうかは他人に決められるものではありませんので、もちろんこれまでの話もあくまで意見の一つに過ぎないでしょう。
ただ、これから精神科の受診を考えている人、転院を考えている人、今の精神科が自分に合っているか悩んでいる人にとって、少しでも参考になればと思います。
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