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死に蛍 嵯峨野小倉山荘色紙和歌異聞~四十四の歌~

《死に蛍≫ 原作:中納言朝忠
おまえのいない夜。身体がわめく。
闇の中、おまえを求めて気が狂う。
……蛍舞う夜、痴態のかぎりに愛し合うたんは夢やない.
せやのに、何処に行ってしもうたんや。

定家「あふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし。今はもう愛は届かないと、消えた蛍が告げる」
蓮生「逢う度にあさましい程愛し合った。その愛の頂きから今、何故、突然、姿を晦ましたのか? 心に活け込まれた不滅の愛ゆえに恨む、蛍となった貴女のその理不尽を」
定家「愛憎は紙一重」
蓮生「愛が裏返る時、憎しみが顔を出す」
定家「愛を求めて憎悪の沼に足を踏み入れた」
蓮生「恨みの泥濘に男が身を沈める。そして、息絶える。そこに死に蛍が舞う」
定家「愛は憎しみ」 
蓮生「あやし」   

  


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