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不登校生徒の家庭教師になりました#1~おしゃべりなSちゃん編~

1. イントロダクション:

私は大学入学直後から、家庭教師のアルバイトを始めました。最初に、私がなぜ不登校の生徒を指導しようと考えたのかといいますと、「中学生時代、不登校の友人がおり、その子に勉強を毎週教えに行っていた経験を活かしたい」と考えたからです。この経験もいつか記事にしたいと思います。

2. 最初の出会い:

今回の生徒:Sちゃん
中学2年生。アイドルと読書と歌、お菓子が好き。なんでも話してくれるすごくいい子。数学が苦手。1年生の時から不登校。

初めてSちゃん(中学2年生)と出会ったのは、晴れた春の午後でした。Sちゃんの自宅での面談となり、私は彼女のはにかんだ表情に出会いました。Sちゃんはは恥ずかしがり屋で、お母さんの後ろに隠れたままこちらを見ていました。

テーブルに向かい合い、最初の挨拶が終わると、私はSちゃんについて知ることに興味津々でした。Sちゃんは勉強が苦手で、学校の先生と関係が悪くなったことにより学校に行くことが難しくなったと聞かされました。(詳細には書けませんが、先生がSちゃんの数学のテストの点数を、クラスのみんなに言ってしまったことが始まりでした。)

Sちゃんは初対面で心を開くことは難しそうに見えましたが、お母さんと離れていざ指導に移ると、意外にも和やかで和気あいあいとした雰囲気で授業を進めることができました。2回目の指導では、「先生、彼氏いる?」という質問までされ、なんだかとても仲良くなれるような、そんな気がしました。

Sちゃんの個性は、一言で言うと「控えめで繊細な花びら」でした。Sちゃんは鋭い感受性を持っていて、言葉には出さなくてもその微細な表情や仕草から感じ取ることができました。Sちゃんの眼差しには深い悲しみが漂っていて、これまでの学校生活で感じた大人への失望感や勉強が苦手なことを理解されない孤独が垣間見えました。

学業においては、国語において優れており、その力は私を驚かせるほどでした。ただし、数学が苦手なこと、そして数学の担当教諭と関係が悪くなったことがSちゃんの不登校の一因となっていました。Sちゃんの個性を理解する中で、私はSちゃんにとって新しい学びの環境がどれほど重要かを理解しました。

3. 課題への理解:

不登校の背後にある複雑なストーリーを知るため、私はSちゃんの背景について詳しく調査を進めました。、学校環境での先生との不仲による精神的な負担が、Sちゃんの心に深い傷を残していることが分かりました。Sちゃんは学校へ行くことがますます難しくなり、最終的には登校を避けるようになっていたのです。

調査を通じて、Sちゃんの不登校の根本的な原因を理解し、それに対するサポートがどれほど重要かを痛感しました。ただ単に学業の遅れを取り戻すだけでなく、Sちゃんの心に寄り添い、安心感を提供することが必要であることを認識しました。

Sちゃんが直面している最大の課題は、「学校への不安と抑圧的な環境からくる心の傷」でした。過去の、先生による仕打ちが未だにSちゃんの心に深く刻まれ、学校への恐怖心が日常生活を蝕んでいました。

また、不登校による学業の遅れも大きな悩みでした。Sちゃんは自分の能力を過小評価していました。長い問題文を見るだけで、読みもしないで「こんなのできないよ」と言う時もありました。学び舎への復帰に対する不安感から、新しい知識に取り組むことが難しかったのです。この課題を克服するためには、学びのプロセスにおいてリラックスし、自分のペースで進めるサポートが必要でした。具体的には、「1番の問題から解かなくても、好きな問題から解いていいよ」「疲れたら疲れたといっていいよ、休憩しよう」というような声がけを行いました。

4. アプローチと工夫:

Sちゃんの不登校に対処するために、まずは学業において、Sちゃんの興味を引くトピックや学び方に焦点を当てました。例えば、数学に苦手意識を抱えていたSちゃんには、実用的な問題を通して数学の面白さを伝えるなど、学習を楽しみながら進める工夫をしました。
これらのアプローチにより、徐々にSちゃんが学業に対して前向きな態度を持つようになりました。

同時に、柔軟なスケジュールを導入しました。短時間の学習しかできなくても、「今日はこれだけできたんだね」と"事実のみ"確認し、Sちゃんが学びのペースをコントロールできるようにしました。これにより、Sちゃんの不安感が軽減され、学びに対するモチベーションが向上しました。事実のみ確認するのは、Sちゃんが学習に対して「○時間やったから良い」「できなかったから悪い」という思考に陥らせないようにするためです。

学びの環境を整えることで、Sちゃんは少しずつ学校への復帰への抵抗感を減少させ、学びに対する前向きな意欲を取り戻すことができました。そして、Sちゃんが久しぶりに学校に足を運び、他の生徒と交流したと聞いた時は喜びと希望が私の心を満たしました。Sちゃんが過去の苦しい経験に立ち向かい、前向きに未来を切り開こうとする姿勢に、私は不登校の壁を越えて成長する力を感じました。そして、中学2年生の冬ごろからは、不登校の要因となった先生が担当する授業以外は"全て"出席するようになりました。

5. 意義深い瞬間:
数週間が経ったある日、Sちゃんが初めて自分から不登校になった原因の先生について話してくれた瞬間がありました。Sちゃんは以前は学校の先生について口を開くことが難しく、感情を言葉にできなかったので、その変化に私は驚きと感動を覚えました。Sちゃんは過去・そして現在のつらい経験について打ち明け、当該の先生に「みんなの前で悪い点数を言われて恥ずかしかったし、悲しかった」という気持ちを分かってほしいと話してくれました。この瞬間、私たちの信頼関係が深まり、Sちゃんが自分の心を開いてくれたことに感激しました。

Sちゃんが学業においても進歩を遂げた瞬間も忘れられません。初めてSちゃんが数学で平均点をとった時、私たちは共に成功を喜びました。Sちゃんの自信が少しずつ戻り、学びへの意欲が高まっていく様子は、私にとって非常に感慨深い瞬間でした。

Sちゃんの進歩は、単なる学業の成績向上以上に、彼女の内面での変化を示していました。Sちゃんの眼差しは以前よりも輝いており、笑顔が増えていました。最初は小さな変化でしたが、それが徐々に積み重なり、学校の話題も少しずつ増えていきました。

特に印象的だったのは、Sちゃんが初めて、例の不登校の原因となった先生の授業を受けることができたと聞いた時でした。これは3年生の春のことです。以前はその先生の授業を避けるようにしていましたが、その日は自信を持って授業に臨み、授業中に先生に(問題を)当てられた時も、答えることができとそうです。Sちゃんの表情には誇りと喜びが溢れ、私も心からSちゃんの成長を祝福しました。

また、学業においても素晴らしい進歩が見られました。以前は数学に苦手意識を持っていたSちゃんが、難解な問題に果敢に取り組み、解決する姿勢が見受けられました。自分の可能性に挑戦する姿勢が、Sちゃんの学びへの情熱を取り戻していることを感じました。

このような変化や成長に気づく瞬間は、私にとって何よりもやりがいを感じる瞬間であり、Sちゃんの未来に対する希望を確信させられる瞬間でした。

6. Challenges and Overcoming:

不登校生徒の指導に携わる中で、さまざまな課題や困難に直面しました。まず一つは、Sちゃんの心の壁を取り扱う難しさでした。Sちゃんはおしゃべりで、好きなアイドルやアニメの話は積極的に話してくれます。しかし、Sちゃんが過去に抱えたトラウマの影響は、深い層に根付いており、それを解消することは時間と信頼の構築が必要でした。

もう一つの課題は、学業の遅れからくるモチベーションの低下でした。不登校が続くことで生じる学業の遅れは、Sちゃんの自尊心や学習意欲に大きな影響を与えていました。このため、一般的な学習環境に戻す前に、基本的な学力を補完する必要があり、個別のカリキュラムの検討や調整が欠かせませんでした。

Sちゃんに寄り添い、信頼関係を構築することが不可欠であり、そのプロセスは継続的な挑戦と工夫を求められるものでした。

7. 生徒との信頼関係:

信頼関係を築くことは、不登校の生徒との指導において最も重要な要素でした。最初に私は、Sちゃんとのコミュニケーションを深めるために、Sちゃんの興味や関心に耳を傾けることから始めました。趣味や好きなことについて話す場を設け、Sちゃんが自分を自由に表現できるような環境を作り出しました。これにより、Sちゃんは私を単なる教育者ではなく、理解者として受け入れてくれたようです。

信頼関係を維持するためには、一貫性と予測可能性が不可欠でした。Sちゃんは安定感を求めており、私がいつも同じ態度で接することで安心感を得ていました。約束を守り、一貫してサポートを提供することが、信頼の基盤をしっかりと築く手助けとなりました。
最終的に、Sちゃんが感情や悩みを打ち明けやすい雰囲気を作り上げることが信頼関係の深化に繋がり、それが学習の核となりました。

信頼関係の構築がもたらすポジティブな影響は計り知れません。生徒との深い信頼が築かれると、彼らは自分の意見や感情を自由に表現しやすくなります。これが、彼らの内面に秘められた悩みや不安を解消する一歩となり、心のケアに寄与します。

また、信頼が生まれると、学習環境においても大きな効果が見られます。生徒は教育者や指導者に対して安心感を抱き、教室や学び舎が安定した場所であると感じるようになります。これが学業への積極的な姿勢を生み出し、授業に集中しやすくなります。

信頼関係が根付くことで、生徒は他者との協力やグループワークにも前向きな態度を示すようになります。他者と協力することで自分の強みや他者の強みを認識し、共に成長できるプラットフォームが形成されます。これが生徒の社会性やコミュニケーション能力の向上に繋がります。最終的には、信頼関係がポジティブな学習環境を築く要因となります。

Sちゃんは自分らしくありながら、安心して学び、成長することができる場を見つけることができたのです。

当初Sちゃんは学区内で一番偏差値が低い高校を志望校にしていたのですが、そこから2つランクが上の高校に、合格ラインより100点以上高い点を取って合格しました。授業最後の日には、かわいらしいポーチと、私への手紙を渡してくれました。そこには「RIA先生、今までありがとうございました!先生のおかげで勉強が好きになりました。大好きです」と書かれていました。

それから3か月後、私の誕生日にLINEで「先生お誕生日おめでとうございます!」とメッセージが来たので近況を聞くと、「学校めちゃ楽しいです!今日中間テストだったんですけどばっちりです」と来て、本当に頼もしく思いました。

8. 結論:

Sちゃんとの指導を通じ、多くの教訓を得ることができました。信頼関係の構築には時間と忍耐が不可欠であることも理解しました。Sちゃんは過去の経験から来る不安や疑念を抱えており、それを乗り越えるには一朝一夕ではありませんでした。しかし、コツコツと関わり続けることで、少しずつ心の扉が開かれ、良い方向に進んでいくことを実感しました。

教育の現場での連携も非常に重要であることが明確になりました。学校、保護者、そして地域との連携を強化する(途中からSちゃんは地域の学習室にも通っていました。)ことで、より包括的なサポートが可能になりました。家庭環境の問題や学業の遅れに対処するには、多岐にわたるプロフェッショナルと連携し、継続的なサポートを提供することが必要でした。

9. 経験の共有:

今回は不登校の生徒Sちゃんへの指導経験について記事を書きました。他の教育者や指導者の方々ともっと経験を共有したいと思っています。あなたの経験や工夫、成功したアプローチなど、共有していただける方がいればぜひコメントしてください。一緒に学びあい、より良い教育環境を築いていきましょう!

もし何か共感した点や異なる経験があれば、ぜひコメントでシェアしてください。あなたのコメントがより多くの人にとって価値ある情報となります。お気軽にご参加ください!

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