小説『救ってください、龍宮さん』第一話⑨
第一地区に向かう車内は夜の闇に支配され、搭乗者全員に暗い影を落としていた。龍宮仁美は戸松麗易から聞かされた衝撃的な話の数々を少しずつ咀嚼しようと努力していた。
「真菰さんが失踪!?えっ、なんで!?」
「それが、分からないんだ。病院から出た所は防犯カメラにも映っていたらしいんだが、そこからが不明なんだ」
麗易にもどことなく、焦りが見える気がする。仁美にとって真菰は麗易を意中の相手とするライバルではあるが、同時に尊敬の念を抱く友人でもある。だから、彼女の身を案じるのは当然だっ