安倍元総理大臣の訃報に対して飛び出る自業自得論について

初めてnoteというものを書く。その為、文章が下手であることはご容赦願いたい。

安倍晋三元総理大臣が2022年7月8日(金)、遊説中に暗殺された。
警察の取り調べによれば動機は宗教トラブルを理由とした一方的な恨みといわれている。

しかし事件直後より、元より安倍氏に批判的であった人々から次々と
「事件が起こりうる社会を作ってきたのは安倍政治」とか


「格差がつくりだした凶行」という主張が散見された。

shinshinohara氏のnoteは中々興味深く、ポル・ポトや文革でエリートが殺されたのは、エリートによる見下し(要するに搾取)があったことにより、それが逆流して凶行に及んだのではないか、との主張が登場する。

だが、これは全く正確ではない
マルクスとエンゲルスは「共産党宣言」において社会的秩序の暴力的転換が必要と主張し、
のちに普通選挙の可能性を認めつつも暴力革命を否定しなかった
さらにレーニンはそこから進んで
「労働者が暴力革命によって資本家を打倒することは不可欠」
と主張
した。(マルクス・レーニン主義)
日本の左派の多くも源流をたどれば第三インターナショナルであるから、資本家による労働者からの搾取構造があり、それを暴力で転覆させることで理想国家を作る、という基本思想が大元にはある。
多くの左派が暴力革命を捨てた現在にあっても、資本家と労働者は協調路線を取れると主張しないのは、
マルクスが資本論で唱えた「資本家は労働者を搾取するもの」という主張を信じているからだ。※

マルクス・レーニン主義をベースに毛沢東が唱えたのが「造反有理」である。
体制に反抗したり背くことには、それなりの理由がある
という考えで、shinshinohara氏が述べている主張はこの造反有理そのままにすぎない。
なお、ポル・ポトのクメール・ルージュが中国共産党の強い影響下にあったのは周知の通りである。

エリートの虐殺は、共産主義のベースにある「資本家(あるいはエリート)は労働者から搾取するもので打倒すべきもの」という思想が強く影響している。
ちなみにポル・ポト政権下では「祖国を豊かにするために」と留学先から戻った若者たちが多く殺されており
彼らが国全体を豊かにすることを望んでいた証拠こそあれ、民衆を見下していた証拠はない
にも関わらず「見下していたのかもしれない、それが引き金になった」と述べるのは、造反有理を肯定しながら虐殺された彼らを不当に貶めるものであり、それに重ね合わされている安倍氏をも貶めるものだ。

繰り返すが、クメール・ルージュや文革の引き金になったのは
「エリートは労働者を搾取する敵」「暴力革命」「造反有理」という、左派の革命思想そのもの
である。
ここを取り違えてはならない。

なお、これは余談となるが、ポル・ポト本人は社会的弱者の出かといえば副王とのつながりを持つ家系にして当時にフランス留学を果たすエリートであり、チェ・ゲバラは富裕層の出で医師、フィデル・カストロは裕福な農場主の子で弁護士、毛沢東やレーニンも中流層で、下層の出といえるのはスターリンくらいではないだろうか。

単に理由が「上流国民は見下してきて恨みがあるからぶっ殺せ」なんだったら、彼らも眉間を撃ち抜かれておかしくないと思うのだが……

それにしても、エリートに向けて引き金を引くように煽り立てた者たちが社会的弱者ではなかった、というのは何とも釈然としない話である。

※なお、左派の思想から、再分配や企業の社会的責任といった要素が盛り込まれた修正資本主義では、かならずしも資本家と労働者は区分できるものでも対立するものでも無い
なお、安倍政権はベースアップや働き方改革など、修正資本主義的政策は目玉であったことはここに記しておきたい。


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