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続・子どもの心を診る(6)

学校から地域の発達支援事業に相談することを提案されていた

大学病院に通っていることは担任の先生にも伝えていたが、それとは別に学校からも、地域の発達支援事業や精神科クリニックの資料をいただいていた。大学病院での診断が出る前のことだった。

先生は、長男が本来持っている力を持て余している点については、標準教育とのミスマッチにも言及されていた。

一方で、これまでの学校版ADHD評価スケールの結果や、「こだわりが強い」と言われたこと、片づけなど当たり前にできてほしい事ができていないこと等で、「できる事とできない事の幅が広い」や、「弟さんもそうですか?」と訊かれていたことで、遺伝や発達のことを示唆されているようには感じていた。

先生からは、学校でも家庭でも少なからず「困っている」という点でコンセンサスが一致しているなら、発達支援事業が適切かはわからないものの、まずは試せそうな所から試してみましょうということで提案いただいていた。

実は我が家としては「過去は困っていたが、もう困っていなかった」が本音だった。この先生を仮に凄腕先生と呼ぼう、この凄腕先生が担任になってからは困りごとはほぼ解消されていた。

長男のことを良く理解して下さっていて、先生が変わればこんなにも見える景色が変わるのかと思っていた。長男も先生を信頼していたし、先生もそれは感じていた。先生自身も、先生のやり方でかなり順調であることも実感されていた。それでわが家は先生の手腕をもってすれば、文科省の掲げている個への対応の範囲内で解決すると考えていたのだが、長男はもう少し規格外であったらしい。

先生はご苦労もあったのだと思う。先生は笑顔だったが、自身は長男と接するのは半日だが、母親の私はもっと長時間一緒に過ごすわけで、「大変ですよね・・」と労ってくださっていた。心中複雑である。大変ではないと言えば噓になるが、その大変さは質的にも大幅に軽減されていた。

私も先生が本音を言い易いようにと色々と気を回していたのだが、そうか、そんなにまだ大変なのかと申し訳なかった。先生は始終笑顔で前向きな言葉も沢山述べてくださっていたけれど、ここは一度発達支援なども当たってみた方が良さそうだなと思った。

発達支援事業に相談してみた

学校から紹介いただいた地域の発達支援事業には相談の連絡をしてみた。詳細は割愛するが、ギフティッドの方からの相談は初めてで対応したことがないと言われた。

WISCの結果の凸凹にも着目されていたが、どの指標も平均より上(最低120台)であるし、長男という一人の人間の中では凸凹があるとは言え、相対的には全て凸、かつ学習困難がないとなると発達支援事業での支援は該当しないという回答だった。

常駐している心理士の方にも取り次いでくださって、アドバイスとしては登校せずに授業をオンラインで受ける方法や、MENSAに入ることを提案された。

当然だが、支援事業としては長男を支援しようとして色々と考えて下さる。一方、我が家としては、長男への支援を通じた間接的な方法で先生の負担を軽減するような方法を見つけなければいけないと感じていた。

同じような状況はあちこちで発生しているはずで、地域にもいくらでもいるはずのギフティッドのご家庭はどこに相談しているのでしょうかと訊いてみたところ、教育相談ができる所があって、もしかしたらそちらの方が対応できることがあるかも知れないと連絡先をいただいた。

相談室は匿名で相談ができた。ここはあくまで相談であるため、相談すれどもアクションには繋がらないことが前提であった。それでも、かなり話は通じたというか、ギフティッドの困り感についてもよく把握されていた。

それで、ギフティッドの子が学校生活を送る上でうまくいっているケースもいくつか把握されていて、それは全て「担任の先生との契約」とおっしゃっていた。要するに、先生とうまく信頼関係が築けて、ルールにせよ何にせよ一緒に納得いくものを創って、それでうまく守れたりしてやれているケースのみ、学校生活がうまく行っているとのことだった。

これはその通りだろうなと思った。ただ先生の負担の問題が残る。

我が家についても、現在、長男と担任の先生との関係は良好だが、それでも一筋縄ではいかないこともあるし、担任の先生は理解があったとしても、学校全体として長男への理解があるかと言ったらそうではなく、担任の先生としても学校と長男との間でうまく立ち回る必要もある。

その状況をお話しすると、相談室より、さらに上に教育指導課があって、そこなら具体的に介入もできるのだという事を教えてくれた。

指導課と聞くと少々敷居が高い。これは結構な賭けだ。指導課が入ることで担任の先生の負担が減ったり、先生の指導法が実行しやすくなるなら良いが、そうならなかった時は目も当てられない。

この時点で一度担任の先生には連絡を入れ、地域の支援事業では前例がないと言われ対応は難しいこと、次に、指導課についてどう思われるか見解を伺ってみた。案の定、指導課は少々刺激が強かったのか、担任を思っての連絡であれば気持ちだけで、という話になった。

ここで地域への相談は終了した。精神科クリニックも紹介されていたが、既に大学病院に通っていたのでそちらは連絡をしていない。

最終的には通っていた大学病院の医師の診断書を出すことができたので、指導課を通すよりは断然平和な形で進めることができたのではないかと思っているが、診断書がどのように回覧されて、どういった反応があったのかは聞いていないためわからない。今のところ特に変わったことは起きていない。

(7)につづく