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そして長男は拒んだ

この先の数日間、家族で今後について話し合うことになる。この時長男対応をしていたのは私で、夫のほうは完全オフだった。よって夫は最初、自分がオフになっていた間に一体何があったのかと思ったようだった。それに長男が塾を辞めたいと漏らしていたことも、夫にはオフの間共有していなかったために、遡って状況説明が必要だった。

夫は言った。「親が塾と揉めたからといって辞める必要はない。お前が続けたいなら親は謝罪でもなんでもしてお前が続けられるようにする。大事なのは辞めるのであれば親関係なく、お前が辞めたいからでないといけない。」

これは実際にそうあるべきという事に加えて、後になって本当は辞めたくなかったと言われるのは勘弁してほしいという思いもあった。

長男は辞めたいと言った。

夫 :理由は?本当は今回の件があったから、なら辞めるって言ってるんじゃないのか?辞めたい理由を述べなさい。

長男:勉強は自分で勉強するのでもカバーできるけど、塾での精神面でのマイナスはカバーしようがないから。

夫 :昔と違って、今はマイナスの方が間違いなく大きいんだな?

長男:うん、それは間違いない。

何度か繰り返し、色々な角度から質問し、話し合った。また、家にずっといて勉強するという事は、家庭内のストレスが高まるリスクもあるため、必ずしも良いかどうか分からないこと、さらに家で過ごすなら長男自身も生活態度に気をつける必要があることも話した。

翌日や翌々日も、気持ちが変わる可能性があるため話し合いを続けた。

夫 :落ちるぞ。親は勉強を教えられないし、今より伸びない前提で本番に臨むことになる。自己学習で具体的に合格するための計画はあるのか?説明してみろ。ないなら塾に戻れ。

夫はあくまで第一志望校に合格することを前提にしていた。私の方は第一志望校に入れなかったからといってこの世の終わりとまでは思わなくなっていた。もちろん本人が行きたい学校があるため応援はする。

あとは丁度この時に次男の頚部リンパ節がピンポン玉のように肥大していて、調べれば調べるほど不安になり、エコー検査をしてくれる病院を探している最中だった。悪いものではないとわかってほっとしたものの、当時、子供なんて生きててくれればそれで良いと、ほかに望むものなんてないという気持ちになっていた。

夫 :お前が不合格だった時、一番後悔するのはどういう状況だ?逆にどうすれば後悔しないと思う?

長男:塾に通い続けて落ちた時が一番後悔する。自分でやって落ちた方が後悔しない。

息をのんでしまった。夫もしばらく黙っていたと思う。

私 :算数は、教えてくれる人がいなくて大丈夫なの?

長男:うん、解説読めばだいたいわかるから。

夫 :でもまだそうはいっても親のほうにも不安がある。数日自己学習して経過を報告しなさい。

長男:あの、印刷とかは手伝ってもらってもいい?

過去問の解答用紙を実物大に拡大コピーしてほしいとのことだった。お安い御用である。

長男:そうだ、算数で困るとしたら、本番で試験受けた後に解答作ってくれる人がいないことかな。答えが分からない中で自己採点するのが厳しいかも。

私 :どこかが解答速報出すんじゃないかな。

調べてみたら大手塾などが即日解答を公表するようだった。

長男:あそうなんだ。なら大丈夫。

私 :解説はなくて、解答だけしか出してないかもだけど。

長男:それで大丈夫。解答あれば解き方はわかると思う。

これで長男としては不安はないといった様子だった。ただ本人がどこまで想像できた上で話しているのかはわからない。

本人の中で、もう塾には戻らないと決めた瞬間に、直前に出された塾の課題には手を付けようとしなかった。万が一戻るかもしれないからやっておいたらと言ってもやらなかった。そして自己学習のお試し期間中は算数だけに特化していた。

毎日様子を聞いてみると、「先生の完璧な回答を真似るより、自分で考えるから頭使ってる感じがする。不安はないし、自分で頭使うから効率は上がったと思う。」とのことだった。

そして塾に行っている時には、文系にせよ理系にせよ、ノートをたくさん書いて、それを写メで毎日送っていた。それが自己学習になった途端にノートはほぼ取らなくなった。

長男はノートについて、「ノートをたくさん取るっていうのは効率はあまり良くはないよね。そこまでしなくて良かったことをしてた面はある。」とのことだった。

因みに長男が中学受験で書いた大学ノートの量は、積み上げると大人が床に座った時(座高)の高さより少し高いくらいになる。これ以外に様々な教材やプリントもあるが、ノートに書く分量は相当あったのではないかと思う(他塾のことがわからないので比較はできませんが)

効果はどうかと聞いたら、「それはすぐには分からない。先生も必要なことをやらせてはいるはずだから。どっちが良いかとかはまだ判断できない。」と言っていた。

実は外部模試で一度算数の解説を見ても理解できなかったことがあったため、「塾に戻ったほうが良いこともあると思うよ。」と言ってみたりもしたのだが、「あの模試は実際の試験よりも難しく作られてるから気にしなくていいの。」と意に介さずだった。