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生まれたての頃(3)

お腹を空かせているはずの長男がすやすやと眠っていたのは意外で、狐につままれたようにポカンとしてしまった。

気づくと同伴下さっていたベテラン助産師さんが看護師さんの前に仁王立ちになり、何やら問いただしている。

どうやら我々が遅れた10分の間に、看護師さんが長男が激しく泣くのに耐えられず粉ミルクを飲ませたようだった。

10分がなぜ待てなかったのか、なぜ電話一本よこさなかったのかといった会話が聞こえてきたような気がするが、長男が3時間の授乳間隔では長すぎて、予定より1時間くらい前からギャンギャン泣いて手がつけられなかったようなのだ。どうにも泣き止ませられずに粉ミルクをやってしまったという話だった。

看護師さんがまだ若く、長男が看護師になって初めて担当した赤ちゃんだったそうで、それなら致し方ないしと、私としてはあまり気にしていなかったのだが、残りの入院期間がまだ長いことを思うと時間にだけは遅れないようにせねばと思った。

むしろ長男にとっても少し早めに行くくらいがちょうど良かったようだ。少し早めに行っても長男は一際大きな声で泣いていて、GCUが似つかわしくなく、他の赤ちゃんもいる中で置いておくのが申し訳ないくらいだった。

こうして、長男の泣き方が激しくて誰かがお手上げになるという状況は生後一週間もしないうちに起きたのだった。この先もこういった状況には直面したが、皆さん一様に我慢の限界でイライラが隠しきれないといった表情をされていたのが思い出される。

退院

長男が退院する時、脳波など色々と入院中に確認してくださった医師より、誕生直後に入院はしたものの、これからは「普通のお子さんと同じように育ててください」と言われた。

この「普通」という言葉はその後も何度も思い出すことになる。夜泣きが激しかろうが、育児に苦戦しようが、これが「普通」で私が精進せねばと思っていた。

沐浴指導は退院する日の午前中に初めて受けたのだったと思う。いつも長男のオムツ替えはしていたが、全身裸にして見るのは初めてだったのかもしれない。このとき異様に頭が大きく見えて、ちょと心配になったのを覚えている。3頭身とは聞いていたが、それにしても頭が大きすぎやしないか?こんな大きいのを産んだ覚えがないがと思って、沐浴指導の看護師さんにそれとなく訊いてみた。

私  :頭ちょっと大きすぎませんか?こんなもんですか?

看護師:普通ですね。

私  :破裂しそうな・・w

看護師:破裂はしませんね。

私  :ですよね(汗)

退院時に夫と手作りしたベビー服を着せると、頭の大きさは気にならなくなったので、やっぱり目の錯覚かと思ったのだが、子ども3人産んだ中では長男の頭囲が1番大きい。34.5cmで産まれて、1番小さい頭囲の子と約2cm差がある。

とはいえ驚くほどの大きさでもなく、生後7日目で35.5cm、一か月検診で39cmで、その後も発育曲線を一時的に突き抜けつつも、上限あたりで推移したようだ。

それでも2歳、3歳の頃には洋服によっては頭が入らず、首回りに切り込みを入れてバイアステープで縁を縫ったりもしていた。

最近も、自転車用のヘルメットが入らなくなったと言うのでご冗談をと思ったのだが、本当に入らなくなっていた。そのヘルメットは私なら問題なく被れる。頭の大きさは父親譲りだろうなと思う。

帰宅する日に合わせて私の実家から父と母が来てくれていた。長男は初孫である。父(長男の祖父)が長男を見るや、「賢そうな顔をしとるじゃないか!」と心からの驚きの声を上げていた。どこまでひいき目に見るのだと苦笑いするしかなかったが、初孫で嬉しかったのだと思う。

ここから母が1ヶ月ほど泊まり込みで手伝ってくれる日々が始まった。

(4)につづく