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小説 女郎屋炬燵の戯言其一 異次元的下手物

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ソープランド江戸前御膳の三階に、三畳程の待機部屋があります。その小部屋の真ん中に炬燵が一つ置かれています。
そこに年齢を訊けば全員二十代と答える女たちが六人います。
「姉さん、このみかんおいしいね」
ミキさんが自分のおばあちゃんと、恐らくかわらぬであろう年齢であるマキさんに言った。
「みかんねー、あ、あー、今日もお茶挽きだわ」
明らかに歳頭のマキさんが言った。
炬燵にあたるもの、寝そべってスマホをいじるもの、テレビのワイドショーを視るもの、いねむりするもの、それぞれが客を待っています。
「暇だね、コロナじゃねー」
寝転んでる、明らかに若いアスカさんが言った。
アスカさんの寝転ぶ、すぐ上の壁には指名客数の棒グラフがあり
一人だけ断トツに伸びている他はドングリの背比べで暇さが窺えます。
「お店、つぶれたりしない」
誰かの声に、マキさんがすかさず答えた。
「何言ってるのよ、この店は江戸時代から続く由緒ある女郎屋よ、何だかんだって、生き残って来たんだから大丈夫」
「そうかしら、時代は変わっているわ」
大学生バイトのマコさん言った。
インターホンが鳴った。
「マキさん、指名入りました。フロントにどうぞ」
「あら、私」
嬉しそうに、マキさんはそそくさと黒いブラジャーと黒いTバックのショーツに制服の透けて見える長襦袢を羽織り、赤い腰ひもをだらしなく、緩く締めて出ていった。
「セックス産業は不滅よ、コロナでも客は来る、みんな好きなんだから」
誰かの声にみんなが小さく笑った。
ミキさんが思い出した様に言った。
「マネージャーが、今日から新人入るからって、言ってたわ」
「新人、こんなに暇なのに」
呆れたようにミキさんがぼっりと言った。
「美人か、若いか、スタイルがいいか、マネージャーの好みかじゃない」
マコさんが言った。
そこにタイミンク゛よくマネージャーが現れた。
「みんな、新人のマミさんです。いろいろ教えてやってくれ」
大柄なマネージャーの脇に、白いダボシャツにラクダの腹巻白いステテコ姿のドリフの加藤茶が演じる中年禿げ親父にそっくりな小男が立っていた。

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