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【サウナ文化の変遷】おっさん→意識高い系→若者全般

2010年代前半まではサウナはあくまでのおっさんの趣味であった。従来、町の銭湯はおっさんが一人の時間を楽しむ場所であったのだが、いつしか若者が順番待ちして入る場所になってしまった。何故この変革が起きたのか、居場所を奪われてしまったおっさんの戯言を商品のライフサイクルごとに述べたいと思う。


”サウナ”人気度の動向 Google trends

実はイノベーターだったおっさん

あくまでも2010年代前半のサウナはおっさんが密かに楽しむ場所のもので、そこに意味や意義はなかった。それは単なる習慣の一つで、マインドフルネスをする場所でもなく、ヘルスウェルネスを高める場所ではなく、QQLだのKPIだの意味不明なカタカナを並べる場所ではなかった。

サウナはおっさんの汗と臭いが充満する汚い場所であった。誰の汗がついているかも知らない台に座り、密室で誰かの汗が気化した水蒸気と吐息が混じった空気を吸う。ふと目を横に伸ばすと毛むくじゃらの三段腹。陰部が不意に見えてしまう。物理的にも精神的にも不衛生な場所であった。

そんな不潔な場所に行く事は恥ずべき事であり、軽蔑の対象である中年になった事を表すものであった。決して話題にするべきような場所ではなかったのである。

アーリーアダプタになった意識高い系

だが2017年ぐらいからだろうか。おっさんの瘴気が充満した場所が意識高い系に目を付けられる。
サウナに行き、”ととのう”事は仕事で蓄積したストレスを解消し、良いアウトプットを行うためには、必要な場所となった。
 今は健康ですけども将来の健康も考えてますよ、将来の事も考えられる優秀な人間ですよと、アピールに使われ始めた。
どこどこのロウリュウがいいだの、あそこのサウナは100度まで高くなるだの、サウナ自体を楽しむのではなく、情報を楽しむ輩やスタンプラリーを楽しむ輩が現れ始めた。

一昔前はラグジュアリーで富裕層の一員になるには大変だった。高いブランドを購入しなければならなかったし、美味しんぼを読んで人知れぬ高級レストランや究極の味を知っていなければならなかったし、ゴルフの為に高い年会費を払わなければならなかった。
それがどうだろう。サウナは簡単である。1000円あれば大抵のサウナに入れるし、複雑なワインの勉強やゴルフの練習も不要だ。貧者がアッパー層の一員に入門するのにこれ以上手軽な趣味はない。

こうしてサウナは良いビジネスをするため、できるビジネスマンのお仲間になるための話題作りのために必須の場所になった。

おっさんにとってはこの時期が非常に嫌な時期であった。よく分からない、しかも薄っぺらい人たちに自分たちの居場所が奪われた気がした。マナーがなっていない客が多かったり、サウナの運営側も一過性のブームだと思っていたので、それに対して解決をしようと思わなかった。

マジョリティへ~若者の憩いの場になったサウナ~

2020年代頃から、あくまでも意識高い系のみの場所であったサウナは若者一般の文化として定着を始める。おっさんが若いうちは友達とカラオケによく行ったものだが、今の若者は友達と行く場所の一つとしてマクドナルドやカラオケ館と同列にサウナが入っているらしい。健康のために行く人もいれば、友達と会話を楽しむために行く人もいる。リラックスする人もいれば、己の限界を極めんとする人もいる。

もはや、サウナは肥満中年男性が跋扈する汚い場所でもなく、小賢しい専門用語が飛び交うための場所ではない。誰もが楽しめる憩いの場となったのだ。

おっさんはサウナに行った事を隠す必要はなく、背伸びするために行く必要もなくなった。

自由だ!誰もがサウナに引け目を感じる事はなく、サウナに行った事を自慢する必要もない。サウナはメインストリームになったのだ!これは喜ぶ事である。

確かに利用者が増えた事によってサウナは狭くなったかもしれないが、逆に言えば、縮小傾向であった銭湯の需要が増えたのである。この不便さは時間の問題で解決するだろう。

愛すべきサウナが新たなステージへ移ったのだ。確かに以前のようなサウナは味わえないかもしれないが、それは老人の昔話にとどめておこう。

若者には昔の汚いサウナのイメージを忘れて頂き、新たなサウナの文化を作ってもらおう。



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