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A Simple Favor.

あー、もう、男の子たち、喋んないでいてくれたらいいのになあ。ごはんも、お酒もなし。ホテルだけ取っておいてほしい。行って、やって、黙って、帰りたい。関わりたくない。ドライで、大人で、クレバーで、口にしなくてもお互いに抱えたものをなんとなく察し合って、そして口にしないでいられる関係。人としての敬意をちゃんと持って、そしてすなわちそれが、絶対にお互いに侵さないラインがあるという言葉に変換される、少し悲しい、距離のある関係がいい。

Photo : A Simple Favor

それになるべくセックスはうまいほうがいい。うまいというより、ちゃんと相手を感じ取れる人ならいい。セックスの最中に自意識が邪魔をしない人がいい。変なことしないでいい。いかせよう、とか全然思わないでほしい。指でせわしく引っ掻き回さないでほしい。よかった?とも聞かないでほしい。ただ感じてほしい、感じたい。ただ、目の前の互いの身体に集中したい。

好きとか言い出さないでほしい。どうせそんなの、「またやりたい」でしかない。どうせそんなの「こういう女でいてくれたら好き」という意味でしかない。どうせそんなの自己愛の裏返し。どうせそんなの免罪符。「好きだ」とさえ言っておけばヤリチンのクソ男の大馬鹿野郎である自分のクソが拭われるなんて思わないで。どんな甘い言葉を発しても、実際、あんたはただのクズ男でやりちん。ただ射精したかっただけ。全世界の男がそうなんだから、自分だけ、目の前の「やれる」女を愛せる素敵な男になったみたいに、思い違いしないで。あんたは他の男となにひとつ変わらない、ただの射精アニマル。

他の女の話もしないでほしい。いまこの快楽に関係のない、あんたの自意識はどうでもいい。肉体の快楽より、そのくだらない自意識の安心を、必死に探しているなんて、なんて低次元なの。わたしマズローって逆だと思うんだよね。自己実現なんて低次元なことに気を取られてるから、目の前の肉体にも、精神にも、集中できないんだよ。本当に、本末転倒だね。そんなやつとのセックスは、少しもよくない。

わたしのほうが遊んでる。そのことにいちいち怯えないでほしい。他の男と比べられるなんて、そんなくだらないことに気を取られるのはやめてほしい。必要なのは没我だけ。あんた自身に興味はないし、あんたの表層と他の男の表層を比べるなんて、この宇宙で1ミクロの意味も持たない行為。そんなバカげたことに割く時間はない。

ただ相手を感じる。精神と、肉体のすべてを使って相手を感じる。それだけでいいから、もう、誰も、余計なことを喋んないで。黙ってやらせて、そして帰って。

こんな簡単なことなのに、恋愛とかいう複雑な様式が、形式が、その誤読が、認知の歪みが、すべてを難しくする。

所詮は僕らアニマルって、美しい響きだよ。

つかれるね、現代は。

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