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THE 離婚 トーキョー NO.12 日本の裁判所を使えないかもしれない?

日本の裁判所を使えないかもしれない?日本国籍者であるA子さんは、ベトナム人男性と東京都内で知り合い、ベトナム共和国において婚姻届けを出した。ベトナム共和国において届出をした以上、日本の裁判所に離婚を申し出ることはできないのか?なおA子さんは、日本での仕事(通訳)の関係で、帰国し2年弱滞在している状態である。

ある日の相談より抜粋

実はスレスレの問題

 なんの変哲もない相談に見えますが、実は専門的には問題を多く含んでいる問題です。大きくは、日本の裁判権、日本の裁判所を使うには、日本の人事訴訟法の規定で認められる必要があります。
人事訴訟法3条の2をみると、

被告の住所、当事者双方の国籍が日本にある時、
あるいは日本に住所がある当事者の一方からの訴えにおいて、最後の共通の住所が日本にあるとき、
他方が行方不明であるとき、
他方の住所地国でされた同一の身分関係についての訴えに関する確定判決が日本で効力を有しないとき、
その他日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の公平を図り、又は適切かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があるとき

 これらのいずれかに該当している必要があります。それでも、

事案の性質、応訴による被告の負担の程度、証拠の所在地、当該訴えにおける身分関係の当事者間の成年に達しない子の利益その他諸般の事情を考慮して、日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し、又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情がある場合には、訴えの全部または一部が却下される

と定めています。

 そうすると、A子さんは、日本に滞在している状態にあるので、日本の裁判所を使うには、行方不明であるとき、に該当するなど日本で裁判をすることが当事者間の衡平、適切かつ迅速な審理の実現につながるといえる必要があります。場合によっては日本の裁判所を使えない、というわけです。

子どもが日本で学校に通っていたら?ベトナム共和国で学校にいたら?

 では、このご相談に、お子さんがいた場合であって、日本もしくはベトナムで学校に通っていた場合にはどうでしょうか。
 この場合、未成年者であるこの利益を含む様々な事情から適切だと判断されるかが問題になります。未成年者が日本の学校に就学している場合であって、A子さんの生活状況も日本に根付いたものであるといえる場合には、日本の裁判所を使うことができる可能性が高いでしょう。一方、そうでない場合には、日本の裁判を却下されてしまい、いわゆる門前払いになってしまう可能性は否定できません。

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