続き

さて、Mさんですが日が経つにつれどんどん荒んでいきました。

最初はアパートで1人暮らしが出来ることが「普通の生活」に戻れたような感じで嬉しかったのでしょうね。でも段々現実が見えてくる。多分自分が思い描いていたより現実はかなりシビアな世界だったのではないかと思います。

私が4週間ほど訪問している間、毎回私にコーバンテープ(自着性弾力包帯)を大量に持ってこいと言うのです。

これは創傷ケア用だから創傷のない患者さんには与えられないと言うとすごい勢いでキレ始めました。彼女はコーバンを右手首に巻いてそこにメイクブラシだの、スプーンなどを差し込んで使いたかった様なのです。

彼女が必要なのはコーバンではなくて義手を使いこなす事です。毎回本当に扱いに困ったのでOTに相談すると彼女は義手を付けるのを嫌がるからセラピーも出来ないと言っていました。

義足もそう。PTが来る前に装着しておかないといけないのに絶対に付けようとしない。ウクライナ人のヘルパーさん(以下アレックス仮名)がなんとかつけようとしても絶対に付けませんでした。

それだとPTも困るんです。装着に時間取られてる場合じゃ無いですから、用意して待っていて欲しいんですね。

体の自由を奪われた患者さんは自分がコントロール出来ることで相手をコントロールしようとします。アレックスが出した朝食にもずっとダメ出ししていました。

そんなこんなで私もケアが終わったのでナーシングからはdischarge(業務の終了にもこの退院すると言う意味もあるdischargeを使います)しました。

PTとOTはまだケースに残っていました。

ある日PTと違う患者さんのところでばったり出会ったのでMさんがどうしてるか聞いたら

ある日訪ねて行ったらベッドで汚物にまみれてた、とか言うではありませんか。

なぜアレックスが居なかったのかはわからないですが、実はそのような状況が何回かあったらしいのです。本当に可哀想で胸が痛みました。

両手がないから這いつくばってトイレにも行けない。しかも左は肘上から無かったからたとえ這いつくばってトイレに行っても便座に座ることはまず不可能です。

そしてある日とうとうお尻に褥瘡が出来てしまいました。

その時は創傷ナースが派遣されたので、私はそれっきりです。

今は義手、義足を上手く使いこなせている事を祈ります。