ゲームに負けると大泣きする子ども。親はわざと負けるべき?
今回は、こんなご相談です。
■「1番がいい!」「勝ちたい!」の気持ちが芽生えたのは成長の証
「勝ちたい!」という気持ちが出てきたのは成長の証、と受け止めましょう。
逆に競争心がなくて、「勝ちたい!」という意欲を子どもがもう少し持ってくれたら、と心配するお母さんもいます。
負けず嫌いのお子さんも、競争心のないお子さんもそれぞれです。どちらもそんなに心配せずに、挑戦する気持ちを育みながらゆっくり成長を見守りましょう。
でも、怒ったり泣かれたりすると、なんとかした方がいいのか? それとも時にはわざと負けた方がやる気になるのか? いろいろ悩みますね。
そんな時、親としてどうするのがベストなのか、考えてみましょう。
まずは、よくあるシーンから。
■「チャレンジすることが素晴らしい」。これをどう子どもに伝える?
ミーちゃんは1番になれない悔しさで、途中でトランプをやめてしまいましたね。
お母さんお父さんからすると「なんで楽しくトランプで遊べないのかしら?」と心配になる気持ちもわかります。サトくんに至っては、最後まで遊べず、かわいそうでしたね。
ミーちゃんは数の概念も分かるようになり、「1番がすごいこと」だと理解できるようになっています。これは成長です。
もしかするとこれまで、お母さんお父さんに「1番なんてすごいね!」とか「勝って嬉しいね!」と褒められていて、また1番になって褒められたいという思いが、強くなったのかもしれません。1番じゃない自分をまだ受け入れられないのですね。
しかも負けたら、お母さんお父さんに「やめなさい」「もう遊ばないよ」と叱られたので、ミーちゃんは一層、勝つことへのこだわりが強くなってしまいそうです。
もちろん、お母さんお父さんは、そんなつもりではなく、泣いたことを叱ったわけですが、ミーちゃんはそう受け取ってしまうでしょう。
1番になりたい。勝ちたい。という子どもの思いに寄り添いながら、
負けてしまった自分も受け止め、勝った相手を認める成長ができるような言葉かけをしたいですね。
「勝つことも負けることもある。勝負に挑むことが素敵なこと」を子どもの成長に合わせて、毎回お話ししてみるのはどうでしょうか。
■やがて訪れる、いろんな勝負のシーンに備えて
マンガのように1回ではうまくいかないかもしれません。
でも勝ち負けにこだわるミーちゃんであれば、
「1番」だけがすごいのではなく、一緒にゲームを楽しむことが大切なこと。
その過程で勝つことも負けることもあること。
そして相手の気持ちも少しずつ考えられるようになっていくことが大切です。
ですから、親がわざと負けて勝たせてあげる、という手段も悪いわけではありませんし、園や学校で自信を失っている時には効果的な側面もあると思います。
ただ、さらなる成長につなげるためには、勝っても負けても勝負に挑むことの素晴らしさを少しずつ体感させられるといいですね。
たかがトランプ。でも今後、だれかと競って嬉しいことや悔しいことがたくさんあるはずです。そんな大切なシーンに向けての練習を今からしていきましょう。
こうしたことを繰り返すことで、子ども自身も自分の気持ちをコントロールできるようになっていきます。
そして、まだ勝ち負けにこだわりのないサトくんも、勝つために努力することやコツがあることを体感しながら、一緒に成長していけるでしょう。
今日のコミュポイント
執筆:天野ひかり
マンガ:とげとげ。
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。