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「成功体験」よりも、子どもに与えたい「もっと大事な体験」とは?

子どもに自信を持たせるために、成功体験を積むことが大事と言われていますね。
そこで今回は、成功体験をさせようと頑張っているのに、うまくいかずに悩んでいるというご相談です。

成功体験を積ませるために、ハードルを下げてやらせていますが、うまくできず、全然自信がついているように感じません。
それどころか、「どうせ僕はできない」と言ったりします。どうしたらいいのでしょうか?

成功させてあげたいと願う親の気持ち、よくわかります。
でも、子どもって“失敗”の連続です。だから成長していきます。
親が“成功”という結果にこだわっていると、途中の努力が、全て“失敗”になってしまうのです。

私は、子どもの経験に “失敗”なんて無いと思っています。
“失敗”にしてしまうか、“努力”にするのかは、親の言葉かけで変わるのではないでしょうか。よくある会話から見てみましょう。

一生懸命なのがとても伝わってきます。

■子どもがどんどんやる気を失うのはなぜ?

お母さんは、ミーちゃんが、失敗のままで終わらないように工夫しましたね。
いきなり泳がせるのではなく、まずは体を浮かせること。それもダメなら、顔を水につけること。こんなふうに少しずつハードルを下げて、ミーちゃんにやればできることを教えたいと頑張りました。

でも、ミーちゃんは、どんどん自信を失ってしまったようです。
なぜでしょう?

それは、お母さんが課題を設定して、それをクリアしたら褒めようとしたこと。
逆にいうと、それをクリアできないと、自信を失うことにつながっていたのですね。
もちろんそれがうまくいって、ほめることで伸びる場合もあるのですが、日常生活においては、そんなことは稀です。子どもは、常にいろんなことにチャレンジして、うまくいかずに工夫して努力して何度も挑戦して、成長していくものだからです。

ですから、親がすべきことは、結果をほめることではなく、うまくいかなくても挑戦し続けるその努力を認める言葉かけが、大事です。

1つ1つがとても「丁寧」ですね。

■子どものやる気を引き出す言葉かけ

泳げるようにはなっていないのですが、大きく違うのは、ミーちゃんのやる気です。
ミーちゃんの頑張りを認める言葉を1つ1つかけることで、ミーちゃん自身、やればできるはず! という自信を深めていったはずです。

「泳げるようになりたい」と言えば「なれるよ」と言葉をかけ、
体は浮かないけど「顔は水につけられたね」と認め、
体が丸まっていれば「横から支えるよ」と応援し、
「ママ支えてよ」と言われれば、「わかった」と答えてくれる。

きっと、今日泳げなくても、また練習したい! と思うでしょう。
課題をクリアしていないので、成功体験はしていないかもしれませんが、自信に溢れています。それは、自分がやっていることをそのまま認められた、つまり、認められる体験をしたからです。

■成功体験よりも承認体験が大事

「できたこと」を褒めようとすると、残念ながらそんな機会はあまりありません。でも「やっていること」を認めることは、常にたくさんあります。
実はその方が、子どもの自己肯定感が育つので、どんどん新しいことに挑戦して、結果、成功体験につながるのですね。

「できるかできないか」で子どもを評価するのをやめましょう
子どもがやっていることを認める言葉をかけましょう。
試されているのは、子どもが課題をクリアする力ではなく、子どもの努力を言葉にできる親の力です。

今日のコミュポイント

「成功体験よりも認められる体験を積ませよう!」

執筆:天野ひかり
マンガ:とげとげ。

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。

「自己肯定感を高める子どもへの声がけ」の連載が本になりました。書店やamazonで手軽に手に入れることができますので、是非チェックしてみてください。