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この情報化社会に、なぜ手書きで描くのか? 変化する社会に、柔軟にメソッドを試みることの意味

なぜ、手書きで書くんですか?
なぜ、絵が必要なんですか?
ファシグラとグラレコの違いって何ですか?

そんな問いを背中に受けながら、登壇したこのシンポジウム(早稲田まちづくりシンポジウム 2018「社会デザインと計画論の未来」)。緊張と不安の中、「手書きで描く可視化術」についてお話させていただきました。
登壇を終えた今、振り返ると、多くの先輩方に暖かく背中を押していただいたように思います。
託されたバトンはどんなものか?記録しておこうと思います。

これまでの知見の集大成となった講演

セッションのテーマは「情報技術で関係を結ぶ」というもの。まちづくりや社会デザインという文脈における、情報のつかみ方、使い方、活かし方について、広く議論が行われました。

その中で私は、グラフィックレコーディング(以下グラレコ)やグラフィックファシリテーション(以下ファシグラ)というような、手書きで描く可視化術について、世界の動向からその効果、これからの展望などをお話しました。

『ともに考え活動を促進する 絵を使った可視化術
 〜なぜ情報を手書きで描き示すのか?〜』講演内容

1. 絵を使った可視化術とは?
・拡がる活動/様々な効果/世界の動向
2. 様々な役割と活用のギャップ
・活用する場によって変わる役割/9つの役割
・目的が異なる手法/グラレコとファシグラ何が違うのか?
・絵を描く×考えるの多様化
・多様化する目的、その背景にあるものは?
3. なぜ、手書きで情報を描くのか?
・そもそも、なぜ人は描くのか?
・変化する人の描くことの意味
4. これからの活用へ向けた提言

6月にデザイン学会で発表した論文の考察も含め、これまでの活動の集大成となる内容でもあり、「なぜ手書きで描くの?」という根本的な問いと向き合った内容です。

投げられた問い、「ファシグラとグラレコ、どう違う?」

この講演を依頼された折り、投げかけられた問いがありました。
「ファシグラとグラレコ、どう違う?」
というものです。

そもそも、まちづくりでは、ファシグラが盛んです。日本で初めて、住民参加のまちづくりにファシグラが活用されてから、およそ20年。これまで、多くのプロジェクトでファシグラが活用され、さまざまな課題の図解、可視化が行われてきました。

一方、ここ数年で目にする機会が増えたグラレコ。見た目は似ているけど、何が違うの?共存できるの?といった、疑問をもっている方が多くいる。だら、その関係性について話して欲しいというオーダーを頂いたのです。

確かに、成果物の見た目が似ているし、混乱しますよね。
なんとなく似ているけれど、効果も目的も違う両者。これらを混同して考えてしまうと、狙った効果が得られず残念なことになってしまいます。これらをどう捉え、使いこなすのか?ノウハウについても解説いたしました。

ちなみに、私たちが実施するワークショップでは、それぞれに専任の担当者をつけ、グラレコとファシグラの両方を活用するようにしています。異なる役割を担う異なるメソッドだからこそ、両方掛け合わせることで、相乗的な効果が得られます。

この情報化社会に、なぜ手書きで描くのか?

そして、「なぜ、手がきで描くのか?」。
講演では、その本質的な意味についても、お話しました。

ITが発達するまでは、「見えるようにすること」=「手書きで描くこと」この公式が成り立っていました。しかし今は違います。「見えるようにすること」にはさまざまな手段が存在します。プログラミングで可視化したり、アプリケーションを使って精緻なインフォグラフィクスで可視化したり。手で描かなくても見えるようにできる。だから、人がわざわざ手で描くことの意味は、成果物ではなく、そのプロセスへと移行してきているのです。

特に、グラレコやファシグラなどのビジュアルファシリテーションは、「人が描いている行為」を観ることで「わかり方がわかる」「考え方の違いがわかる」「意味の再解釈が進む」など、メタ認知を促進させ理解を醸成させていることがわかります。

また、アイデア出しの現場では、その場で即座に可視化することができる、手書きの手軽さ、手書きのラフな表現力が効果を発揮します。曖昧なものをイメージとして捉え、そこからまた便乗して発想させることができるため、発想を飛躍させ、想定外のものを考えやすくなるという効果も。効果的に手書きで描ことができれば、アイデアの質を高めていくことができます。

また、その他にもさまざまな意義があると考えています。

私たちがコミュニティの対話の場、サービスデザインでの創造の場で、さまざまなアプローチを試みながら、「現場に意味があること」を探してきた結果わかってきた大事な発見です。

社会と向き合いつづける大きな背中

講演を行うにあたり、ピリピリとしていたフォーラムの朝。実は、ちょっとびっくりすることがあったんです。

準備をしていた私たちの控室に、ひょっこりと顔を出された方がいらっしゃいました。その方は、なんと、卯月盛夫先生!日本の都市計画やまちづくりを牽引されてきた第一人者でありながら、まさに、日本にファシグラを取り入れた張本人でもあります。

世田谷まちづくりセンターを創設された経緯、どのように住民参加デザインを始めたのかなど、お話を伺うことができました。激動の社会を生き抜いていらっしゃった先生の骨太の生き方に触れることができました。

今回の講演では、変化する創造の現場と、変化する“描く価値”について、深く考える機会になりました。
しかし、それだけでなく、さまざまな先輩と出会い、これまでの歴史を知ることで、「変化する社会に対して、どんなアプローチができるのか?」さまざまな現象に目を向け、柔軟に試みていく姿勢の大切さを実感しました。

卯月先生からいただいた「期待していますよ。」という温かいお言葉。
これからの社会に挑戦していくための、大切なバトンを受け取ったように感じています。

(三澤)

参考記事:
グラフィックレコーダーから見た「社会デザイン」~早稲田まちづくりシンポジウム2018レポート~
1989年、日本にファシグラが初めてやってきた!~ 世田谷のまちづくりから始まった、会議での絵の活用~


参考図書:
住民参加のまちづくりを学ぼう!-アメリカのまちづくり手法をワークショップ形式で学んだ記録
まちづくり図解


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