ロンドンのJAPAN HOUSEをサービスデザインの視点から考えてみる 〜第1弾〜

みなさん、こんにちは。玉田です。

2018年6月にロンドンのサウスケンジントンにJAPAN HOUSE なるものがオープンしたのをご存知でしょうか?

9月13日には、英国王室のウィリアム王子(The Duke of Cambridge)がご訪問になられました。その様子が日本でも伝えられたようですので、報道でJAPAN HOUSE の存在をお知りになられた方もいらっしゃるかもしれませんね。

私も8月に行ってきました。

少し時間が空いてしまいましたが、どんな感じだったか、お伝えしたいと思います。

しかし、これは、グラグリッドの「Service Design Inspiration」マガジン内の記事。したがって、他でも目にすることがありそうな、普通の紹介記事や訪問の感想を述べたブログのようなものとは、少し趣きを異にする内容をお届けできたら、と思っています。

具体的には、3回のシリーズで、POEMS (ポエムズ)というフレームワークを用い、サービスデザインの視点を織り交ぜながら、JAPAN HOUSE LONDON についてレポートしたいと思います。

第1弾である今回は、まずは、概要ということで下記の3点をお伝えします。

・JAPAN HOUSE ってなに?
・JAPAN HOUSE LONDON はどんなところだった?
・POEMS(ポエムズ)フレームワークってどんなもの?

JAPAN HOUSEってなに?

Japan House is the new cultural home of Japan in London.

Presenting the very best of Japanese art, design, gastronomy, innovation, and technology, it deepens our appreciation of all that Japan has to offer.

Part of a global initiative led by the Japanese Ministry of Foreign Affairs, there are two other Japan Houses in Los Angeles and São Paulo.

<出展:https://www.japanhouselondon.uk>

抄訳すると、「JAPAN HOUSEは、日本の外務省がイニティアティブを握り、グローバルに展開するプロジェクトの一環として誕生したもの。ロンドン以外にもアメリカのロサンジェルスとブラジルのサンパウロにもある」ということですね。

コンセプトムービーもありますよ。

https://www.youtube.com/watch?v=nUohQQ7lGT0

<出展:https://www.japanhouselondon.uk>

最初にオープンしたのがサンパウロ(2018年5月)、次がロンドン(2018年6月)、そして最後にロサンジェルス(2018年8月)のようです。

短期間で立て続けに世界3拠点にオープン。このプロジェクトに対する日本外務省の意気込みのようなものを感じます。

建築や空間のデザインはそれぞれのロケーションで異なる著名な方々が担当されたようです。ロンドンは、株式会社ワンダーウォールの片山正通氏が手掛けられたとのこと。詳しくは、Japan Timesの記事をご参照ください。

JAPAN HOUSE LONDONはどんなところだった?


地下鉄の最寄駅は、ディストリクトラインとサークルラインが通るハイストリートケンジントン。バスでのアクセスも至便です。近くには、ロイヤルアルバートホール、ヴィクトリア&アルバートミュージアム、デザインミュージアムなどがあります。観光でロンドンを訪れた人の殆どが一度は足を運ぶエリアではないかと思います。ハイドパークとホランドパークに挟まれた、いわゆる「良いエリア」。細かく言うと、H&MとWhole Foods の間にありました。

<出展:https://www.google.hu/maps/place/Japan+House/@51.5013833,-0.1938371,17z/data=!3m1!4b1!4m5!3m4!1s0x48760f8c869ad7af:0xeac91aca970daf4f!8m2!3d51.5013833!4d-0.1916484?hl=en>

建物の構成は、グラウンドフロアー(日本で言う1階)にショップと、ちょっとした飲み物やスナックの販売(カフェというほどのものではない)。地下1階に、ギャラリー、ホール、ライブラリー。1階(日本で言う2階)にレストランとなっていました。

第一印象としては、非常に洗練されているな、と感じました。

所謂、マンガ、アニメ、サムライ、フジヤマ、ゲイシャ、キモノ、スシというようなステレオタイプの日本のイメージを超えて、日本のコンテンポラリーな側面を強調し、表現しようとしている感じがしました。

ロンドンには、他にJAPAN CENTRE(通称:ジャパセン)というお店もあり、在英日本人の食生活を救っています。ジャパンセンターは、現在、ロンドンに3店舗あります。3店舗目は、JAPAN HOUSE LONDONとほぼ同時期の2018年春にオープンしています。

似たような名称ではありますが、両者の「見せ方」は大きく異なっています。簡単に言うと、JAPAN CENTREが庶民派で、JAPAN HOUSE LONDONがちょっと小洒落た感じと言うと、想像して頂き易いかもしれません。今後、両者の比較などもすると、面白いかもしれないな、と思っています。

JAPAN HOUSE LONDON に話のフォーカスを戻します。

ロケーションも良いし、見せ方も洗練されていて素敵だし、こういったプロジェクトが政府(外務省)のイニシアティブによって、行われていることは、在英の日本人として非常に嬉しく思います。オープンにあたっての関係各位の尽力等を想像すると、頭が下がりますし、「このプロジェクトに関わってみたかった!」という気もします。

しかし、小売、飲食、ホテルなどでの職業経験をバックグラウンドに持った上で「サービスデザイン」を研究テーマとしている私は、「うん。良いんじゃない。素敵な感じだったよー。」とあっさりとは流せず、分析欲がムクムクと湧いてきてしまうのです。

不平不満からくるネガティブな「なぜ、こうなってるんだ!」ではなく、知的好奇心ゆえの「なぜ、こうなっているのか?」を5回くらいは繰り返したくなってしまう、オニオンピーラー癖のある私。

更に一緒に訪れたのが、日本人以外の友人だったので、彼女の視点も大きな刺激になりました。

サービスデザインに携わっていようが、そうでなかろうが、オンラインショッピングに依存しがちな生活だろうが、比較的出不精なタイプだろうがなんだろうが、みなさん、日々の生活の中で、必ず、どこかしらのリアルな空間でモノを購入したり、飲食を楽しんだり、宿泊をしたりしますよね?

いくらテクノロジーが進み、様々なサービスの体験の仕方、モノの買い方が可能な時代になったとは言え、対人コニュニケーションを全く遮断した生活を送ることは、難しいでしょう。

リアルな空間に足を踏み入れた時、私たちは、まず、五感で色々なことを判断し、直感的に「イイな」、「好きだな」と感じたり、その逆の「イヤだな」、「嫌いだな」という印象を持ったりします。そして、その上に、その空間で繰り広げられる対人コミュニケーションの質など、もう少し踏み込んだ経験を重ねていき、更に価格や自分にとっての利用のし易さなどの具体的な要件を考慮し、その「サービスや空間」に対しての評価を下しているのではないでしょうか?

人によって気になるポイントは様々でしょうし、同じ人でも、その時々の状況や文脈によって、「何を優先するか」や「何を良しとするか」は当然、変わってくると思います。

しかし、判断の材料となる要素をいくつかのカテゴリーに分け、整理してみることで、「個人的な体験」や「個人的な感想」を超えて、空間やサービスの様々な側面を体系的に捉え、一緒に考えていくことができるのではないかと思います。

その為に、今回は POEMS(ポエムズ)フレームワークという手法を使ってJAPAN HOUSE LONDON を捉えてみたいと思います。

POEMS(ポエムズ)フレームワークとは?


POEMS(ポエムズ)とは、People, Objects, Environments, Messages, Servicesの5つの頭文字を取り、組み合わせたもの
です。

イリノイ工科大学のVijay Kumar 教授によって提唱されたもので、空間やサービスにおけるユーザーの行動等を観察する際に用いられる手法のひとつです。(ここでは、詳しく述べることはしませんので、興味のある方は、是非、彼のジャーナルペーパー著書をご参照下さい)

フレキシブルなフレームワークとなっており、それぞれのカテゴリーに具体的に何を含めるのかは、観察対象や文脈によって、リサーチャー自身が設定することができますが、基本は下記のような感じです。

P : People
その空間やサービスにはどのような人々が関わっているのか。
利用者の人口動勢カテゴリー、社会的立ち位置、趣味や嗜好性。
提供者側のバックグラウンドや属性等も含む。

O : Objects
利用者がその空間やサービスを通してどのようなものと接しているか。
利用者が人間以外でその空間やサービスにおいて接するもの。
設備や配布されている販促物など。

E : Environments
その空間やサービスを取り巻く環境はどのようなものか。
狭義では、建物、空間内の家具、調度品、気温設定、雰囲気など。
広義では、その建物やサービスが属している地域の特性や環境など。

M : Messages
その空間やサービスにおいて用いられている言葉のトーンやマナーはどのようなものか。提供者側が利用者に伝えようとしているメッセージは何か。
配布物や空間内の案内などで用いられている言語表現。
また非言語的なものから伝わるメッセージなど。

S : Services
その空間やサービスにおいて提供される具体的なサービス内容。
対人的に提供されるものも、そうでないものも全て含む。

さて。第1弾の今回は、ここまでにしたいと思います。

第2弾では、POEMSのカテゴリーに、JAPAN HOUSE LONDON の様々な要素を当てはめ、それぞれを詳しくみていく予定です。

そして、続く第3弾では、POEMSの検証結果を参照しながら、JAPAN HOUSE LONDONをサービスデザインの視点から考えてみたいと思っています。

お楽しみに。

Written by M.Tamada


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