有名大学の経済学部などの特徴(カリキュラム比較)

興味本位で調べた結果をまとめています(2023年度現在の情報)。制度の改正や筆者の誤解が生じている箇所が存在する可能性もありますので、内容の確実性は保証しかねます。この記事によって生じた不利益に関して、筆者は一切責任を負いません。本記事は参考程度にご高覧頂き、最新の正しい情報はご自身で大学の公式情報に当たってご確認ください。

いわゆるGMARCH

〇学習院大学
経済学科と経営学科から構成される。大学生用のテキストを執筆するなど、教員のレベルは高いが、各学科の所属教員数は東京の私立大学としては(特にMARCHと比べると)比較的少ない。つまり、同じ経済学部でも経済学を専攻する教員の数が他大学に比べて少ない。そのため、カリキュラムの科目ラインナップもあまり多くない。その代わり、経済学科でも、経営学分野の科目を16単位まで卒業単位に含められるようになっているので、経営学も多少学んでおきたい人にとっては都合が良いといえる。

経済学部の中に経営学科や商学科がある場合

上記の通り、経済学部の中に経営学科・商学科が設置されている場合、そこでは経営学分野に加えて経済学分野の科目を履修できる(あるいは履修しないと卒業できないようになっている)場合がある。経済学関連の科目は履修の上限・下限がカリキュラムで決まっていることが多いので、経営学と経済学の科目の配分を自分で自由に調整することは難しい(この点で自由度の高い大学は下記で紹介する)。大学によって規定はまちまちなので、志望校のカリキュラムを確認してみるとよい。

いわゆる日東駒専

〇駒澤大学
この入試難易度レベルの大学群の中では、駒澤大学の経済学部のカリキュラムは入学前に注目しておく必要がある。駒澤大学の経済学部は、経済学科・現代応用経済学科・商学科の3学科体制である。これらの間で、科目の相互提供が行われているため、経済学科や現代応用経済学科の学生であっても、商学関係の科目を選択履修することが可能になっている(逆に、商学科の学生が経済学関連の科目を多く選択することも可能)。このような他の2学科の科目は、学生本人がその気になればかなり多く履修可能である(学習院大学よりもはるかに上限は緩い。卒業単位のおよそ半分を他の2学科系の科目で埋めることも可能)。ただし、その代わり経済学の教員数や科目数は他の3校に比べて弱い面があるので、経済学に専念したい人にはあまりお勧めしない。しかし、経済学と商学をバランスよく学びたい学生にとっては、都合が良いといえる。

つまり、経済学に専念したいなら他の3大学(日本大学・東洋大学・専修大学)の経済学部、経済学と商学(経営学)の両方に関心があるのであれば駒澤大学経済学部という選択にする方が良いだろう。


商学部で経済学を学べる大学

一橋・早慶・GMARCH・関関同立・日東駒専などといった大学群には、商学部を構えている大学も少なくない。しかし、各大学で、「商学」の定義や扱う範囲が微妙に異なる。
なかでも特徴的なのが、慶應義塾大学・明治大学・早稲田大学の商学部である。というのも、この3校では商学部であっても経済学の授業が充実しており、経済学のゼミを履修することも可能だからだ(他大の商学部は経済学教育がかなり,、あるいはやや弱い)。もちろん、同じ大学の経済学部に比べて、科目ラインナップの充実度や分野の万遍なさの面で劣るところはある。けれど、例えば早慶の商学部は、地方の小規模大学の経済学部の専門科目ラインナップと比べても遜色ないどころか勝っているといってよいくらいである。もちろん、教員の学術業績の面でも申し分ない。

経営学・マーケティング・会計学と経済学をバランスよく学びたいとき、または1・2年次にこれらを一通り学んでみてから3・4年次の専攻分野を決めたいというときの有力な選択肢として、慶應義塾大学・明治大学・早稲田大学の商学部はもっと周知されてよいだろう。


いわゆる旧帝国大学と一橋・神戸(・横浜国立・大阪公立)

旧帝国大学(東京大学・京都大学・大阪大学・名古屋大学・東北大学・北海道大学・九州大学)の経済学部と、一橋大学の経済学部・商学部、神戸大学の経済学部・経営学部(、横浜国立大学の経済学部・経営学部、大阪公立大学の経済学部・商学部)で進路を迷う場合がよくある。このとき、気を付けておかなければならないことがある。

1点目は、一橋大学・神戸大学(・横浜国立大学・大阪公立大学)は、経済学部と経営学部(商学部)が完全に別組織になっているため、大学受験時に専攻分野(学部)を経済学にするか経営学(商学)にするか、決めなければならないということである。

2点目は、旧帝国大学では「経済学部」と名乗っておきながら、その実、経営学分野の教員もいるので、経営学を学ぶことも可能ということであるということである。ただし、旧帝国大学の多くは経営学分野の教授陣の陣容が寂しいので、真剣に経営学(商学)分野を学びたい受験生は、初めから一橋大学・神戸大学(・横浜国立大学・大阪公立大学)を本命の進学先候補にすることを強く勧める。逆に、経済学に重点を置きつつ経営学も学んでおきたいという学生にとっては、旧帝国大学の経済学部の方がマッチするだろう。自分の興味関心に基づいて、よく考えて選ぶと良い。

つまり、まとめると以下のようになる。

【一橋・神戸(・横浜国立・大阪公立)の利点・強み】
経営学(商学)分野における教員の陣容は旧帝国大学を凌駕する。
※教員数(2024年年初現在)は、一橋大学商学部が61、神戸大学経営学部は59、横浜国立大学経営学部は44、大阪公立大学商学部は40で一橋・神戸が圧倒的に充実している。

【一橋・神戸(・横浜国立・大阪公立)の欠点・弱み】
受験時に経営学(商学)分野を専攻することを決めておかなければならない。慶應義塾・明治・早稲田の商学部のように、「経営学(商学)分野を学んでみたら予想に反してつまらなかったので3・4年生では経済学を専攻する」というような柔軟な方針転換ができない。
これは一橋・神戸・横浜国立・大阪公立の経済学部を受験するときでも同様で、入学した後で経営学分野を重点的に学ぼうと思い立ったときに柔軟に対応できるのは旧帝国大学の経済学部の方である。

バランス型の国公立大学は

ここで付け加えておくと、旧帝国大学の経済学部は経済学に比重を置いているから、「経営学に重点を置いて学ぼう」と思ってもそれなりに制約があってあまり自由にはいかない。これよりもさらにバランス型(経営学と経済学の二刀流型)であるのが、横浜市立大学国際商学部、東京都立大学経済経営学部、兵庫県立大学国際商経学部、滋賀大学経済学部などである。これらの大学では、入学後にどのようなバランスで経済学と経営学を学んでいくかという点の自由度が比較的高い。これが旧帝国大学や一橋・神戸・横浜国立・大阪公立にはない強みである。
※ただし一橋大学は他学部の授業を比較的自由に履修できるので、自分の学部以外の科目をプラスアルファで学ぼうと思えば一定程度可能ではある。

他にも、高崎経済大学経済学部は2年次に学科(経済学科・経営学科・国際学科)を選択する制度になっているので、特化的学習が始まるのは2年次以降である。同様の制度は小樽商科大学商学部(経済学科・商学科・企業法学科・社会情報学科)や名古屋市立大学経済学部(公共経済学科・マネジメントシステム学科・会計ファイナンス学科)にもある。

経済・経営を学べる国公立大学まとめ

経済学と経営学をどのようなバランスで学んでいくのか、経済・経営系の学部を持つ国公立大学を分類すると、大まかに以下のようになる。
<特化型(入学前に専攻選択)>
経済学部と経営学部(商学部)の2学部に分けられている大学(一橋大学・神戸大学・横浜国立大学・大阪公立大学)
このうち経営学部(商学部)で教員数が充実しているのは一橋・神戸
<経済学重点型(経営学分野もある程度学べるが)
旧帝国大学の経済学部
※経営学分野の教育への力の入れようは大学によって異なる。経済学分野の教員数と経営学分野の教員数の比率を見れば、どの程度注力しているのか概ね判断ができる。
<緩やかな特化型(入学後に学科選択)>
高崎経済大学経済学部、小樽商科大学、名古屋市立大学経済学部
※名古屋市立大学経済学部は他の2校よりもやや教員数が少ないために学部全体で扱う分野の範囲がやや狭い印象
(名古屋大学・東北大学・北海道大学の経済学部も一応このタイプだが、これらの旧帝国大学では、会計分野はともかく、それ以外、特にマーケティング分野が弱い印象)
<バランス型>
横浜市立大学国際商学部、東京都立大学経済経営学部、兵庫県立大学国際商経学部、滋賀大学経済学部など(旧制高等商業学校の流れを汲む大学の経済学部のうち、ここまでに紹介していないところはこのタイプであることが多い)
※これらの大学の学部では、コース制を採用しているところがある(経済学コースや経営学コースなど)。そうした学部では、ある時期が来たら、コースを選択する必要がある(この点は「緩やかな特化型」と同じである)。ただし、コース制は学科の区分けに比べれば科目選択の自由度が高いことが多い(「学科」は大学組織の単位だが「コース」は組織ではなく、1つの学科の中で展開されるものであるためコース間の壁は低くなりがち)。そのため、バランス型とみなしている。


一橋大学経済学部・神戸大学経済学部の弱点
入学時から経済学の学習に特化し、多彩な教授陣を擁する両校ではあるものの、弱点も存在する。それは、経済学説史や経済思想史の分野である。こうした分野を学びたい場合は、他の大学(経済思想分野に強みがあるところ)の経済学部の方が良い。(一橋大学では経済思想は学べる年が多いのだが、経済学史らしい講義は直近数年は見られない)
 (参考)
大学選びの注意点:一部の経済学部でしか学べない科目|正力綾士 (note.com)


早稲田大学政治経済学部vs明治大学政治経済学部

アメリカ流の「エコノミックス」や「ポリティカル・サイエンス」の講座を中心とするのが早稲田、歴史や思想の講座に強みを持つのが明治。

マルクス経済学に力を入れる大学

今の時代に随分珍しいことに、マルクス経済学の教育に力を入れている大学がいくつかある。一例としては、立命館大学経済学部。必修科目や選択必修科目で社会経済学(中身は大部分がマルクス経済学)を扱う。普通は必修科目でマルクス経済学を教えることはまずないが、ここまで注力しているのは稀といえる。これが近代経済学の教育にとってプラスなのかマイナスなのかの評価は難しい。近代経済学とマルクス経済学の分別がきちんとつくまで理解させない限り、混乱の元になるのではなかろうか。私自身は、近代経済学の考え方を定着させた上で別系統の経済学を学ぶのが望ましいと考えるので、私が親なら自分の子をこうした所に進学させはしない。

大都市大学の地方受験

経済学や経営学をはじめとする社会科学系の学部は、大都市圏の大学の方がカリキュラムや教員の陣容の面で充実している傾向が強い。それは、国公立大学も例外ではない。
大学によっては、地方にも受験会場を設けて、受験生が地元に居ながらにして受験できるようにしているので、受験費用の節約のためにも事前にきちんと確認しておきたいところである。

過去の地方会場の設置状況(※今年度の情報ではないので注意)は以下のサイトが参考になる。最新の受験日程・会場の情報は、各自で各大学の入試情報を当たって確認してほしい。
地区入試日程一覧【2023年度】|さんぽう進学ネット (sanpou-s.net)