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「衣装を脱いでもチアとして」SuperGirlsオーディションの舞台裏 | シーホース三河Super Girls オーデション〜開幕まで Vol.1

シーホース三河のホームゲームは、選手のプレーはもちろんですが、非日常空間をつくりだすダンスパフォーマンスはもちろん、お客さまをおもてなしするチアリーダー「Super Girls」の存在が欠かせません。ただし、誰でもなれるものではなく、厳しいオーディションを通過したメンバーだけです。彼女たちはどんな情熱を持って、何を求めてSuper Girlsを目指したのか。

今回はライターの初野正和さんに、Super Girlsのオーディション参加者やチアディレクターにスポットを当てて取材していただきました。

「女性たちのロールモデルに」チアリーダーに求められる姿

以前、NFLやNBAのチアリーダーとして活躍した方に「チアリーダーはアメリカで『女性たちのロールモデル(社会のお手本)』と言われています」と聞いたことがある。かわいい笑顔や端麗な容姿だけでは足りない。キュートさやエネルギッシュなダンス、広い会場で自己アピールする力など、チアリーダーにはトータル的な魅力が求められている。実際、アリーナで躍動するSuper Girlsは眩しい。応援をリードする姿に心地よさや清々しさを感じるのは、自分だけではないだろう。こうしたチアリーダーはどのように生まれていくのか。今回はオーディションの舞台裏を中心に紹介していきたい 。

現役組も新参者も関係なし真剣勝負のオーディション

Super Girlsの一年間の活動について説明すると、今シーズンの場合は7月にオーディションが実施され、約2週間後にメンバーが決定。顔合わせやミーティングがあり、8月から本格的に練習開始。練習は週1回、約3時間が基本だが、開幕が近づくと週末も練習日となる。チアを率いるディレクターは、シーズンテーマに沿って楽曲を決めて振り付けを固めていく。演出チームや音響スタッフとも打ち合わせを重ね、パフォーマンスをブラッシュアップ。9月はひたすら練習に打ち込み、10月に新シーズンが開幕。Super Girlsのメンバーはホームゲームでのパフォーマンスやイベント出演などを担当し、合格発表から契約終了の5月まで、約1年間の活動となる。

オーディションの様子。課題演技の前は緊張した雰囲気が漂っていた

すべての第一歩はオーディションだ。オーディション(二次選考)は柔軟性の確認、創作演技、課題演技、面接で構成される。参加者は、Super Girlsとして活動している〝現役組〟から練習に参加した経験がある〝練習生組〟のメンバー、さらに初めて審査に臨む〝未経験組〟までさまざま。「現役組はオーディション免除」といった都合のいい話はなく、真剣勝負そのもの。

参加者を悩ませるのが課題演技だ。振り付けは当日に伝えられるので、それを短時間で覚えて披露しなければならない。オーディションを見学させてもらうと、昼食は簡単に済ませ、全員が午後の課題演技の練習に費やしていた。短い時間で振り付けを体に染み込ませるように、鏡を見ながら黙々と反復練習する参加者たち。ピンと張り詰めた空気が印象的だった。

ダンスのクオリティに加え、声や表情などもチェックされる

「どうしてもSuperGirlsになりたい」その思いがぶつかり合う

オーディションに集まっているのは全員「Super Girlsになりたい」と、強い気持ちを持った女性ばかり。大学野球を応援するチアリーディング部を見て、チアに憧れるようになったCHISAKIさんもその一人。ドラマ『ダンドリ。』の影響もあり、小学2年生から中学3年生までチアダンスを習い、高校や大学でもチアリーディング部に参加するなど、チアにかける情熱は誰にも負けないくらい強い。

「昨シーズン、Super Girlsの練習生として参加したとき、お客様との距離が近いこと、一緒になってアリーナを盛り上げられることに感動しました。これまで何度かオーディションを受けたことがありますが、いい結果は出ていません。今回、どうしてもSuperGirlsとして活動したいと思い、改めてチャレンジさせてもらいました」(CHISAKI)

「私は声が大きいところが強みです。
合格したら誰よりも大きな声で応援をリードしたいと思います」と話すCHISAKIさん
真剣な眼差しで課題演技を覚えるCHISAKIさん。
「緊張もあって力を出すのは難しかったです」と振り返る

KAHOさんは、これまでにヒップホップダンス、テーマパークダンス、バレエとさまざまなジャンルのダンスを経験。大学時代にはプロ野球チームや他のプロバスケチームのチアに合格し、チアチームで活動する夢を叶えた。経験豊富な彼女はなぜSuper Girlsになりたいと思ったのか。

「ホームゲームを観戦したときです。みんなのプロ意識の高さやパフォーマンスに圧倒されました。ブースターの皆さんを巻き込んだアリーナの一体感が本当にすごくて…。比べるのはよくないかもしれませんが、他のチームにはないパワーを感じましたし、絶対にこの場所で踊りたいと思いました」(KAHO)

小学5年生のときに友人を誘われてダンスを始めたKAHOさん
課題演技は苦労したようで「振り付けを覚えるのは苦手なので大変でした」と振り返る

他の参加者にもオーディションに臨んだ理由を聞くなか、ふと思ったのが「プライベートの時間は惜しくないのだろうか」ということ。オーディション参加者には大学生や社会人のメンバーもおり、世代的には友人や恋人との時間を大切にしたい年頃だ。練習や試合に伴う時間的な拘束はもちろん、私生活における周囲からの見られ方も変わるだろう。SNSについても特に制限は設けられていないが、思ったことを軽く発信するわけにもいかなくなる。

そんな浅はかな「なぜ」を数人の参加者に投げかけてみたが、みな「それでもSuper Girlsとして活動したい」と口をそろえた。時間や自由を犠牲にしてでも、彼女たちはSuperGirlsになりたい気持ちを持っている。そして、ディレクターも「その気持ちがあるかどうか」を確かめている。

「衣装を脱いでもSuper Girlsでいてほしい」
ディレクターがメンバーに求める思い

チアのディレクターを務めるHARUNAさんは、初代Super Girlsのメンバーであり、シーホース三河が企業チームだった頃から現在まで、長らくチームやチアリーダーを見てきた。ダンスについて審査するのが役割だが、「どうしてもSuper Girlsをやりたいというエネルギーを感じられるかどうか」も重要視している。

「Super Girlsとして活動してもらうことは、彼女たちの生活、つまりは貴重な時間をいただくことになります。だから『どうしてもやりたい』という気持ちが必要ですし、一緒になって時間や情熱を共有できるかどうか。審査員の責任として、それを必死に感じ取ろうと努力しています。チアリーダーになると、周囲が求めるハードルは自然と上がってしまいます。たとえば、プライベートの些細な行動が誰かの目に止まって、瞬く間に『あのチームの…』と広まる可能性があります。私たちの常識と彼女たちの常識が異なる場合もあるので、特にルーキーを中心に、合格したメンバーには細かく伝えるようにしています。Super Girlsになることは、衣装を脱いだときもSuper Girlsでいてほしいことになりますから」(HARUNA)

もともとアイシンの企業チームとしてスタートした背景があり、「頭が固いのかもしれませんが、企業イメージを背負っている気持ちはありますね」と話すように、Super Girlsは清潔感やスポーティーさを大切にしている。そして、見ていて気持ちのいい存在であること。当然、優れたダンススキルがあるに越したことはないが、オーディションという短い時間の中で審査員たちが感じ取ろうとしているのは、もっと別のことなのかもしれない。

ディレクターのHARUNAさん。そのほか演出チームのスタッフなどが審査を担当した

「衣装を脱いだときもSuper Girlsでいてほしい」の言葉。オーディションでは、それを感じさせる場面を目にした。当日に振り付けが伝えられる課題演技は、参加者がもっとも頭を悩ませる審査となる。チアダンス未経験の参加者は、慣れない振り付けを短時間で覚えなければならず、緊張の色を隠せない。すると、数人の現役組は未経験組に振り付けについてアドバイスしたり、声をかけて励ましたりしていた。未経験組といえども限られた枠を争うライバルだ。敵に塩を送るような行動は、なかなかできることではない。しかし、このマインドこそSuper Girlsの活動を通して養われた要素であり、ディレクターが真に求めているチアリーダーの姿なのだろう。

今シーズンのオーディション(二次選考)には22名が参加し、最終的に13名が合格となった。全員が誰にも負けない気持ちを持って挑んだ上の結果であり、合否は紙一重。ただ、合格は通過点であって「これからは別の競争が待っています」とHARUNAさん。シーホース三河はシーズンテーマに「ガチ。」と掲げているが、彼女たちも同様だ。日々の練習、そして出場をかけた競争と、決して楽なことばかりではない。それでも彼女たちは明るく笑い続ける。憧れだったアリーナに立つために。

今回のオーディションで合格したメンバーたち。CHISAKIさんとKAHOさんの姿もあった

VOl.2では


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