ゲーデル

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ばらばらの山【禍話リライト】

普通に車が通っていて、途中までは民家がいっぱいあるような、花見シーズンには近隣の人が集まって一杯やるような、そんな山で起きた話。 夜。 Cくんたちがあてどないドライブをしているとき、運転手が「久しぶりにこの山道通っていい?」と尋ねてきた。 助手席のCくんは、「運転してるお前の好きにしろよ」と答える。 「おっけい」 そう言って運転手は山道に入って行った。 山道とは言っても、舗装はもちろん道もきちんと整備されている。 グニャグニャ曲がってるわけではないし、ガードレールも綺麗

    • お前か?【禍話リライト】

      令和に変わる直前の時期の話だ。 Bくんは、学生専用マンションに住んでいた。 比較的新しいマンションで、セキュリティもちゃんとしている。 家賃は高いが、10階建てで眺望も良い。 その、6階に住んでいたのだという。 ある夜、大学近くの学生ご用達の安い飲み屋で、他県から来た一人暮らしの友達と飲んで、Bくんたちはベロベロに酔っ払った。 「このあとうちでもう少し飲もうぜ」 「おお!!」 という話になって、Bくんのマンションに向かうことになった。 エレベーターに乗り込み、6階へ昇

      • 本当になるよ【禍話リライト】

        平成の後半のこと。 Aくんの通っている私立の中高一貫校には、使われていない旧校舎が残されていた。 「この学校、なんで旧校舎が残されてるんだろうね」 「取り壊せばいいのにね」 そんな話をしていたのだが、あるとき、同じ部活の友達がある噂を仕入れてきた。 旧校舎にまつわる噂だ。 昭和の時代、こっくりさんが流行った時に、隠れてやっていた連中がいて、そのときに不審火が出て部屋が焼けて、何人か怪我をした。 それで、こっくりさんが禁止になったという噂だった。 その噂を聞いたAくんた

        • かかっていたもの【禍話リライト】

          Zさんという女性から聞いた話である。 彼女は夜に一人で晩酌するのが休日前のささやかな楽しみだった。 その日は度数の高いお酒を飲んで、酔いやすいタイプでもあったためベロベロに酔っ払ってしまって、気絶するように寝たのだそうだ。 だが、アルコールを摂取し過ぎたこともあって、Zさんは夜3時くらいにトイレに行きたくなって目が覚めてしまった。 ああ、トイレ行こう…… 若干痛む頭を抑えつつトイレに行き、用を足していた、そのとき。 部屋の中から物音が聞こえてきた。 あれ? がたがたが

        ばらばらの山【禍話リライト】

          鏡越しの男【禍話リライト】

          鏡にまつわる話である。 昭和のころの、ことだという。 「お化けの話なのかヒトコワなのかわからないんだけど、ただ、禍々しい話ではあるから……」 Wさんはそう前置きをして話し始めた。 ある特定の区域に住んでいる、一定以上の年齢の人しか知らないことなのだが、その地区は高齢化が進んでいて、住人も若い人が出ていってしまった。 もしかすると、自分がこの話を知る最後の一人になるかもしれない。 それは何となく嫌だから、この話を電波の海に放流してほしい……Wさんはそう言う。 Wさんが

          鏡越しの男【禍話リライト】

          霊園の再開【禍話リライト】

          関西方面に住んでいる、高校以来の知り合いのUから聞いた話である。 少し前に、久々にUと電話で話していた時のこと。 急に改まった口調になったUが、 「なあ、霊園とか墓地って、やっぱりお化けがいるのかな……?」 と尋ねてきた。 高校時代から今に至るまで、Uの口から怪談めいた単語を耳にしたことはない。 私が怪談を語っているときにも、あまり興味がなさそうで嫌な顔をしていたのを覚えている。 そんな男がいきなりべたな怪談噺の導入部のようなことを言い始めたものだから、私は少し面食らって

          霊園の再開【禍話リライト】

          おしまいの儀式【禍話リライト】

          「俺、仲間内では“ちょっと度胸がある奴“ってことで通ってるんですよ」 土木関係の仕事をしているという、40代半ばのTさんは、日焼けした顔でニヤリと笑ってそう切り出した。 「で、十何年か前のことなんですがね。大学時代に付き合いのある人たちに呼ばれて……」 ——————————————- 「ちょっときてくんねえか」 大学時代の旧友からの、久しぶりのメッセージはそっけないものだった。 どうやら飲み会でもないようで、どうして急に呼び出しがかかったのかを聞いてみても返事は曖昧

          おしまいの儀式【禍話リライト】

          棒の庭の家【禍話リライト】

          禍話には、「アイスの森」という話がある。 打ち捨てられた私有地の中に、さまざまな生き物の「名前」や「種類」が書かれたアイスの棒が、無数に突き立てられている……という話なのだが、その話を紹介した時にも言ったように、話してくれた人は少し細部を変えているように思われたため、なんとなく舞台は森じゃないんじゃないか……と私は思っている。 そのためか、たまにここがアイスの森の舞台じゃないか、と言ってくるDMが届くのだが。 Pさんという方から、こんなDMが届いた。 「うちの近所に私有地

          棒の庭の家【禍話リライト】

          枕もう一つ【禍話リライト】

          あらかじめ断っておくが、この話は途中までしか聞いていない。 というのも、どんなに促しても、体験者のSさんはその先を話してくれなかったからだ。 しかし、途中まででも奇妙な話ではあるので紹介しよう。 Sさんは一人暮らしの男性なのだが、ベッドは使わず布団を敷いて寝ている。 彼は眠りに繊細なところがあって、枕が二つないと寝られないのだそうだ。 そして、いつも明け方の4時5時頃に一度目が覚めて、トイレに向かうのが習慣になっていた。 ところがその日は、3時に目が覚めたのだという。

          枕もう一つ【禍話リライト】

          おもてなしホテル【禍話リライト】

          熊本のビジネスホテルでのこと。 Rさんは、40代の男性で、会社ではそれなりの役職に就いている。 彼が出張で熊本に行って、とあるビジネスホテルに泊まった時の出来事だという。 そのホテルはチェーン系列ではなく、ネットの検索でも出て来ないようなところだった。 急な出張でホテルが取れず、現地に行けば何とかなるだろうという楽観的な見通しをもっていたのだが、駅前はどこも満室だったので、少し外れたところにある古びたビジネスホテルに飛び込んだところ、空室があるということで、Rさんはほっと胸

          おもてなしホテル【禍話リライト】

          二十歳までに【禍話リライト】

          こっくりさんへの禁忌の質問としてよく知られているものに、死期に関するものがある。 人がいつ死ぬかなどは、こっくりさんに聞いてはいけない。 だが、その禁忌を破ったらどうなるのかについては、曖昧な話ばかりで具体的な体験談などは少ないようだ。 これは、その禁忌を破った人たちにまつわる話である。 Mくんは、現在30代半ばである。 だから、彼が高校生の頃に、こっくりさんがブームということはなく、彼自身も一度もしたことはない。 だが、ある時から、クラスの暗めの女の子たち3人組が集まって

          二十歳までに【禍話リライト】

          ものおきのなにものか【禍話リライト】

          Kくんは、小学校時代、仲の良い友達の家によく泊まりに行っていた。 特にFくんという友達は、家族もオープンでフランクな方々だったので行きやすく、しばしば泊まりに行っていたのだそうだ。 「正確には覚えてないですけど、少なくとも5、6回は泊まったことがありましたね」 Kくんはそう語る。 その日もKくんは、Fくんの家に泊まっていた。 前々から、Fくんの家族には、一階の奥の部屋が物置だと言われていて、立ち入ることは禁じられていたという。 「あの部屋はあまり使わない物置だから、埃が

          ものおきのなにものか【禍話リライト】

          なんでの家【禍話リライト】

          その場所は、昭和の半ば頃までは繁華街として賑わっていた。 しかし、開発が進むと繁華街は移ろうものである。 駅が新しくなって、場所を移動してしまうと、それにあわせて繁華街の場所も変わった。 その場所は、廃墟だらけの寂しい場所になってしまったのだそうだ。 かつて繁華街にあった主だった店などは新しい場所に移転してしまって、そこには酒屋など数店舗がポツポツと残っているだけだった。 そこに、元連れ込み旅館の廃墟があった。 駅の移転に伴い、どうしようもなくなって廃業した旅館なのだという

          なんでの家【禍話リライト】

          あいのりボンネット【禍話リライト】

          社会人のHくんから聞いた話だ。 Hくんは、仕事から帰宅して、夜10時頃洗濯をするのが日課になっていた。 だからその日も、帰宅後の洗濯が終わって、洗濯物をベランダで干していた。 Hくんはマンションの6階に住んでいるのだが、ちょうどベランダから、道路を挟んで向かい側にある5階建てのマンションの、一階部分にある駐車場が見える。 引っ越した当初はなかったのだが、ある時から防犯のためか街灯がつくようになっていて、その駐車場の様子がよく見える。 そうしたこともあって、その向かいのマンシ

          あいのりボンネット【禍話リライト】

          深夜の掃除者たち【禍話リライト】

          禍話に「集合体マンション」という話がある。 北九州のどこかにある、体の一部の欠損した何かたちの住むという、非常に薄気味悪いマンションにまつわる話だ。 その舞台となったマンションがどこにあるのかと、DMでしつこく聞いてくる人がいた。 そうした問い合わせがあるたびに、私はこう答えることにしている。 「場所は知らないし、行かないほうがいいよ」と。 しかし怪談の舞台に執着してしまう人はいるもので、Gくんというリスナーは、ここじゃないかとたびたび聞いてきた。 もちろんそんなことを言わ

          深夜の掃除者たち【禍話リライト】

          アンダー・ザ・ベッド【禍話リライト】

          Fさんという、今20代の女性から聞いた話だ。 彼女が中学生頃のこと。 当時彼女には、ご飯を食べた後、昼寝というわけではないが、1時間ほど仮眠をとる習慣があった。 その日も、いつものように夕食後、2階の自分の部屋で寝転んでいると、どこからか男性の声が聞こえてくる。 彼女はベッドで寝ているのだが、家の構造上の問題か、はたまた壁が薄いのか、1階のリビングで家族がテレビを見ていると、その音がよく聞こえてきていた。 だから、その男性の声も、テレビ番組の音だろうと思い、さして気にもして

          アンダー・ザ・ベッド【禍話リライト】