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腹部脂肪と認知機能低下の関連性

 お腹の脂肪は長い間、健康上のリスクと関連づけられてきましたが、最近の研究で驚くべき新事実が明らかになりました。過剰なお腹の脂肪は認知機能にも害を及ぼす可能性があるのです。
 Journal of Nutrition, Health, and Aging誌に掲載されたこの発見は、腹部脂肪と精神的鋭敏さの低下との間に関連性があることを明らかにしたものです。
 
●お腹の脂肪が認知機能に与える意外な影響
 腹部脂肪と認知機能低下との間に明確な関連性があることを明らかにした10年にわたる研究が、健康・医療界に衝撃を与えました。国立長寿科学研究所の加齢縦断研究の一環として実施されたこの研究は、お腹の脂肪がいかに高齢者の認知機能を著しく損なうかを明らかにしています。この研究では、60歳以上の高齢者に焦点を当て、873人の参加者を10年間にわたって詳細に調査しました。認知能力は2年ごとに評価され、経年変化を追跡しました。
 研究者たちは包括的なアプローチをとり、脂肪蓄積のさまざまな側面を測定しました。これには、ウエスト周囲径、皮下脂肪(皮膚の下の脂肪)、内臓脂肪(内臓を取り囲む脂肪)が含まれ、CTスキャンで評価しました。

●お腹の脂肪が心と体に与える影響
 この研究では、男性は女性に比べて皮下脂肪面積が小さいが、内臓脂肪面積が大きいことが観察されています。さらに、脂質異常症、脳卒中、糖尿病を含む特定の健康状態の有病率も男性の方が高かったのです。10年間の追跡期間中、男女ともに認知機能障害がみられ、男性の6.3%、女性の6.5%がミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアが24点未満でした。さらなる解析の結果、腹部脂肪率と認知機能低下との間に有意な関連があることが明らかになっています。

  特に、腹部脂肪率が高い人ほど、MMSEスコアの経時的低下が顕著でした。この関連は男女ともに当てはまり、ウエスト周囲径と皮下脂肪面積は男女ともに一貫した傾向を示しています。 注目すべきは、内臓脂肪面積が男性においてのみ有意性を示したことです。

 お腹の脂肪が蓄積したときに、男性と女性で認知機能の低下がどのように起こるかに違いがある理由を探ってみました。研究者たちは、男女間のホルモンの変動がこうした違いの原因ではないかと考えています。アディポカインを放出するホルモン産生器官と脂肪組織との相互作用の仕方が、男女間の認知機能低下率の違いに関与している可能性があるのです。
簡単に言えば、お腹に脂肪がつきすぎると、炎症性サイトカインの産生が増加し、認知機能が低下する可能性があるということです。サイトカインとは、体内の免疫系でメッセンジャーとして働く小さなタンパク質です。サイトカインは免疫細胞や血液細胞の活性や成長を調節します。サイトカインは免疫反応中に細胞がコミュニケーションをとるのを助け、感染、傷害、炎症が起きている領域に細胞を向かわせます。
 
●加齢に伴う認知力向上のために腹部の脂肪を減らす
 生物学的な体質を変えることはできませんが、お腹の脂肪の蓄積や定着に対抗するための積極的な手段はあります。お腹の脂肪の形成を最小限に抑えるには、単純炭水化物よりも複合炭水化物が好ましいです。 例えば、ピザ、ベーグル、マフィンを豆類、野菜、果物に変えるといった具合です。
 食生活を見直すだけでなく、有酸素運動や筋力トレーニングを日課に取り入れると、お腹の脂肪を減らすことができます。 自転車、スクワット、ランジ、コアコンディショニング、ウォーキング、ジョギング、あるいはピクルスボールなどの定期的な運動は、時間の経過とともにお腹の脂肪を顕著に減らすことにつながります。

注:ジョキングやランニングに代表される有酸素運動は、一般に思われている程、腹部は細くなりません。確かに腕、脚は細くなりますが、お腹は「ぽっこり」のままとなってしまいます。筋トレで筋量を増やすことが重要です(特に中高年者)。

 デジタル機器を長時間使用することが多い人は、各モニターの近くに1時間ごとにタイマーをセットすると良いでしょう。 タイマーが鳴ったら、立ち上がってストレッチをし、散歩に出かけます。この簡単な習慣は、血流を良くし、新陳代謝を活発にし、腹部の脂肪を減少させる有効な手段となります。

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