３０秒ルールってなんなの

私は旅のプロで、接客業のプロだ。こんな時代でお客様が激減しているが、私のお得意様は絶対行くから待っててね！とエールを送ってくれたり、皆さんも大変な時なのに＜道場長さんお仕事大変よね？大丈夫？＞と心配してくれる。とっても嬉しい。長い間培ってきた信頼関係の賜物だ。

接客のノウハウ本などにファーストアプローチは３０秒で決まるから、まずは自己紹介、名刺を出す、お辞儀は９０度で印象を植え付けろ まずはたくさんの資料(パンフレット）を用意しろ 云々が書いてあったりするが、もちろんそれも大事だし、接客に慣れてない人には有効な手段だと思う。でもそればっかりやっていたら、ロボットだってできる。実は会社でコンサル営業のセミナーに参加して、この３０秒ルールをロールプレイングで延々と１０回くらいやらされてゲンナリした。最後には＜いらっしゃいませ＞が＜イラッシャイマセ＞とロボット声になってるんじゃないかと思うくらいオウムの様な繰り返しだ。しかし、このやり方でなくとも３０秒で心をわしづかみにする方法はいくらでもある。最近私も３０秒でやられましたが何度かあった。

本当に３０秒でファンになりましたよ

最近セラーを買ったので、ワインを買いに行こうと思い友人に聞いたワイン屋さんに、買いに行ってみた。お一人で切り盛りされているその場所には涼しいセラーの中にたくさんのワインが＜私を買って後悔することなんてあるわけないじゃないと＞と言わんばかりに、姿勢正しく並んでいた。もうヨダレものである。そしてオーナーさんは私とほんの数分、家用・シャルドネ・リースリング・白・樽香と言っただけなのに、ハイこれとこれとお値段も私の思っているくらいのお値打ちなものをささっと選んでくれたのだった。イタリアワインが大好きなのだが、あえてそれは言わなくてもイタリアワインをチョイスしてくれたのにもびっくり。家に帰ってそのワインを飲んでみると、あらまぁ素敵。グレープフルーツの爽やかさと、香りも私の好きな樽香、でもサッパリとモロ好みのお味だった。

その道に長けたプロはやっぱり凄い。彼にはワインに対するプライドはもちろんのこと、その人を理解しようとする洞察力もすごい。そして初対面の私に対してもおごることなく、フレンドリーに接してくれた。もちろん、私はまたその店で購入しようと思いメールマガジンも登録した。はい、もう顧客の仲間入りだ。

今度は電話で３０秒でファンになりましたよ

また私のとっても仲の良い料理店のオーナーからこのお店は美味しいから行ってあげてねと紹介された店があった。コロナのせいで訪問が叶わなかったが、最近やっと行く機会できた。初めてのお店は予約の電話を入れるのも何時に電話をしたらいいかとか、どんな人が出てくるのか本当に不安でいっぱい。しかも実はビビリな私。。もうぶっきらぼうな感じで電話に出られた日にゃ＜すびばせん、間違えましたー＞ガチャン！と変える必要ないのに、声色を変えて電話を切って、私の何がいけなかったのよ、シクシクとサメザメと２時間くらい落ち込むのだ。

しかし そこのイタリアンのお店は全くそのようなことはなく、まず電話に出た女性の方が素敵だった。＜お電話ありがとうございます。○○でございます。＞とたった一言＜ありがとう＞が追加されるだけで、しかもソフトな声で和み度満点！優しさが声からもわかるくらい素晴らしい対応だった。もちろん訪問時も、接客は絶妙な距離感で、ご主人が作る料理も最高だし、電話に出た奥様も素敵な方だった。ご夫婦二人で営んでいて、なんか雑誌とかに出てくるような雰囲気のお二人で、あーもうコンフォタブリーってこれだよこれ、と久々の外食が大満足だった。はい、もうリピート確定だ。

やっぱり初めのつかみは肝心

もちろん人間は千差万別。私が気に入ったお店だからといって、それが全ての接客のお手本になるとは限らないし、私自身の接客についても好き嫌いがあるだろう。しかし私が担当したからには、あの人に頼んでよかったなーと思ってもらうように、最初の３０秒が勝負だと思っている。勝負所は違えどもコンパと一緒だ。心の中でとりあえずビールを頼んで、心の中で乾杯してにっこり笑って＜よろしくおねがいしまーす！＞って口に出す。またまた心の中で生中2杯目突入して＜〇〇さんはどうしてここに行きたいんですかー？＞とグイグイ押し、合いの手一つもぶっこんで、旅の導きづくりの時間が私の30秒だ。お客さんの心をがっちりつかめば、お持ち帰りならぬ、お買い上げだ。お互いに＜いやー今日はありがとねー！！＞って肩をたたきあいながら、ほろ酔い気分で楽しく終わるか、全く話がかみ合わず、気分悪くてトイレに駆け込みたくなるかは私の腕の見せ所なのだ。どんな時でも道場長の心意気は忘れちゃいけない。そして、コンパでも接客でもやっぱり最初が肝心なのだ。

ビビリー私は これからも気になるお店に果敢に挑戦していき、自分の30秒をもっとブラッシュアップしていこう。そうすればもっと私は今以上に素敵になるに違いないーオホホホーーっと妄想の華は開く。そんなお年頃なのである。