飲み会でとりあえずビールはもう確かに古い。いきなりハイボールという人も結構多い。いやハイボールならささっと出てくるからいい。シャンパンも、レモンハイ系も割とすぐできる。だから乾杯の時にとりあえずビールでなくても私は全然いいと思う。しかし、なんちゃら甘いインスタ映えしそうな舌を噛みそうな名前カクテルをしょっぱなからぶっこんでくるのはマジでやめてほしい。アルコールハラスメントと言われようが、なんちゃらのためにふわふわビールの泡がしょんぼりしぼんで泡２対液体５の割合で量が半分になり、冷え冷えのグラスがタラリタラリと汗をかきだすのは逆にビールハラスメントになっているのだぞ！それならとりあえずウーロンでもいいじゃないか！

しかしそのなんちゃらカクテルを頼むのは大抵可愛らしい女子である。間違ってもおじさんや私は頼まない。いやおじさんでも頼みたいかもしれないが、早くのどを潤したいからここはビールでなくてもいきハイで乗り切る。

会社でも容赦なく可愛いビームを発信する、可愛いらしい女子は声もたいてい可愛らしいので、甘い声で＜すみませ～ん。私だけなんか時間かかりそうなの頼んじゃってぇ＞と最後の小さな＜え＞を思いっきり鼻にかけて言う。私は騙されないぞ！
でもここで私が＜だったらなんちゃらじゃなくてドリンクページの上の方から選べや！＞とビール、ハイボール、酎ハイが載っているメニューを水戸黄門の印籠の様に差し出しても、スケさん、カクさんに＜ご隠居そこはぐっと我慢です。＞と取り押さえられて、またしょんぼり沈んでいくビールの泡を諸行無常の念で見つめなければならないのである。

やっと何ちゃらがきて、ようやく飲めると思いきや、
＜あ！すみませーーん！写真撮っていいですかぁ＞とここでも小さな＜あ＞を思いきり前面に押し出して上目遣いモードからの、フーディーモードで写真をバシバシ撮りまくるのだ。私やほかのメンバーが頼んだビールはベトナムあたりで頼んだぬるいビール状態、他のハイボール、酎ハイ組は氷河が溶けた南極の水状態だ。

それからはスマホを見つめ続け、インスタアップタイムが始まる。いろいろ加工、ハッシュタグをつけてわき目もふらずにめっちゃ速いスピードで両手を動かす。仕事の時の動きとはまるで違う。それだけ指の動きが早いなら、もっと早く書類作れよな！って心で悪態ついて、タコわさびを放り込みながらベトナム化したビールを飲んでいると、＜センパーーイ、これあまり口に合わないから飲んでくださいー＞となんちゃらカクテルをくれた。いやくれたんじゃない、押し付けてきたんだよこれ！絶対飲まないやつ！！

そして堂々と＜すみませーーん、やっぱり私もビールくださーーぃ！＞とおなじみやっぱり小さい＜い＞を思いっきり口角あげて高らかにオーダーし、キンキンの冷え冷えのアワアワビールをゴクゴク飲んで、＜やっぱりビールって美味しいですね！うふっ＞とほざいたのだ！

空気が全く読めない会社の女子、その名はY子。
彼女の暴走はまだまだ続くのだ。

で、続く！

初めての連載っぽい終わり方だが、ちゃんと読みきりですぅ（Y子風）