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予防線

昨日、文学フリマ東京37に参加した。個人での参加は前回、今年の5月に続いて二度目だ。前回は開催日前日まで準備をしていたので、今回は余裕をもって当日を迎えられるようにしたら、何と開催日の二週間前にはほとんどの作業を終えて、当日を迎えるだけとなった。まるで七月中に夏休みの宿題を終えた優等生のようだ。もちろん、私は学生時代に七月中に夏休みの宿題を終えたことは一度もなく、始業式前日まで無理やりに終わらせるという子供であった。
45歳になった今となっては随分と成長をしたものだと思うが、それは自分の好きなことや趣味だけのことであって、仕事では締切日ギリギリになって慌てて書類を出したり、作業を終えるというダメな会社員であることは言うまでもないだろう。
 ちなみに文学フリマの準備を終えてから開催日までは何をしていたかと言うと、時折SNSに告知をする程度で、その他は録画したテレビを観るか、ネトフリを観るか、もしくはPS4のパワプロのサクセスモードで毎日のように遊ぶ日々であった。おかげで強い選手が数十人は作れた。
 しかしゲームをする気力はあっても、自分の本を書いていた反動からかなのか本を読む気力は全く沸かないどころかnoteを更新する気力も起こらない腑抜けた人間となっており、マンガを読むのが精々だった。
 今日こうして久しぶりにnoteを書いているのは昨日の文学フリマで買った本を読んだ影響である。我ながら単純だなと思うが、それはそれで良い。

 以下には一昨日の出来事から覚えている限りを書いていく。
文学フリマの前日の金曜日の夜から私は体調が悪かった。終業間際くらいから右目の奥が痛んだ。眼精疲労がピークに達したのだろうか。目の奥も痛むが、更には頭痛もするし、少ないながらも吐き気もある。
以前から年に一度か二度はこうしたことがあり、前回は友達と遊ぶ日に頭痛と吐き気が起こり、その日は泣く泣く予定を諦めた。
 ともあれ、一昨日の私は仕事を終えて帰路に着くと、夕飯は近所のいきつけのうどん屋で鯖の塩焼き定食をビールで流し込んで帰宅したものの、帰宅するなり床に寝転んだ。美味い飯を食べても目の痛みと頭痛は治まらず、腹がゴロゴロと鳴っている。床にクッションと座布団を並べてジッとしていると、以前に内科でもらった吐き気止めの薬があることを思い出したので、クローゼットを開け、薬箱を取り出した。薬箱から内科でもらった薬を出し袋を見ると、処方された日は三年前だった。三年前の薬が今でも効くのかは不明だったが飲まないよりはマシだろうと水と一緒に飲みこんだ。しばらくするとその効果か吐き気が収まったので、これ幸いにと風呂に入り歯を磨き、翌日の文学フリマに持参するものをチェックして午後11時には布団に入った。

 そして昨日の朝を迎えたのだが、起床しても目の奥が痛み、頭痛がする。そして吐き気も復活をしている。薬の効果が切れたのか否か。午前8時20分からの文学フリマの会場の設営のボランティアに行くつもりでいたが、これは無理だと早々と諦めた。そして昨夜に飲んだ、三年前に処方された吐き気止めの錠剤を再び飲んだ。それが最後の吐き気止めだった。しかしこれだけでは不安は払拭できない。
 午前9時半になると近所のライフが開店する。このライフでは薬コーナーがあるので、そこで吐き気止めの薬を買って飲んでから出掛けよう。私はそう考えると、ライフの開店まで布団の中でゴロゴロすることにした。このときはまだ午前8時20分だった。

 午前9時半をすぎると、私はライフに足を運び、薬のコーナーで吐き気止めの飲み薬を買って家で飲んだ。その吐き気止めは二日酔いに効果があり、何年も前の二日酔いのときに買って飲んだのだが、あまりの不味さに驚き、それで二日酔いが治まった記憶がある。
 だが、よくよく瓶の説明書きを見ると普通の吐き気にも効果があるようだった。それなら効くに違いない。私は効果を期待して薬を飲んだ。今回も以前の記憶と同じくらいに不味い。これを開発した会社は味を改良しようと思わないのか。私は薬を飲むと、直ぐにキッチンの蛇口から水を出し、口の中をすすいだ。

 このとき家のデジタル時計は午前9時40分を表示していた。そろそろ家を出なければならない。出店者の開場時間は午前10時半。今から家を出れば11時前には会場に着き、設営も30分ほどで出来るはずだ。そう逆算した私はカートに段ボール二箱と丸めたポスターを括り付けてリュックサックを背負った。ポスターは文学フリマの自分のブースの机に垂らすものだ。準備をしているうちに頭痛は幾らか治まってきていた。

 カートを引っ張ってマンションの部屋を出た私は、二階に住んでいるのにも関わらずこの日はエレベーターを使った。しかし私のマンションは不思議な作りをしており、エレベーターの前に二段ほどの階段がある。仕方なく私はエレベーターに乗るためにカートを持ち上げたのだが、思っていた以上に重たい。15㎏ぐらいはあるだろうか。
 クソっ、重てぇ。
エレベーターで一階に降りると、そこにはまた二段の段差がある。普段なら全く気にならないその段差も、この日だけは忌々しく思うのだった。
 ちなみに、このときの私のジャケットの右ポケットにはレジ袋が入っていた。吐き気が治まらず、どうしようもなくなったときの予防線だ。
そんな不安を抱えながら私はマンションを出た。外は曇天模様で雲が低く立ち込めていた。(続く)


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