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【ネタバレ注意】『アクアマン』(Aquaman):オジ&デス対談第一弾 Vol.6

《ネレウスは凡庸な悪なのか》

全体として非常に満足度の高い『アクアマン』だけれど、それでもちょっと気になってしまうところもあったりして…。6回に分けて公開してきた対談の最終回はネレウスというキャラについて。

「ネレウスのモヤりポイントはどこか」

オジサン で、やっぱネレウス、モヤりますよ。

デス うん、まぁ、オレはあんまりモヤらないけれども、モヤるというひとの言い分もわかる。

オジサン だって、オームには「オーシャンマスターになりたいから戦争したいんでしょ?」みたいに言って疑っていたにもかかわらず、ちょっと魚雷ぶち込まれたくらいで、突然、「これは戦争だ!」って…。まぁ、オームに命を助けられてしまったから、そこは仕方ないかなってわかるんですよ。ただ、魚人王国に交渉に行って、そこで、オームと一緒になって魚人王国のひとを殺すじゃないですか。その後、甲殻王国でもドカンドカン殺しまくり倒して、かつ、娘であるメラが「トライデントを手にいれたアーサーこそが本当の王だ」って言いにいくと、「お前らにとってはな」みたいなかんじのこと言うじゃないですか。まぁ、それも「自分にとってはまだ王はオームだ」ってことで、そこまではまだ許せるんですよ。で、その後、最後の決闘でアーサーが勝つと突然「王様万歳!」って、ちゃっかり自分から言い出しちゃって。

デス でも、あの場で万歳しなかったら、「こいつ、まだ悪あがきするつもりなのか?」って感じになるじゃん?

オジサン いや、万歳するのはいいんですけど…

デス まぁ、お前、万歳する前にやることあんだろ?ってのはね。

オジサン なに率先して発声してんだよ、って感じあるし、「私は最初からこっち側でした」みたいな顔してるところに、ちょっと、ちょっと、こうモヤモヤモヤモヤ…と。

デス ま、それは物語上の欠落とも言えるし、無理やりな解釈をすると、アトランティスってのはすごく技術が進んでいるし、アトランティス人は知能も身体能力も高いけれど、例えば、国家の制度、制度設計の思想みたいなものが、割と封建的なところがあるっていうか…

オジサン まぁそうですね、王国だし。

デス だから、そこで共犯としてネレウスが罰せられないっていうは、アトランティス人の感覚だとそんなにおかしくないのかもしれない…とか。

オジサン デスのひとはボクのネレウスへのモヤりをなんだかんだ理由をつけて…

デス 違う違う、別に否定しているわけじゃなくて、こういう考え方もあるんじゃないって言ってるだけで、オレ、別に…

オジサン いや、でもデスのひとは、ネレウスの肩を持って、「お前はそんな細かいことにごちゃごちゃとモヤりやがって、アクアマンという素晴らしい作品にカエルごときが難癖をつけてんじゃねーよ」みたいな空気出してくるじゃないですか。

デス いやいやいや(笑) 

「ネレウスの行動はよくある善良で凡庸な男のそれ」

デス あれ、別に裁判の場でもないし、罰する場ではなくて、とりあえず戦争を止めて、かつオームの代わりにアクアマンが王の座につくってとこまで…。で、オームはその場で捕らえられるけれど、連帯責任っていうか共犯とされる人間がどの程度までその範囲が及ぶのかってのは、これから裁かれるのかもしれないし…。

オジサン まあ、わかるんですよ。あそこで、ネレウスのことまでゴタゴタやって映画があと5分長くなったらダレるから、映画的にはあれで問題ないって考えるのがいいと思うんですよ…。

デス あと、オレが、ネレウスにそこまでモヤらないのは、ああいうやついるよね、って思うわけよね。みんながみんな、それなりに合理的だったり理知的な行動をとっているとそれはそれで不自然じゃん。日本だって、太平洋戦争してるときとか、あの時の日本とアメリカの国力を考えたら、どう考えたって勝てるわけないのに、戦ったりしてるわけですよ。そういうアホなね、非合理的なことをやるヤツとか、「凡庸な悪」と言われるナチスドイツのアイヒマンみたいに、そんなに悪人でもない仕事にまじめな人間が粛々とホロコーストに加担してしまうみたいなことがあったりするわけじゃんね。
 で、ゼベルはアトランティスにとっては最大の同盟国ではあるけれど、劇中の描写を見ると、国力的にはアトランティスの方が上で、ゼベル王であるネレウスは、年長者だし、人間としてはそれなりに意見を言える立場だけれど、政治的なことを考えるとそこまで強く出られない。で、娘のメラはオームの許嫁だし、ある種メラが人質に取られているような状態…とかそういう国同士の損得勘定も働いていたかもしれないし、同時にネレウスも地上人に対する敵意はある程度オームと共有している。
 魚人王国に乗り込んでいったときも、もともとアトランティス(および同盟国ゼベル)と魚人王国とは折り合いがよくないわけで、鼻持ちならないインテリどもが中立気取りで偉そうなことを抜かす国で気に入らないと思ってたから、あの場での殺害への加担にあまり躊躇がないっていうのは脳内補完できる。良いことではないけれど、そういう人間っているよね、って思うし、むしろそういう人間の方が多いというか。

オジサン んー、あの、ボクは、ネレウスが物語の中でそんなに断罪されなくても、例えば、決闘が終わったところでメラに1発殴られるとかそんなくらいでもいいんですよね。

デス あと、観客的に1番すっきりする方法としては、ネレウスが自分から「私はもうゼベルの王をやめる」と自首する、というのがわりとすっきりする。

オジサン ああ。ボクはもうずっと、ネレウスは引退で、ゼベルはメラが女王になって治めて、アトランティスはアーサーが治めるのがいいと言ってるわけですよ。で、アーサーとメラは結婚するとしても、だからってメラはアトランティスの女王になるのではなくて、ゼベルの女王のままっていうのがいいと言ってるんですけど…。ま、とにかくですね、ネレウスだけちゃっかり感があって、「お前ぇ〜」って…

デス ま、ズルイ感じはするよね。

オジサン せめて、メラに「お父さん、ちょっとどうかな…」みたいなかんじで言われて、「いやぁ…」とかなんかもごもご言ったところを一発ぶん殴られる、みたいなその程度の制裁でもいいんで、なんか、こうスジ通せよって…

デス お咎めなしなのは、ダメだよね。なんのかんの言いつつ、ネレウスは行動が受動的で、その時最も自分にとって楽な道を選んでると言える。

オジサン だいたい…ドルフ・ラングレンなのに、なぜ…?

デス そうそう、風貌はカッコいいんだよね。風格があって、雰囲気もあって…それだけに、キャラクターが、あんまり陰湿じゃないスネ夫っていうか…

オジサン 優柔不断っぽいですよね。そんなだから、ドルフ・ラングレン好きなれっどさんは「せっかく巨大タツノオトシゴに乗って登場するシーンはカッコいいのに、登場した場面が1番カッコよくて、その後は基本的にずっとカッコよくなかったっていうのはどういうことだよ」みたいに言ってるわけですよ。まぁ、ボクは常にれっどさんの見解に100%同意するわけでもないんですけど、ネレウスにはモヤるな、と。

デス まぁ、逆に言うとね、あの程度の役なのにドルフ・ラングレンを配役したってことは、多分、今後も出る。だから、まぁ、今後のネレウスの処遇がどうなるのかってのは気になるところですね。それ相応の断罪はされてほしいよね。

「DCとマーベルでマイノリティの活躍を競ってほしい」

オジサン メラにはとりあえず殴ってほしいですよね〜。
 で、メラが女王になるのがいいと思うのは、2018年のはじめ頃、『バーフバリ』とか『ブラックパンサー』が女性の間で話題になって、「みんないいって言っているけど、結局、王政だし王になれるの男だけじゃねーか、なにこれ?」みたいな意見も出てたじゃないですか。現状、女性ヒーローは男性ヒーローに比べると、まだ脇役的な扱いであることも否めないし。かといって、突然、ある女性ヒーローが全ヒーローを率いる、みたいになると、それはそれで無理やり感が出てしまう可能性もあるし。ゼベルっていうアトランティスに比べれば小国ですけど、そこをメラが治めるっていうのはありじゃないかなって思うわけです。

デス まぁそうだね。

オジサン メラにはその才覚が充分あるし、カラケンとの戦い以外は全ての冒険をアクアマンと同様に経験しているわけでしょう、トレンチと戦ったり。充分にヒーローらしいヒーローしてますし…

デス それは、言えてるね。ワンダーウーマンもアマゾネスの姫で、コミックだとお母さんの後を継いで女王になるんだけど、あれは、そもそもが女性だけの国だから、老若男女全ての属性がいて、その中で女性がリーダーをやっているっていう描写は確かに少ないかも。ただ、DCだと『ジャスティス・リーグ』はポスターでワンダーウーマンを真ん中にしたり、ちょっとずつ、「男が率いる」みたいなものから「女性が率いる」ものにシフトしていこうのは、あると思う。

オジサン でも、そこで、DCがダメだったところは、ワンダーウーマンがステレオタイプ的な「母性」発揮キャラみたいになって「男の子たちはしょうがないわね〜ふふ」みたいになってたところで…。激おこですよ。

デス そうそう。だから、今後のジャスティス・リーグ第二弾、第三弾でそういうところを解消していってくれるといいよね。で、マーベルの方もキャプテン・アメリカ、アイアンマン、ソーが、そろそろ引退するだろうから…

オジサン そこで、デスのひとが、もうずーっとずーっとずーっとしつこく連呼してボクたちにウザがられている、キャプテン・マーベルの登場なわけですよね。

デス そうそうそうそう。で、マーベルはあれだけ人数がいるから、リーダー的なひとは2,3人いた方がいいね。キャプテン・マーベルと…女性キャラならワスプもいるし、で、あとは、スパイダーマンかな、男性だけど。ディズニーが21世紀フォックスを買収したことで、X-MENシリーズもMCU(Marvel Cinematic Universの略)に組み込める、ゆくゆくは合流していくだろうって話で、X-MENの次の作品はダーク・フェニックスっていう女性ヒーローを主役にした映画。だから、マーベルの方も、より多様で、シスヘテロ白人男性がリーダーであるっていうのから、マイノリティとされるようなひとたちがリーダーシップをとっていく方向にシフトしていくんじゃないか、って。そこはDCとマーベルでいい具合に競ってやっていてほしいな、って思いますね。

「みんな『アクアマン』を観よう!」

オジサン 他に何か言い足りないことあります?

デス そうだな、だいぶ喋り尽くしたかなー。まぁ、こんなもんで大丈夫だと思います。

オジサン 言いたいことはいい尽くしたかんじですか?(笑)

デス もし、言いたいことがあったら、編集作業してくれるれっどさんに「これを追加してください」ってメールしますから…

オジサン で、ボクがそれに「嫌です」って返事をするわけですね。

デス 嫌ですって、なんでオジサンが返事をするんだよっ!

オジサン うふふふふ(笑) それはともかく、これ、書き起こしたら大変なことになりますよ。

デス まぁ、なにはともあれ、アクアマンがまだ公開されているうちにアップしたいところだよね。

オジサン そうですね、応援してください。

デス はい(笑)

オジサン まぁ、とにかく、『アクアマン』は素晴らしいアクション映画でありヒーロー映画であり家族の物語であり…

デス …ラブストーリーであり…

オジサン そう、もう全部盛りってかんじで、みんなの好きなもの全部入ってるみたいな映画ですよね(ネレウスはモヤるけど)。音楽的にも素晴らしいし、っていうね。ていうことで、まだ『アクアマン』を観ていないというスットコドッコイなひとは、今すぐに映画館に行くべきだと思います。

デス そうです。


第一弾対談、長々とお付き合いありがとうございます。
第二弾もよろしくお願いします。

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