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It’s The Earth’s Lung|ベジェリンが58,617本の木をアマゾンに植える理由

この『SOCIAL ATHLETE MAGAZINE』では、ピッチ上に留まらず、社会というフィールドで活躍するアスリートの海外記事を和訳する形で、その取組みと思想を紹介していきます。

第一弾は、アーセナル所属のスペイン代表サイドバック・ベジェリン(Hector Bellerin)が取り組むOne Tree Plantedのプロジェクトについてです。

ファッションや社会活動に積極的に取り組むベジェリンの姿は、SNSを通じて伺い知ってはいたものの、彼がどんな想いで、具体的にどんな言動をしているのかまでは理解していませんでした。

環境問題をめぐって他国ブラジルの大統領に対して意見する姿や、ドレッシングルームでチームの若手選手に伝える姿は彼がまだ25歳ということを忘れさせます。

また、この記事の最後の一文が非常に印象的でした。

 「僕にとって、フットボール以外で行うプロジェクトは、それがOne Tree Plantedであるか、クリエイティブかビジネスかに関係なく、僕自身が人として成長し、ピッチでより良いパフォーマンスが発揮できるように再充電する活動です。」

自分が応援しているチームに、このような素晴らしい選手がいることを誇らしく思います。(お願いだから来季以降もアーセナルでプレーしてください...)

それでは、記事の内容をどうぞ!

ベジェリンが58,617本の木をアマゾンに植える理由

多くのスポーツ選手と同じように、ヘクター・ベジェリンはコロナウイルスによる長期に渡るロックダウンの空白の時間を、プレミアリーグが再開した時にベストなコンディションをキープするための時間に充てた。

しかし、アーセナルの25歳のディフェンダーは1日数時間のトレーニングでは満足できず、日々を退屈に感じていた。

「メンタルの調子は、体の調子と同じくらい重要だと思う。サッカーができないことによって生じた空虚感を埋める他のプロジェクトが必要だった。」

時間の経過とともに、ベジェリンの意識は彼がもとより強い興味を持っていた「環境問題」へと傾いていった。

ベジェリンは以前、自分の影響力を森林破壊や気候変動に対する注意喚起のために使いたいと話していた。そして、それを実行するのに完璧なタイミングがやってきたのだ。One Tree Plantedという森林再生の活動を世界中で展開するNPO法人を見つけ、自ら問合せを行い、その計画は発案された。2020年の6月と7月にアーセナルが勝利する度、ベジェリンは3000本の木を植林する資金を提供することを約束したのだ。

最初の目標は3万本の木を植えるのに十分な資金を拠出することだった。しかし、その期間で7回の勝利を収めたことに加え、アーセナルやライバルチームのファンから寄付が集まった結果、このキャンペーンによって最終的に58,617本もの木を植林するだけの資金が集まった。

このキャンペーンによって提供された木々は、アマゾン地域の西側およびセラードのサバンナ地帯の中心部を流れているブラジル中心部のアラグアイア川周辺に植林されるのに加え、Black Jaguar Foundationという非営利団体と協業する形で地元のコミュニティへと植林される予定となっている。

One Tree Plantedが活動しているその他の国ではなく、ブラジルの森林再生に資金提供しようという判断は、ベジェリンが意識的に決めたものだ。

「アマゾンは地球における肺の機能を担っている」と、彼は説明する。

「アマゾンはとても広大で、すごく重要なんだ。だけど、そこは貧困地域でもある。僕たちはアマゾンの森林再生だけでなく、資金的サポートが必要な地域を助けることもできる。僕たちはアマゾンを、金銭的に稼ぐ場所ではなく、地球の持続的繁栄を生み出す場所と位置付けなければならない。」

One Tree Planted 代表のマット・ヒル曰く、このプロジェクトは最終的にアラグアイア川に沿う100万ヘクタールの森を植えることを目指していて、それが完成した暁には二つの重要な生態系を結びつける森林帯が形成されるという。

「このエリアに植林することは、土壌の質向上を助け、浸食を減らし、分水嶺を守り、炭素を抑え、緑と野生動物を再生し、地元の人々を助け、非常に重要な環境面の機能を維持することに寄与する。」

しかし、過去12ヶ月に渡ってブラジルの森林保護は困難な状況に直面している。保守派の大統領ジャイール・ボルソナーロと環境大臣のリカルド・サラスが率いたブラジル政府は、向こう見ずな森林伐採の促進や不法な採鉱、原住民の絶滅危機を理由に、ついに告発された。 

ベジェリンはボルソナーロとサラスと面会した際「これらの政策は、今日の僕たちに必要な進歩に繋がらないのは明白だ。最も重大な問題のひとつは、アマゾンの森林破壊とあなた達の怠慢な政策ではないか。」と意見を述べた。

ベジェリンは、5月に流出したブラジル政府の会議のビデオ(サラスがコロナウイルスのパンデミックを、メディアが感染病の影響を集中的に報じるのに乗じて、環境規制の緩和を加速する「機会」と言及していた)を取り上げ、「アマゾンが全ての人にとってどれほど重要であるかを理解していない人々が大勢いることが信じられないし、国を率いる人間(ボルソナーロ)が、アマゾンのような場所に大きなダメージを与えていることは信じがたいね。」と続けた。

サッカーとカーボン

また、ベジェリンはビーガンとしても有名で、自分自身が排出する炭素をできるだけ減らそうと努力している。しかし、アウェイへの遠征でのフライトや、収入を生み出すためにスポーツが要する天然資源の消費によって、トップレベルのサッカーは非常に汚染されたビジネスであると言える。

ベジェリンは彼の職業と信念が不一致である現状を認めつつ、それを「環境を意識した生活を送ろうとし、行動範囲を小さくしようと考える様々な産業・業界の人々が直面するジレンマであると言う。

「現時点では、私たちがグローバルでトップレベルでスポーツを仕事にする時、低炭素な生き方を貫くために利用できる燃料や交通手段は存在しないんだ。」

しかし、彼は数年後には汚染の少ないサッカーが現実になることを変わらず望んでおり、スポーツの人気を考えると、これが実現した時には社会全体に大きなメッセージ投げかけることになるだろう。

サッカーが「声」を与えてくれる

ベジェリンはまた、サッカーがなければ、彼のメッセージがこんなにも多くの人の耳に届けられるプラットフォームを持つことができなかったと指摘しています。

「この仕事のおかげで僕は人々に声を届け、約6万本の木を植林するようなプロジェクトに取り組むことができた。もし僕がフットボーラーじゃなくて、こんなにも素晴らしいクラブでプレーしていなかったら、このキャンペーンは失われていたことだろう。」

One Tree Planted代表のヒルは、それがベジェリンと手を組むことを強く望んだ理由の一部だったと言います。 「彼は自分が信じていることに立ち向かうことを恐れない。子供たちは彼を尊敬していて、その影響力はとても大きい。子供たちのヒーローが環境に優しい未来を作ることに注力していると気づいた時、環境問題は私たち全員が気に掛けることができるものだと言うことを理解します。」

また、ベジェリンはドレッシングルームでの様子を思い出しながら笑う。

「勝利の後、チームメートは『さあ、木を植えよう!』と言ってきた。皆、愉快だね。笑」チームメイトは基本的に、ベジェリンの取り組みに対してポジティブだった。

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その中で、どのアーセナルの選手が最も興味を示したかを尋ねられたとき、彼はブカヨ・サカを挙げた。 18歳の彼は、プロジェクトの背景にある考えを尋ね、資金調達目標を達成するのをサポートするために寄付をしました。「サカの行動はチーム内で素晴らしい議論を引き起こし、何人かが参加したがってくれたことはとても嬉しかったです。」とベジェリンは付け加えた。

このスペイン人選手は、サッカー以外のプロジェクトに関与することでソーシャルメディア上で批判されることが度々ありますが、そのようなコメントについては気にしていない 

「このようなことが僕のパフォーマンスにどのように影響するかはわかりません」と彼は言う。

 「僕にとって、フットボール以外で行うプロジェクトは、それがOne Tree Plantedであるか、クリエイティブかビジネスかに関係なく、僕自身が人として成長し、ピッチでより良いパフォーマンスが発揮できるように再充電する活動です。」

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引用元|Forbesにて2020年9月1日 公開


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著書『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』http://urx.red/Fh0w|Revive Inc. PR manager◁電通ライブ・電通テック◁東京学芸大学蹴球部 学連/全日本大学サッカー選抜主務|日本に40人の苗字、ゴカツデです。#アスリートSNS本

いつも読んでいただきありがとうござます:)