「シークレット・サンシャイン」苦しみに寄り添う温かさ

ソン・ガンホの役のなかで一番好きかも

実は、ペドゥナ祭りと並行して「ソン・ガンホ祭り」も開催中なのです。ペ・ドゥナとソン・ガンホが出演するらしい是枝監督の新作「ブローカー」予習のためなのですが、イ・チャンドン監督のこの映画、本当に見ごたえがありました。つらい物語で途中何度もくじけそうになるのですが、「見てよかった」と思える魂の一作です。今まで見たソン・ガンホの役の中では一番好き。

主演のチョン・ドヨンの演技がすごい

悲しみから逃れるように新しい町にやってきた主人公の女性とその息子。
そこでまた様々な辛い出来事や心の葛藤や生きる戦いがあるのですが、また次のステップに踏み出していく物語です。
その時々に別人のように変わっていく主人公。その迫力に、ただただ黙って見守るのみ。という感じです。

寄り添う陽の光の温かさ

「キリスト教の赦し」というテーマが入ってくるので、そこにかなり引っ張られてしまうかもしれませんが、そこよりも、この映画が、苦しい目に遭う女性とずっと寄り添って歩く「温かみ」のようなものを感じました。

映画ではその役割をソン・ガンホが、まさに町の名前「密陽」(シークレット・サンシャイン)として果たしているのですが、映画を見ている人も知らず知らずに、彼女に寄り添って見てしまう。そして、次の一歩を踏み出そうとしている姿に、心の中でエールを送ってしまう。

誰も彼女を責められない、誰もが心の奥底でソン・ガンホのような存在になりたいと思っている(見た目ではなく)。ツライけれどそんな優しさがある映画だと思いました。(性善説すぎるかな…)

イ・チャンドン監督、苦しみに寄り添う温かさ

ペ・ドゥナつながりで言えば、イ・チャンドンがプロデューサーとして製作した「私の少女」(2014年)ととても似ているな、と思います。

ペ・ドゥナ主演作の中で大好きな作品なのです。
傷を負った女性が新しい町にやってきて、そこでもまた数々の葛藤を経て、また苦しみながら次のステップに踏み出していく物語です。こちらでもシークレット・サンシャインと同じく彼女に寄り添う人がいて(キム・セロン演じるドヒという少女)映画を見ている人も、ずーっと彼女を見守ることで寄り添う気持ちになる、そんな温かい視線を感じる映画です。

イ・チャンドン監督の、苦しみに寄り添う温かさと優しさ。
こうして、次は「イ・チャンドン祭り」も開催するでしょう。1本1本が重く、咀嚼に時間がかかるので、覚悟してゆっくり見ていこうと思います。

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