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おもちゃに着目して見る映画「ROMA/ローマ」

昨年見た映画「ROMA/ローマ」(2018年製作の映画)をまた取り上げます。
今回は、おもちゃに着目してみます。

街も人も、当時の「日常」が美しい

1970年代のメキシコシティの町ROMAを舞台に描く、アルフォンソ・キュアロン監督の自伝的な映画です。ある家族の姿を、家政婦クレオの視線で淡々と物語ります。

アルフォンソ・キュアロン監督が当時の町、住んだ家を細部まで再現したそうで、この時代の家族の日常、生活がとても丁寧に描かれています。

町の様子、走る車、家族の住む大きな家、リビングと台所、子ども部屋、家政婦の部屋。飼い犬にガレージ。本や本棚、洗濯物干し台、着ている洋服の生地に至るまで、当時を再現したそうです。

水へのこだわり

掃除で水をまいたり、洗濯の排水、海。水が流れるシーンが多いことも特徴。チラシにもなっている象徴的な海での出来事につながっているのでしょうか。この出来事をきっかけに、それぞれの登場人物の心も人生も大きく動きます。

数々の「水が流れるシーン」を見ていたら、子どもの頃、水たまりや排水口に水が流れ込むさまを飽きずにじーっと見ていたことを思い出します。

俯瞰的に遠くから町全体を撮影するやり方?

のせいか、町の中に生きている登場人物たちの行動や感情が際立ち、とてもよく伝わる。
あまり多く語らない登場人物たちですが、一人一人の違いや個性が際立つというか。淡々と家事、子どもの世話をする主人公クレオの姿から彼女の優しさが伝わってきます。

おもちゃに着目して見る映画

おもちゃ、郷土玩具、スーベニール、人形などが大好きなので、映画のなかでどんな小道具が使われているか?とても気になります。

ところが、「おもちゃ」が出てくる映画は意外に少ないのです。

「トイストーリー」とか「ジュマンジ」とか、おもちゃがテーマの映画はありますが、子どもが出てくる映画でも、あまり小道具でおもちゃが用意されているものを見つけられなくて。

(ご存じの方、教えてください~)

「ROMA」は子どもが4人もいる家庭なので、それぞれの子どもの部屋にいろいろなおもちゃがたくさん用意されていています。

女の子の部屋の人形たち。
手作りっぽいものも、もっとたくさん出てきます。
どれも愛され可愛がられている馴染み感がある。
どこから集めてきたのでしょう?

これだけ当時のおもちゃを集めるのは大変だったろうな、と思います。

そのおかげで、当時の時代感や子どもたちがいかに愛されて育っているか、がとてもよくわかる。

しかもただ置いてあるだけでなく、当時のおもちゃで子役が夢中で遊んでいるんですよね。「大人の生活」と同じ時間空間にありながら、実は別の世界である「子どもの生活」が、映画ではとても尊重されている気がしました。

真ん中の男の子が夢中で遊んでいるフィッシャープライス社のトーキングチャッターテレフォンは、当時世界中で人気。トイストーリー3でも登場。なかなか手放そうとしない姿が可愛らしい。

また主人公クレオは、夫婦や祖母の「大人の生活」と4人の子どもたちの「子どもの生活」の仲介者になっていて、それが物語をうまくつなげる役目をしていて面白い。

男の子たちが夢中なのはレーシングカーのサーキットおもちゃ。
音が心地よくてなかなかの名品と見た。ゆったりとした流れの映画のなかで、
スピード感あるこのシーンは、映画のよいアクセントになっています。
これだけ広いお部屋で思う存分遊べるなんて幸せよね~

政情が不安で、まだ女性がひどい仕打ちを受ける時代のなかで悩み苦しみながらも、丁寧に毎日の家事をこなし、愛情をもって子どもを豊かに育てているクレオや家族の姿。

今がコロナ禍中だから(いいえ、それ以前から!?)、子どもたちが、社会や家庭の中で大切にされていないんじゃないか、大切にするという意味がズレてるんじゃないか?と思うことが多いのですが、

この映画にとても心が癒されて、クレオの温かさが不意に懐かしくなってしまい、映画を見直してしまいました。

出てくるおもちゃのチョイスが、また良きかな。

そして、モノクロ画像がこんなに美しいなんて…と気づかされた映画でもあります。
対照的なカラーの「メイキング」は、超オススメです。



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