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小さな大間違い

電話をかけようと思っているのだが、身体が言うことを聞いてくれない。
さっきから彼の名前を表示させては消すを繰り返している。

あのケンカからもう1週間以上経つけど、電話はおろか、メールもLINEもしていなかった。

きっかけは小さなことなんだけど、お互いに意地を張って仲直りできずにいた。頑固な自分の性格が恨めしい。

彼が謝ってくれればいいのに。
そう思っていたけど、そろそろこの状況には耐えられそうになかった。

わたしから謝った方がいいかな。

再び深呼吸をして、彼に電話をかけようとすると着信音が鳴った。

「もしもし! アヤコ?」
切迫した声が耳に飛び込んできた。

「なんで連絡くれないんだよ」
わたしが何かを言う前に彼はどんどん言葉をつなげる。

「まだ怒ってる?おれが悪かった。ごめん。もう許してくれよ」
少しの沈黙。

「アヤコ?」
心臓がバクバクいっている。
わたしは言葉を紡ごうとしたが、声がでなかった。

「なぁ、何とか言ってくれよ!」
彼の勢いに身体がびくっとなる。
焦ったわたしは思わず電話を切った。

「ふぅ、ビックリした」

それにしてもアヤコさんって誰なんだろ?

タイミングよくかかってきた間違い電話を黙って切っちゃったけど悪いことしたかな?

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