「帰宅部ボーイズ」感想

帰宅部ボーイズを読み終わった。

一度読んだ時から、大好きだった話。もう一度、図書館で借りて読んだ。
思ったままに、好きに感想を書きます。セリフに軽く触れることもありますが、内容に強く踏み込んではいないので、
こちらを読んだそのあとに本を読んでもじゅうぶん楽しめると思います。よろしくお願いします。

中学生、そこに限定しなくても良いのですが、学生時代はなにかと悩みがつきものです。
もちろん今も悩みは尽きません。しかし今の悩みと当時の悩みは比べられない、同じ舞台に立たせられない次元にあると思います。
特別、な時代なのです。

それは私が思うに、はじめての連続だから。
作中に「青春とは、はじめて秘密を持つ日」という亀井勝一郎氏の言葉が出てきます。
はじめての恋、はじめての仲違い、人には言えないこと……。
何かを自分の中に閉じ込めることがこの時期に急に増えるように思います。ものごとの分別や、考える力が発達するから、でしょうか。

小学生のころは、この子たちと遊ぶのが楽しいし当たり前、嫌いなあの子がいるから交換ノートで悪口を書く、
たまに学級内で問題が起こり、道徳の授業のような話し合い。クラスも少なく、全員が顔見知りの世界でした。

しかし中学にあがると、人数も倍近く、またはそれ以上に増え、様々な動きがみられます。そして前述したとおり、
物事の分別がつくようになるので、「あえて表に出さない」という選択が増えるのです。
こんなことを思っているけど、言ってしまったらややこしくなる・言ったら気を悪くするだろうな。というものから、
〇先生に対してはおとなしくしておこう、□先生は冗談も通じる、という「うかがい」「舐め」など。

自分自身の年齢があがる、子どもではなく大人の手前になると、子どもではないがゆえの悩みが生まれるのです。

しかし私自身、中高校生の時は、何に悩んでいただろうと思いだしてみようとすると、どうにもうまく思い出せません。
この子らだけは、という特別な友達もいたし、おそらく苦手な友達もいたと思います。
特別な友達にたいする嫉妬心のようなものも抱えていました。高校生の時は、週に2回ほど保健室に行くような時期もありました。

当時はただただ、ほの暗い「闇」でしかなかった言いようのない悩みは、今になると、なんとなく言葉にすることができます。
保健室通いに関しては、ただたんにホルモンバランスが乱れていたように思います。(数年後、月経からくる貧血により入院。
自分はそんなに丈夫ではないことに気づく)

もうひとつ、印象に残っている言葉があります。

「自分っていうのは、それまでのすべての自分の経験の堆積なんだよ。(略)必要のなかった経験なんて、なにひとつない。
それはね、望もうが、望むまいが……(略)」
これは、この本の主人公のひとりが発したものです。(この本には少年3人が出てき、その中に明確な主人公がいるのですが、
あえて全員を主人公とします)
このセリフを読み、パチリ、と自分の中のスイッチが鳴りました。その瞬間、今までしてきたいろいろなことが思い出されたのです。

没頭した趣味、ともだちと遊んだこと、いじめられたこと、いじめたこと、テストで良い点をとったこと、自分が泣いていたこと、
母親が泣いていたこと、自分が笑っていたこと、まわりのみんなを笑わせたこと、隠していること。

最高だ、ということも、最悪だ、ということも、全てが今の私の中にあるのです。あの時最悪なことをしたから、今その最悪を避けられる。
あの時最高の思いをしたから、今も踏ん張れる。本当にかけらも残さず私の中にあるのです。
それがたとえ今思い出せなくても、自分の書庫のなかに眠っていることでしょう。

自分のなかに全部が積もっていく、と考えたら、過去をずっと見ている時間がもったいなく感じてきました。
過去をいちいちのぞかなくても、あるのですから。
今、今を生きることが、最大のパフォーマンスだと思います。

本とは離れますが、好きな歌に「今日さえ明日過去に変わる」というフレーズがあります。
今を生きながら、少しだけ未来に顔を向けながら進んでいこう、場合によっちゃ走っちゃおう。
そう元気にさせてくれます。

この本は、彼ら3人の青春をのぞくことで、気持ちを思い出させてくれるものでした。
あの時の気持ちを思い出すことで、過去があることを思い出す。過去に浸ることはないけれど、今を、その先の未来を生きていく実感が湧いてくる。
気持ちの良い気分です。
彼ら3人、そして出てきた人たち全員が、幸せになっていてほしいです。私も悩みながら幸せになりますから、みんなで幸せになりましょう。

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