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SaaSスタートアップで論点になる会計処理あれこれ

どうも、最近発売されたスプラトゥーンの一番くじでA賞を引き当てて、mihimaru GTくらい気分上々↑↑のすとうです。X⇒(gomashioJr)
スプラトゥーンのExpansitonシリーズも今月発売されるし、いろいろ楽しみが増えますね。

さて今回は、監査法人、証券会社、スタートアップ事業会社に所属した公認会計士の立場として、SaaS企業で論点になる会計処理あれこれをつらつら書いていこうと思います。
途中から有料になっていますが、9割くらいは記載しているのでよしなにご覧いただければ幸いです。

はじめに

このnoteの内容

主に、未上場のSaaSスタートアップにおいて、検討されることが多い会計処理論点を7個にまとめています。
自分の経験則上、SaaSスタートアップ企業において議論となる会計処理論点は、ある程度定番化されているケースが多いと感じたので、自分の備忘も兼ねてnote発信しようと思いました。
会計処理をしっかり固めることは、適切な財務諸表の作成に重要なことはもちろん、適切な事業計画作成するための必要条件でもあるので、早いうちにしっかり固めておくこと重要です。
ここを固めず誤った会計処理をしてしまうと、フェーズが進んで監査法人が入った際、売上や利益が修正することになり、事業計画、ひいては株価評価に大きな影響が生じ兼ねません。
既存株主や銀行とのステークホルダーコミュニケーション、今後の資金調達、上場スケジュールの組みなおしが発生する可能性もあります。書いてるだけで胃がもげそうな影響です。今回のnote記事は、適切な財務諸表作成、サプライズのない事業計画作成に少しでも貢献できれば幸いです。
ただ、本記事では正しい会計処理を示す意図はなく、このあたり論点になるから、しっかりと監査法人等と協議してから進めようね、という論点紹介を意図しています。

読んでもらいたい方

未上場SaaSスタートアップで経理や事業計画作成に携わる方々にお届けできればと思います。
ある程度会計処理の理解がある方を前提にしているため、専門用語は解説せずに、そのままつらつら書いていますので、その点はご了承ください。

その1:初期費用の取扱い_収益認識会計基準

まずはじめは、IFRS15がJ-GAAPに異世界転生した「収益認識に関する会計基準」の影響についてです。トップラインである売上高に影響を与えるため、事業計画、その後の資金調達にも大きな影響を及ぼすのでとっても重要な論点。
SaaSにおいて、最初の環境構築やらオンボーディングやらの工数見合いで初期費用といった名称で役務提供を行うケースが多いと思います。
トップラインの主要KPIはMRRなので、初期費用部分の売上の重要性は高くないように思われますが、2021年4月以降から適用された「収益認識に関する会計基準」の影響をもろに受ける部分であり、会計処理上の論点になるので、しっかりと整理する必要があります。

「収益認識に関する会計基準」適用前は、初期費用に係る売上は、契約締結時に一括して売上計上するケースが多かった思います。
「収益認識に関する会計基準」が適用されることで、ざっくり言うと、役務提供(履行義務)がなされた分を売上として認識してね、という会計処理が求められるようになりました。なので、一括売上計上ではなく、導入支援に応じた役務提供の進捗に応じて売上を計上するイメージとなります。
このあたり、どのように売上計上するかは個社事情でわかれる部分となるので、監査法人としっかり協議して、事業計画にも反映させることが重要です。

その2:SOに関する会計処理

巷で話題となっているSO。ここでは税制適格SOについて話します。税務上の取扱いと、会計上の取扱いはわけて判断する点は従来通り変わらないので、すなわち、会計処理の考え方も従来と変わりません。
①株価算定レポートを取得して、「客観的な会計上の時価」を算出して、②設定した権利行使価格と比較して、③「客観的な時価」>権利行使価格となっていた場合は、本源的価値を株式報酬費用として計上することになります。(キャッシュアウトは伴わないですが。)
会計上の取扱い自体は以前から変わらないのですが、2023年5月の国税通達で税務上の取扱いが明確になった結果、ひとつの株式に、会計上と税務上の株価がそれぞれ別個に評価される一物二価の状況になっていると認識しています。このあたり、会計上と税務上の処理をしっかり理解することも重要です。
つらつら書きましたが、結局ここで重要なのは、会計処理よりも、その大上段となる資本政策を含むSO設計になります。今回は言及しませんが、SO設計はかなり奥が深く、経営陣を巻き込んでしっかりと議論すべき論点です。

その3:資産除去債務

急成長スタートアップあるあるのオフィス移転。コーポレート立ち上げを任されてスタートアップにジョインして、そのままオフィス移転を任された人も多いことでしょう。
オフィスを移転するということは、現状のオフィスにおいて原状回復をする必要があります。その部分を資産除去債務としてしっかり会計処理、および事業計画作成に織り込みましょう。ぼちぼち典型論点として認知されていると思いますが、まだちょいちょい考慮が漏れているケースがあるのでしっかり押さえておく必要があります。
赤字の場合、消費税の還付とかも生じたりするので、そのあたりも見込めればより精緻になります。

その4:減損会計

赤字のスタートアップ、2期連続の赤字orキャッシュフローマイナスで減損の兆候判定に引っ掛かりがち。
見積りの世界とはなりますが、今のオフィスにどれくらい在籍するのか、事業計画の進捗、黒字化のタイミング等を監査法人と議論しておきましょう。
オフィス移転が頻繁に発生するスタートアップにおいて、会計基準を素直に適用すると、オフィス移転後に取得した固定資産がその期に全額減損。。。ということにもなりかねないので、個人的には、会計基準もう少しスタートアップの実態にそってガイドライン出せばいいのに。。とは思っています、はい。

その5:税効果会計

みんな大好き税効果会計。監査法人時代、税率差異の検証があわなくて、エクセルが夢に出てきたら一人前と言われたことがあります。
赤字スタートアップだったら、だいたい分類は5になるので回収可能性はなしと扱われるケースがほとんどだと思います。
ただ、検算の意味も込めて、税率差異の計算は社内でしっかりできるようになっておく必要があります。そのため、永久差異、一時差異はしっかり把握して、税率差異調整シートを作成しておきましょう。黒字化したら有報の開示対象にもなりますし。

その6:資金調達後の資本割

大きな資金調達後にたまに忘れがちなので、資本割の影響です。大きな資金調達をすると、資本割が相応に発生して、PLに影響を与えるので、しっかりと事業計画に反映しておきましょう。IPO時に公募する場合も、しっかりと考慮しておくべき論点です。

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