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ブロックチェーンによる証券デジタル化への期待

2019年5月13~15日に米国ニューヨークで開催された世界最大ブロックチェーンカンファレンス Consensus2019は、ブロックチェーンビジネスシーンにおいて転換点を迎えつつあることを象徴するものだったと思います。
(CoinDeskJapan様と共に開催した報告会の模様はこちらご参照)

下図は過去5回のConsensus参加者数の推移ですが、昨年の異常値を除けば、順調に参加者は増加を続けている状況です。世に「Crypto Winter」と言われはするものの、かえって投機的な勢力が去り、健全なビジネス環境が戻ってきたとも言えるのかもしれません。

More realism, more suits, less Lambos:Lamboとはランボルギーニの意味で、昨年のConsensus2018には「ICO長者たちがランボルギーニで乗り付けた」とされるくらい投機的な熱狂が会場を支配していた。一方、今年はそれらが姿を消し、スーツ(実体的なビジネスを行う人)が増え、現実的なユースケースの議論が深められたと評価された。

Security Token

さて、昨今のブロックチェーン業界では、セキュリティトークン(もしくは証券トークン)が急速に注目を集め、ややバズワード化しています。今回のConsensus2019においても多くのセッションがセキュリティトークンをテーマに取り上げていました。

セキュリティトークン(もしくは証券トークン)とは、ブロックチェーンネットワーク上で発行されるデジタルトークンのうち、証券性を有するもの。セキュリティトークンのオファリングは STO(Security Token Offering)(ICO(Initial Coin Offering)に対して)と呼ばれる。ブロックチェーンの特性を活かし、不動産受益権やファンド持分をボーダーレスかつセキュアに移転可能とする。国内では金融商品取引法改正法案において「電子記録移転権利」と定義される。

ブロックチェーン業界は、より現実的なユースケースを渇望しており、セキュリティトークンもその1つとして期待が寄せられています。

セキュリティトークンには、2つの考え方があると認識しています。
1. STO = "regulated ICO"(ICOの延長線
2. 既存の証券化ビジネスの高度化(証券化の延長線

私はセキュリティトークンは 2. の考え方で捉えるべきだと感じています。Consensus2019においても、「STOという呼称は非常にミスリーディングであり、セキュリティトークンをICOの延長線上で捉えるべきではない」というコメントも見られました。

実際、セキュリティトークンは、先に国会で可決された金商法改正法案に記載されている通り、本邦においては、「証券」であり、「仮想通貨(現在は暗号資産)」とされていません。そういう意味で、よりトラディショナルな金融の土俵で議論すべき題材であると考えます(ICOは既存金融が忌避する領域であるのは事実です)。

既存の証券化の延長線、で議論を深め、実際のビジネスとして根付かせていくことを目的に、2019年5月27日付で「一般社団法人 日本セキュリティトークン協会」を設立しました。

当協会の目的:当協会は、セキュリティトークンの技術、制度、ビジネスに関して、調査、研究、普及・啓発活動等を通じて、セキュリティトークンの品質向上を図り、セキュリティトークンを用いたエコシステムの健全性の確保に努めるとともに、公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上に寄与し、日本経済の健全な発展に貢献することを目的として活動しています。

従来ブロックチェーンビジネスに携わっていた企業だけでなく、むしろ、証券化ビジネスに携わっていた企業とも連携のうえ、この新しいマーケットを健全かつ現実的なビジネスが行われる場にすることを目指しています。

一方、これは国内の知見だけで実現できるものではなく、海外で先行する技術開発・適用事例を取り込みながら、本邦における法規制に合わせたかたちに整えていく必要がある領域です。
協会では、セキュリティトークン発行プラットフォームのリーディングカンパニーである Securitize Inc. と提携し、この要件を満たしていきます。

2019年6月19日には、提携を記念して "The Tokyo Security Token VIP Networking Event"を開催し、ショートノーティスながら多くの来場者に恵まれました。本邦においてはまだまだこれからの領域ではありますが、関心の高さを伺わせました。

また、2019年7月には全4回でセキュリティトークンについて理解を深めていただくためのセミナーシリーズを開催し、マーケットの土壌造りに取り組んでいきます

これからの新たなビジネス機会の拡がりに期待しています。