午睡

春の昼。
架空の横浜駅を、大きな大きな懐かしさに包まれながら観光する夢を見た。
ただ街の構造的には、横浜駅というよりは「横浜駅並に発展した天王町駅」の方が近かった気がする。

夜の橋から目えた、暗がりの向こうでただネオンだけが明滅する景色が綺麗で、友人と写真を撮っていた。
何より夢の中の自分には、春に侵されて重くなった頭を引きずるような感覚が無く、身体は軽く、心地良かった。

夢の中の横浜駅は、帰る時に途方に暮れるほど遠かったが、そういえば昨年の6月、横浜まで足を延ばした時は、夜も飲んでから平気な顔して帰ったのだった。
あの時の自分には、当時頭を埋めていたこと以外の全てが気にならなかったのかもしれない。

覚醒してベッドから身体を起こすと、朝イチで薬を飲んでいたはずなのに、花粉症の症状が割と重く、部屋を出る気を失わせる。
花粉の所為か、最近すっかり出不精になった。まあ明日は一日中コートを走り回っている予定だし、それも良いか。

寝る前の感覚を思い出すと、朝方まで起きていた自分はいつもより余計に重くなった頭を抱え、睡眠時間が少な過ぎて寝るに寝れなかった。頭に靄だけを詰め込んだような感覚を、いつかの春にも味わっていたなと、ただ思い出したことに少し自己嫌悪に陥っていた。
朝の首都高を抜けた時の光景が浮かび上がるが、それ以上を思い出すことはしない。ループにループを重ねた思考に付き合っても仕方ない。幾度も語り尽くした話を語っても仕方ない。

架空の夜の橋から見た景色は、前に隅田川沿いで撮った写真とよく似ていた。今度、夜に行ってみようか、とか考える。
桜が散ってゆく。

今度、夜にここに来てみよう

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