【22/23シーズンLaLiga開幕節】FCバルセロナvsラージョバジェカーノをバルサ目線で振り返る。

1.はじめに


 2022年8月14日(日)、遂にブラウグラナの新シーズンが始まった。財政が安定しない状況で"クラブの未来"に投資するための大型補強も実行し、プレシーズンからサポーターの期待も大きく膨らんだ中迎えた22/23シーズン。昨シーズンの冬に、クレ念願の帰還を果たしたチャビ監督が一から指揮をとるシーズンということもあり、たくさんのクレやその他世界中のサッカーファンが注目していたことだろう。また新加入選手の登録が間に合うのかどうか、についても注目を集めた。そのような状況で多くの期待希望不安を抱え、FCバルセロナのホームスタジアム、カンプノウで迎えた開幕節ラージョバジェカーノ戦。今回はこの試合について振り返っていこうと思う。


※著者は初めてこのような文章を製作するため、至らない点もあるかと思いますが温かい目で読んでくださればと思います。
 
またバルサ視点に重きを置いて文章を書いていきます。

2.前半の戦い方~リスクの高いビルドアップ~

まず、バルサの初陣は以下のようになった。


  GK:テアシュテーゲン
  CB:エリックガルシア、クリステンセン
  SB:ジョルディアルバ、ロナルドアラウホ
DMF:セルヒオブスケツ
CMF:ペドリ、ガビ
 WG:デンベレ、ラフィーニャ
  CF:ロベルトレヴァンドフスキ


バルセロナスタメン


 デストが招集外になったことで試合前に予想されていたセルジの右ラテラルとは異なり、まさかのアラウホが起用されることになったがそれ以外は予想通りで、布陣はお馴染み4-3-3を採用。
 またプレシーズンでも安定感のあった、チェルシーからの新加入クリステンセンを含めたCBコンビを起用。WGもデンベレとともにこちらもリーズからの新加入ラフィーニャを起用し、プレシーズンから調子の良い2人を起用することとなった。

 一方で対するラージョは4-2-3-1を採用し、守備時にはトップ下のトレホが前に出てきて4-4-2に可変するようなシステムで臨んできた。

 さて、両チームこれらの布陣を組んで前半が始まった。まずは試合の入りとして重要な最初の15分に何が起きていたのかまとめていく。
 
 ラージョはバルサの攻撃の要、ブスケツをマンマークすることはなく前線2枚の選手がブスケツへのパスコースを切るようにして、こちらのCBにプレスをかけてきた。ブスケツにパスが当てられないので、前線にいるレヴァンドフスキに楔のパスが入ることもなく、なかなか思うようにビルドアップができない状況だった。
 またブスケツにパスを通せないなら、一つ飛ばしてペドリ、ガビにパスを当てたいところだが、ラージョの2ボランチのマークも激しくこちらにもパスを入れづらい。パスが入ったとしても簡単に前を向かせてくれず、攻撃に繋がることは少なかった。

 このような形で出だしは完全にラージョにビルドアップを封じられ、攻めあぐねる状況が続いた。ラージョの攻撃もわかりやすいように大きく前線にボールを配給するようなものだったためバルサがボールを即座に回収し、後方から回す展開が続いたがそれ以上でも以下でもない内容だった。
 更に前線のデンベレとラフィーニャもオンザボールで輝く選手であるため、特に前線で動き出すという場面も見られず足元でボールを受け、個の突破でサイドから崩すシーンが多く見受けられた。

 このような流れで淡々とした前半となったが、一つバルサにとって危険なことがあった。

 それは左のアルバと右のアラウホが常にワイドに張っていることだった。

 相手のサイドハーフを広げる役割を持たせて、CB2枚を相手の前線2枚プレスの外へと(脇へと)運んで、前線へのパスコースを作ることが目的だったと思うのだが、これはあまりにもリスクが高すぎた。何故か?
 ブスケツが最終ラインに落ちてくることがなかったため、もしエリックやクリステンセンがボールを失った際に、ラージョは攻撃でプレスにきていた2人でカウンターしてくるのに対して、バルサの守備はボールを失っていない方のCB1人で守ることとなり、数的不利な状況が生まれる可能性があるからである。さらにCBは相手のプレスに対して外側をとろうとしていたため、真ん中がぽっかり空いてしまうのも問題点にあげられた。
 この状況ではブスケツが最終ラインに落ちると、リスクマネジメントもできて安定してビルドアップすることができると思ったのだが、特にそのような指示が出た雰囲気もなく前半はそのまま終了した。
 チャビ監督も前半で大きくシステムを変えることはなく、1つだけテコ入れしたのが両WGのポジションチェンジであったが、特に攻撃が冴えわたるということもなかった。


3.後半60分過ぎ~3人の選手の投入~

 ここからは後半60分からの戦い方についてまとめていく。後半が開始してもシステムが変わらず、依然前半と同じ展開だった。
 しかし、ここにきて遂にバルサのベンチが動くこととなる。

【交代】60'  ラフィーニャ➡アンスファティ
      60'  ガビ➡フレンキーデヨング
    60'  クリステンセン➡セルジロベルト

 

 前半から上手くいっていなかったアラウホのラテラルをやめ、前線でも連携しながら攻撃参加できるセルジを投入した。また、パスが前線に通らないことから個人で突破できるフレンキー、前線でのオフザボールの動きも上手いアンスを投入した。前半からラージョの左サイド(バルサの右サイド)からの攻撃は怖くはなかったため、セルジの投入は良かったと思う。

 また、フレンキーが後ろから運びパスコースを作り、アンスがサイドで受けて攻撃のスイッチが入る等、それなりに押し込む展開が増えてきた。そしてWG(アンス)が中に位置取るようになり、アルバが大外の高い位置をキープしたりとこれまでになかった攻撃をするようになった。

 が、しかしラージョの守備が簡単に崩れることはなく、アンスやブスケツそれぞれのエリア付近からのシュートもラージョのGKディミトリエフスキのファインセーブに阻まれ、ゴールに結びつくことはなかった。


4.後半70分からの戦い方 ~3-4-3の形成~

 【交代】72'  ペドリ➡ケシエ

 後半70分が過ぎて新加入ケシエも投入し、中盤の強度が増した。しかしインテリオールがフレンキーとケシエになることでビルドアップが上手くいかなくなるのでは?と感じていたが、実際はそんなことはなかった。
 
 布陣は4-3-3と変わることはないが、フレンキーが低い位置を取ることで右からアラウホ、フレンキー、エリックの実質3バックを形成。
 
フレンキーが高い位置にいるときは代わりに、セルジが右のCBに入ることもあった。
 
 また左のアルバが高い位置でサイドに張りつつ、中盤の底にはブスケツが構え、交代して入ってきたアンスは中に入ったり、外にいたりという割と自由なポジショニング。
 投入されたケシエもパスを受けに落ちてくることはなく高い位置を取り続けており、相手の4-4ブロックの間で上手く構えていた。
 セルジはフレンキーの様子を見ながら、中盤に入ったり最終ラインに落ちたりとバランサーの役割を担っていた。

 これによりラージョの変わることのない4-4-2の守備に急遽出来上がった3-4-3をぶつけることとなり、比較的パスが回るようになった。レヴァンドフスキに楔のパスが入るシーンも多くなり、シュートもこれまでより良い位置で打てるようになっていた。
 
 後半80分を過ぎてようやくバルサの攻撃も良くなってきたところでチャビ監督、最後の交代カードを切る。

【交代】82'  ジョルディアルバ➡オーバメヤン

 ここで集中力が切れかけているように見えた右WGのデンベレに代えるのかと思われたが、チャビ監督は左のアルバと交代させた。

 これによって布陣はどう変化したのか?

 左右のWGであるオーバとデンベレがサイドの高い位置に張り、最前線に構えるレヴァンドフスキの1列後ろにアンスが入った。
 中盤はフレンキー、ケシエ、ブスケツが逆三角形を形成し、最終ラインは右からセルジ、アラウホ、エリックの3バックが出来上がった。

 そう、最終局面で中盤ダイヤモンド型の3-4-3が出来上がったのだ。
 ラージョの4-4-2の布陣に対して有利な陣形を作り、得点に繋げることができるか?と思われた。しかし、フレンキーが前でパスを受ければ良いものの相変わらず落ちてきてカオスを生んだり、最後までシュートを決めきることができずそのまま試合終了。
 試合終了間際には疲れが見えたデンべレのドリブルミスや、ブスケツのアクシデンタルなプレーに対して主審のエルナンデス×2のレッドカード提示というファインプレーもあり後味の悪い試合となった。(前半のエリックの同じプレーには注意で終わってただろ)
 
 次の章で後半の攻撃とフレンキーについてまとめていく。

5.バルセロナとフレンキーデヨング

 後半に入って、フレンキーが投入され前半とは違ったサッカーを展開することとなったバルセロナ。試合中や試合後には「フレンキーはバルサに残すべき」であったり、「フレンキーを売却してしまうのは勿体ない」などの意見が散見された。
 
 なのでここでは何かと話題のフレンキーについてまとめていきたい。今回はラージョ戦のみに焦点を当てて考えていこうと思う。
 
 まず面白いデータがある。これは試合を見直して、独自に分析したことであるので特段説得力のあるデータではないかもしれないが共有しようと思う。それは最終ラインからのビルドアップとシュートでその攻撃を終えた回数についてである。

※最終ラインから始まった攻撃で撃ったシュート本数であるため、こぼれのシュート本数はカウントしていません。(後半60分辺り以降)
 
・最終ラインからフレンキーが運ぶことがなかったときのビルドアップ
シュート本数:5本
・最終ラインでフレンキーがボールを受けて運んだときのビルドアップ
シュート本数;0本            
                      ○計シュート本数5本

 最終ラインから始めたビルドアップをシュートで終えた回数は5回であったが、その5回すべての攻撃においてフレンキーの持ち運びは関与していない。
 フレンキーの持ち運びはビルドアップの手段の1つでしかないから、フィニッシュがどうであったかは関係ないと言われればそれまでだが、実際に結果としてはこうであった、ということを知ってもらいたい。



【90分の場面】
フレンキーが寄ってしまったシーン。
アンスの裏にはスペース(ポケット)が生まれている。

 続いて90分の場面。見直してみると分かりやすいが、左サイドでボールを保持するアラウホから縦パスが入るか?となったシーン。
 結果を言ってしまえば、アンスが前から絶妙な位置に落ちてきてパスを引き出したもののそのパスコースにフレンキーが寄ってしまい、上手く前にパスを供給できなかった場面であった。
 
 この場面では縦パスを刺すことはできず、左に張っていたエリックにパスが渡ったが、ボールを受けたエリックの前にはオーバがサイド際に大きく張っていた。
 もしフレンキーが落ちてくることなくアンスが落ちて空いたスペースに飛び込んでいれば、オーバに渡ったときに落としのパスをもらえて前を向いた状態で運ぶことができたのではないかと思う。
 
 要はフレンキーが無暗やたらにボールホルダーに寄るのではなく、誰かが空けたスペースでパスを受けて彼の長所を発揮出来れば、相手にとっても脅威となるしより効率的である。最終ラインにわざわざ降りてボールをもらって前へ運ぶのはスタミナ消費も激しく、チームにとっても守備の面でリスクを伴う。となれば3人目の動きでボールをもらい高い位置から持ち運ぶことができれば、良いのでは?と感じた場面だった。
 
 以上が個人的にではあるが、今試合を通して持った彼に対する感想である。ここで1つ勘違いして頂きたくないことは、決してフレンキーを批判している訳ではない、ということである。
 彼は大きな戦力であり素晴らしい長所を持っているため、バルサに残留するのであれば、実力を存分に発揮しつつチームの戦術に馴染んで頑張って欲しい。



6.終わりに

 今回はLaLiga22/23シーズン、FCバルセロナ開幕節のラージョ戦についてまとめてみた。
 やはりプレシーズンとは違い簡単には勝てないことを痛感し、久しぶりにリーグ戦の緊張感やイライラを感じることができた。シーズンの初戦で勝ち点3を獲得できなかったのは辛いが、まだまだリーグ戦はこれからであるため、チームが改善し強いバルサを観れることを願っている。

 ライバルのレアルマドリードアトレティコマドリードが勝負強く勝ちを収めていることは悔しいが、今季はより熱いリーグ戦になると思うとワクワクする。
 次節の相手は開幕戦で勝ちを収めていたラレアル(レアルソシエダ)である。日本でも期待度の高い久保が今季からローンで所属しており、チームとしてもかなり仕上がっているように感じた。そんなラレアルとの試合はエルナンデス×2のおかげでブスケツが不在のため、より難しくなると思うが今季初の勝利を収めて欲しい。

 
 拙い長文を最後まで読んで頂きありがとうございました。初めて書いてみましたが、またバルサについて様々な記事を書こうと思っているので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
 
 それでは次回の記事でお会いしましょう。
      
      ご精読ありがとうございました。

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