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楽しい閉塞感

大空に底を見た
雲は凍てついて全て落ち
残された青には霜が降る
そんな冬枯れの空に底を見た

水底に天井を見た
風の不在に波は活気を失くし
魚達は冬を恐れて水天を目指す
そんな冬晴れの海に天井を見た

木枯らしの中に壁を見た
道行く人々を押しのけて
哀れな落ち葉で道を彩る
そんな冷たい風に壁を見た

酷い圧迫感だ
世界は広いはずなのに
惨い閉塞感だ
世間は広いはずなのに

一寸先の暗闇
何も得られない焦燥
失うばかりの苛立ち
私を閉じ込めているものは何だ

きっと誰でもない
他ならぬ誰でもない
世界が狭くなるわけがない
私が狭いと感じなければ

どうすればいい
この趣味の悪い水槽を
何をすればいい
それが分かれば苦労はしない

さて、楽しくなってきた
何から始めようか
何から止めようか
取捨選択こそが人生だ

天井を突き抜けた先を
底を踏み抜いた先を
壁を押し退けた先を
夢に想って暴れて回れ

叶わず死ぬならそれもいい
閉塞感に腐るくらいなら
死因はきっと窒息死
充足感による酸欠だ

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自由律俳句

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