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墓参りは千鳥足で

夏を懐かしむ陽光
枯れ果てた水鉢
腐り垂れる仏花
佇む私を嘲る風

気持ちよく青褪めた空
物言わぬ先祖の群れ
文句も言わず地蔵は並び
両の掌を祈りが繋ぐ

何を祈る
先祖の列に加わった貴女の冥福か
何で祈る
そんなものを信じていない私が

神か
仏か
唯の石の塊か
私が祈っているものは何だ

貴女はそこにいるのか
寂しがりだった貴女が
こんな寂しい山奥に
眠ってなんていられるのか

分かっている
全ては逃避だ
終わったものの続きを想う
弱い私への慰めだ

立ち上がれ
生きているのなら
歩き出せ
生きようとするのなら

神はいない
仏もいない
貴女はもうどこにもいない
石の前で座り込むのはもう止めだ

悲劇の酔いは未だ醒めない
酩酊はしばらく続くだろう
呂律と足元は覚束ないまま
それでも真っ直ぐ歩く努力はするさ

私が愛した貴女の為に
貴女が愛した私の為に


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