見出し画像

みんな、授業で劇やるってよ!

こんにちは。りなおです。
急に寒くなりました。
秋支度が間に合わず少し焦り気味で過ごしています。

『史記』鴻門之会

さて現在、古典の時間では漢文『史記』の鴻門之会を読んでいます。
これも定番ですね。剣の舞、樊噲の演説、沛公脱出、そして四面楚歌の場面をやる予定です。項王、范増、項伯、項壮、劉邦、張良、樊噲、曹無傷などたくさんの人物が登場し、さまざまな行動をします。そしてその行動には必ず心情(意図)があるという「行動と心情の関係」を意識させながら読んでいます。

授業の定番「劇」はちょっと…

そこでよくあるのが、劇をさせる授業案です。
私は正直、劇をさせる理由が自分の中で見つからなくて今まで一度もやったことはありませんでした。内容理解のためだけに劇の準備をするなんて、そんな時間もないし、いや、劇をやらなくても理解できるんじゃないかと思っていた方です。もちろん、今年度もやるつもりなく授業をしていました。

ところが結論、やりました。自分の中で劇をさせる理由がぴったりハマり、納得できたからです。感想としては、「やってよかった!」です。
「鴻門之会」にはたくさんの登場人物がさまざまな行動をし、会話文もあります。行動と心情の関係性を探ろうという目標で授業を進めていました。
例えば、この一文の行動には、どちらの軍のどのような意図が隠れているか。想像ではなく、文章で書かれた出来事、事実を根拠に類推しようというものです。

脚本を作ってみよう

それが終わったら、「これを元に脚本的なものが書けるのではないか?」と。ここまでのあらすじ+「剣の舞」の範囲を5場面に分け、各班1場面の脚本作りに入りました。全部で10班あるので、2チームで同じ場面を違う脚本で比べられるというのもよいと思いました。生徒たちは思いのほか熱心に進めていました。

劇をさせる理由

私はまだその時点では、劇をさせるつもりはありませんでした、脚本作りで十分かなと思っていました。しかし、生徒たちが本文と向き合い、隠れた意図を拾い上げ類推し、それぞれの脚本がいい出来だったのです。これは、生徒に演じさせアウトプットさせるのがよいのでは?と。劇をさせる理由は「文章の中で出来事や事実が起こり、登場人物が行動に移す。その間には必ず心情がある。その見えない心情を、書かれている情報から類推する力をつける訓練になるということ。また、それをアウトプットすることで記憶に残り、定着することも期待できるかも」です。これは、生徒にもしっかり伝えました。

いざ本番!

そうして、劇を披露する時間を取りました。生徒には「本気の劇をしろというのではない。作った脚本を披露するレベルでもよい。」と言っておきました。誰がそのセリフを言っているのかわかりやすくするために、ルーズリーフで簡易的にネームプレートを作り、ビニールテープで首からかけてもらうことにしました。玉玦や、剣など小道具を作る班もありました。
いざ、本番。一言でいうと、予想以上でした。聞けば、休み時間や、昼休みに練習したのだそう。その授業には鎮座系(前記事参照)は存在しませんでした。そして、私は私の中に驚くべき感情が生まれたことを認めざるを得ませんでした。それはちょっとした「感動」です。生徒たちの演技ははっきり言って下手くそです。でも、感動させるものが私にはあった。たぶん、私の「劇やろう!」という無茶ぶりに一生懸命答えてくれた姿が見えたからではないでしょうか。(だから、この仕事辞められないんだよな…)

類推する力

この授業が成立したのは、時間的余裕があったからです。実は、組んでいる他の先生たちよりも、私は3~4時間ほど早く『史記』に入っていたからできたものでした。時間に余裕がなければ、やろうとすら思えなかったかもしれません。劇の授業の最後に私からも一言いわせてもらいました。
「私の劇やろうの無茶ぶりに「めんどくさい」「だるい」と思った人もいると思います。私にとっても劇をやる授業をするというのは挑戦でした。劇をするという授業案は定番といえば定番で、それでも私は一度もやったことはありませんでした。やる意味が私の中ではしっくりこなかったからです。でも、今回行動と心情の関係性を探ろうという授業の中で、劇の有効性を感じました。今すぐには劇をやった意味や身につく力の実感はないかもしれない。でも、無駄なことさせたとは全く思っていません。みんなは本文と向き合って心情をいろいろ類推しました。それは小説の問題を解く時にも生かされるし、社会に出ても必要な力です。実際、社会では一つの決まった正しい答えを求めることよりも、さまざまな事実からいくつかの答えを類推することの方が多い気がします。それに、一つの決まった答えを探すのはAIには負るでしょう。だから脚本を作って劇をしたということに意味がないなんてことはないからね!」

最後までお読みいただき、ありがとうございました!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?