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あとで読む・第42回・内田也哉子『BLANK PAGE 空っぽを満たす旅』文藝春秋、2014年)

内田也哉子さんに関するそれまでの私の知識は、
・父が内田裕也さん、母が樹木希林さん、夫が本木雅弘さん。
・「おかあさんといっしょ」の2019年9月の月歌である「たいこムーン」の作詞者。
・早坂暁さん脚本のドラマ「花へんろ 風の昭和日記」で、女遍路を演じた樹木希林さんの娘役として「小きりん」という芸名で出演していた。
という3つくらいだった。
2022年8月29日(月)の文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」にゲスト出演し、ラジオを通してはじめてじっくりとお話を聴いた。落ち着いた喋り方で、まるで樹木希林さんを彷彿とさせるようなたたずまいだった。ま、親子なのであたりまえだが。
小さい頃からの親子関係から始まり、樹木希林さんを看取るまでの話を聴いているうちに、目頭が熱くなってしまった。
とくに、死を目前にした樹木希林さんが、その2週間ほど前の9月1日に突然、「死なないで」とつぶやいたという話。そこにどんな意味があったのかを、内田也哉子さんの語りで聴いたときには、ちょっと涙腺が崩壊した。
さて、この番組の中で、内田也哉子さんは、次のようなことを言っていた。

父の内田裕也は、自分が生まれてから数えるほどしか会っていないし、まったく家にも寄りつかず、母がなぜ離婚しようとしないのか、自分はほんとうに愛されて生まれてきた子どもなのか、と、子どもの頃はそのことに悩んでいた。
しかし年齢を重ねるにしたがって、父のことがなんとなくわかるようになってきた。たしかに表面上は、常識外れで自分勝手なところがあるが、芯のところにはジェントルマンな部分があることに気づいた。それでようやく父を理解できるようになった。

と、正確ではないが、たしかこんな話だったと思う。
私はこの話を聞いて、そうか、そういうことなのか、と気づいた。
内田也哉子さんが「おかあさんといっしょ」の月歌のために作詞した「たいこムーン」の歌詞には、印象的な一節がある。
「きみのまんなか みーつけた」
そうか、この歌は、父の「芯の部分」に気づいた内田也哉子さんが、父に向けて書いた歌だったのではないだろうか。
私はそのことに思い至ったとき、「たいこムーン」の不可解な歌詞の謎が解けた思いがして、ますます涙が止まらなくなった。

先日(2024年2月16日)、TBSラジオ「武田砂鉄のプレ金ナイト」にゲスト出演し、そこで標記の本を刊行したことを知る。『週刊文春 WOMAN』に連載したものを書籍化したものだという。
病院での検査からの帰り道、必ず立ち寄る有隣堂書店で標記の本を見つけた。目次をみると、谷川俊太郎、小泉今日子、坂本龍一、ヤマザキマリ、是枝裕和、横尾忠則、といった、私にとって「ファン」といえる人々と対話をしていることを知る。この人選が好きだ。著者の目を通したこれらの人たちの思いを、知りたいと思った。

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