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【モルトを知る】スペシャリティモルト(キルンドモルト)編

モルトはホップ、酵母と並び、アロマ、フレイバー、ボディ感、アルコール度数など官能特性に強い影響力を持っています。ビールをビールたらしめる、"The Soul of Beer"なんてカッコいい呼ばれ方もされ、ビール醸造において最も重要な要素の一つです。
そんなモルトですが、意外と軽視されがちなので復習も兼ねてざっくり概要を説明していきます。

スペシャリティモルト

スペシャルティモルトは、ビールをより美味しくするフレーバーや色味を生成するために、より高い温度で乾燥またはローストされたモルトです。でんぷんを糖に変換する酵素力を持たない非酵素麦芽であることが多く、乾燥温度や時間、焙煎工程の有無で3つに分類されます。

キルンドモルト - アンバーモルトやビスケットモルトなど
クリスタル(カラメル)モルト - カラメルモルトや各種クリスタルモルトなど
ローストモルト - ダークモルトやチョコレートモルトなど

キルンドモルト

前回の記事で紹介したベースモルトも熱乾燥を経ているという意味ではキルンドモルトにあたるのですが、スペシャリティモルト編ではよりビールの風味に影響するキルンドモルトについて解説します。
このモルトはベースモルトと同じ基本的な製麦工程で作られ、様々な色や風味を出すために時間と温度を変えてトーストされます。Diastatic Powerを持ち合わせているものが多く、マッシング時に投入することが可能です。

キャラクター

一般的にパンや穀物を連想させるキャラクターを持ち合わせていることが多い。その他乾燥時間や温度に応じてクッキーやビスケット、トーストやモカのようなふくよかな味わいを持つものもある。
一方でライモルトやスモークモルトなど、穀物の種類や特殊な製法によってユニークなアロマ・フレーバーを持つモルトも存在する。

キルンドモルトの種類

アロマティック/メラノイジンモルト

アロマティックモルト(メラノイジンモルト)は、蜂蜜やパン、ふくよかな甘みを加えることができるモルトです。タンパク質と澱粉の高いコンバージョンと、低β-グルカン、酸性といった特徴があります。甘みだけでなくビールにボディを加え、滑らかな口当たりを生み出すのに役立ちます。使用量によって琥珀色から赤褐色のビールをつくることができます。
一部メーカーのアロマティックモルトは50%程度まで使用でき、レーズンやプラムのようなキャラクターがあるが、基本的には10%程度の使用を推奨。
ヨーロッパからアメリカまで、幅広いスタイルに使用することができる。

ビスケット/アンバーモルト

アンバーモルトはビスケットモルトとも呼ばれ、高い乾燥度で軽くローストされている。焼きたてのクッキー(orビスケット)のような暖かい風味を与えるために使用されます。グレインビルの約20%まで使用可能。

ブラウンモルト

ブラウンモルトはポーター、スタウトなど特定の濃色系ビールに使用されるモルトです。ローストモルトほど濃くないが、ビスケットモルトよりは濃い絶妙な立ち位置で、ほんのりとしたロースト感とコーヒーを思わせる特徴がある。ほんのりと甘いスイーツのようなキャラクターも。スタイルにもよりグレインビルに最大で10%程度使用可能。DPはない。

ライモルト

ユニークなスパイシーさを持つライ麦については以前書いた記事を参考にどうぞ。

スモークモルト

ウィスキー、特にスコットランドの蒸溜所で伝統的に使われてきたモルト。ベースモルトを燻製して作られることで、スモーキーでベーコンのような特徴を持つ。また煙に含まれるフェノール成分を麦芽が吸収することで、鰹節やめんつゆのようなキャラクターが出ることもある。グレインビルの100%まで使用可能。
伝統的にはブナを使って燻製されることが多いが、やサクラ、リンゴなどでも燻製される。
ドイツのラオホビールに使用されることが多いが、スモークのアクセントを加えるためにさまざまなスタイルに使用することができる。

長くなったのでここまで。
次回はクリスタルモルト編です。

John Palmer, How to Brew 4th Edition, Brewers Publications, 2017 - http://www.howtobrew.com/
John Mallett, Malt A Practical Guide from Field to Brewhouse, 2014
Brew Your Own - Understanding Base Malt, Briess Malt & Ingredients, https://www.brewingwithbriess.com/


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