【モルトを知る】スペシャリティモルト(ローストモルト)編
モルトはホップ、酵母と並び、アロマ、フレイバー、ボディ感、アルコール度数など官能特性に強い影響力を持っています。ビールをビールたらしめる、"The Soul of Beer"なんてカッコいい呼ばれ方もされ、ビール醸造において最も重要な要素の一つです。
そんなモルトですが、意外と軽視されがちなので復習も兼ねてざっくり概要を説明していきます。
スペシャリティモルト
スペシャルティモルトは、ビールをより美味しくするフレーバーや色味を生成するために、より高い温度で乾燥またはローストされたモルトです。でんぷんを糖に変換する酵素力を持たない非酵素麦芽であることが多く、乾燥温度や時間、焙煎工程の有無で3つに分類されます。
キルンドモルト - アンバーモルトやビスケットモルトなど
クリスタル(カラメル)モルト - カラメルモルトや各種クリスタルモルトなど
ローストモルト - ダークモルトやチョコレートモルトなど
ローストモルト
ローストモルトは高温焙煎した麦芽・大麦の総称です。
焙煎は褐色色素といった色味だけでなく、メイラード反応すなわちアミノ酸と糖の化学反応、または高温での糖のカラメル化、風味、アロマを作り出すことを目的としています。焙煎の工程により高温にさらされることで酵素力はなく、マッシング開始時のみならず煮沸前までのさまざまなタイミングで使用することができる。
適切な量を使用しないとビールに不快な苦味やロースト感を与えるため、基本的にはグレインビルの5%以下で使用されることが多い。
ローストモルトは酸特性があり麦汁のpHを低下させ、角が立ったロースト感が出る場合があるため、軟水を使用する場合は炭酸カルシウムや重曹でpH、アルカリ度のバランスを取る必要がある。もし重炭酸塩濃度が高いイギリスみたいな水を使っている場合は、特に心配しなくてよい。
水について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
キャラクター
焙煎温度と焙煎時間によって、コーヒー、チョコレート、ロースト、キャラメル、トフィー、ナッツ、ビスケットなど、幅広い風味、赤色から黒色までさまざまな色合いを与えることができます。コーヒー豆をローストすると色が濃くなってロースト感が増す感じ、というとイメージしやすいですかね。
ローストモルトの種類
ブラック(パテント)モルト(500-600°L)
ブラックモルトは名前の通り黒いモルトで、ビールの色味に寄与します。ローストのコーヒー的な焦げ感やカカオのような風味がありながら、必要であれば酸味も与えることができる。5%以下の使用を推奨するが10%まで使えるという意見もある。
De-bittered black malt(500°L)
このモルトは色調の調整によく使用されますが、製麦の前に渋みや収斂味の原因となる殻を取り除き、より滑らかなロースト風味を得られるのがこのモルトです。5%以下の仕様を推奨。小麦版もあり、個人的に気に入っているBriessのMid Night Wheatもここにカテゴライズされる。
Chocolate Malt(300-400°L)
チョコレートを使ったモルトと思われがちですが、実際には使っておらず、焙煎時のメイラード反応で生まれた成分がチョコレートを連想させることからこう呼ばれています。
ほろ苦いチョコレートやコーヒー、心地よいロースト感が特徴。たくさん使ってもチョコレートの味にはならないので注意しましょう。
チョコレートモルトより焙煎度が低く、色味の調整が可能なPale Chocolate Malt (200-250°L)もあるので目的に応じて使い分けましょう。
Roasted Barley(500°L)
焙煎された大麦です。モルトではありません。ドライなコーヒーのような風味があり、アイリッシュスタウトには欠かせない原料のひとつです。
スペシャリティモルト3部作もこれにて完結!
ホップと比べて軽視されがちですが、モルト大事ですよ!
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