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バレンタインと麦茶に学ぶマーケティング

バレンタイン=記念日設立マーケティング

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バレンタインデーは、マーケティングの大成功事例である。
最初に誰が仕掛けたのかは諸説あってはっきりしないが、2月14日というきまった日に、女性が好きな男性にチョコレートをプレゼントするものだ、という風習を人工的に作り出したのは快挙である。
この様式は1970年代にはじまったらしい。
最近は、チョコをやりとりする人が減ってきてはいるものの、50年近くにわたって存続しているのはすごい。
今でも、年間のチョコレート菓子販売額の1割程度はバレンタインデー期の販売だと言われている。もう少しすれば、誰も「マーケティング」とは思わずに、「文化」と思うようになるだろう。

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土用の丑も同様だ。うなぎを食べる風習は安永・天明の頃(1772年 - 1788年)に始まったと言われている。一説によると平賀源内、または蜀山人、あるいは諸説あるようだが、当時のマーケッターが人工的にしかけたものだとすれば、まんまと定着しており、まんまとほとんどの人が「文化」だと思うところまで来ているので大成功といえよう。

これらの事例を「記念日設立マーケティング」とでも呼ぼうか。
このようなマーケティングの存在を歴史から学ぶことができる。

この種の「記念日設立マーケティング」で、近年の最大の成功事例は中国ECのアリババが始めた「独身の日」セールだろう。

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日付の1が並ぶ様子が独身を連想することが由来と言われているが、この日をオンラインセールの日として定着させたのがアリババで、上図の通り、独身の日だけで(2020年については11/1〜11/11の期間)販売額が8兆円に上るという。

麦茶=セルフカテゴライズマーケティング

ここまでは結構有名な話なので知っている人も多いかもしれない。
他にも、歴史に学べるマーケティング戦略はないかと調べてみると、さらにすごい手法がほとんど意識されることなく身近に存在しているのを見つけてしまった。


土用のうなぎやバレンタインチョコと同じくらい、大成功しすぎて誰もマーケティングだときづかないレベルのものである。

それは...

...

....




麦茶である。

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麦茶に学べるマーケティング戦略は「セルフカテゴライズ戦略」とでも呼べるようなものである。


みな、何の疑いもなく麦茶を麦茶と呼んでいるが、よく考えたら、不思議だと思わないだろうか?


麦茶は麦の種子を煮出した汁のことである。
実はまったく「茶」ではない。いっさい茶は入っていない。

まったく茶とは関係ない種類であるにもかかわらず、「麦茶」という名前があるがゆえに、なんとなく茶の一種として認識されている。


「お茶いろいろあるけど何がいい?緑茶にする?麦茶にする?」

などとあたりまえのように会話に登場するがよく考えたら

「お茶いろいろあるけど何がいい?緑茶にする?コーラにする?」

というのと同じように変な話である。


しかし、誰もここに疑問をいだかないのは、ひとえにこの「麦茶」という名前による。
ものすごいマーケティングではないだろうか。
最初に誰が仕掛けたのかははっきりしないが、麦茶を麦茶と呼ぶことによって、何か茶の一種のようなものと認識させることに成功している。
麦茶は、現代人にとって、数ある飲み物の中でもかなりポピュラーな部類といえよう。

これが、「麦水」や「麦汁」として世にでていたとしたら、ここまでの市民権を得なかっただろう。

「お茶にする?え?麦汁?へー、君かわってるねー。」

...そういう位置付けになっていた可能性が高いだろうと思う。


自分の会社やサービスを何の分類に位置づけるか、というのはマーケティング戦略として重要である。

僕らは麦汁です、なんて安易にいってはいけない。

麦茶です、と言うか、麦汁です、と言うかによって、人々の評価は大きく変わってくる。

いい例かわからないが一例としてあげるならWeWork。彼らが自分たちをAIカンパニーやシェアリングエコノミーのインフラとしてではなく、レンタルオフィスを営む不動産業としてカテゴライズしていたら、あんなに高い評価額を得ることはなかったであろう。

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WeWorkの上場はうまくいかなかったが、「麦茶戦略」自体はどの会社にも有効なものである。

もしそれが麦汁だったらペットボトルに100円はらったりはしない。

自分たちは茶なのである、と堂々と宣言できるか、そこから自社サービスのマーケティングが始まる。

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