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夏草の季節

降り出した 雨に打たれ 膝を抱えている
傷ついた心 雨音の澱む頃 一人きりの夜が訪れる

憂鬱の影に咲く 花々の沈黙
それは あなたへの黙想 命翳る 花びらの弔い

始まりは いつもそう 落葉の季節の訪れし頃
こうして傍に居られるのは 後どれくらいだろう
降り出した雨に 流れる感情 どうして?
時が流れれば きっともう これ以上は

触れ合えぬ 寂しさへと 融けて行くのに

ねぇ

言葉の覚束ない 闇の奥へと
あなたは逝ってしまった
遺された この場所で 膝を抱えている
夢と現の狭間で 揺蕩う 波の渦巻く 紺碧の世界で

此処は何処?

空へと掛かる虹 訪れし旅立ちの合図
どうして? 一人きり 夜空の下で 明け暮れた
夢を追い掛け 心 慰めた 輝かしき 花々の歌声よ

花葬の焔渦巻く 心象風景
それは憂鬱の影に咲く 花々の沈黙

願いが もし 届くのなら ねぇ
いっそ 抱き締めて せめてもう一度
ほら 星の流れる この地で交わし合った 約束
今ここで 果たしてみせて

憂鬱に咲く この世の絢爛 手を伸ばして
包み込んで どうか この夢から醒めないように
降り止まぬ雨に 打たれ 深く 沈黙する花々

想い出に懐かれながら 眠る
古の教え 永遠の別れを知りながら それでも

もう 二度と この道の途上では
逢えない もどかしさ
二人溶け合い 抱き締め合った
甘い接吻に 絡まる言葉 感情の行くまにまに
無情にも 綻び行く 時の行方を 見た

降り頻る雨に 涙を断たれ 沈黙している
此処は何処? そこは
色鮮やかなる死相の咲き誇る 花々の葬う場所
そうそれは 永遠の道すがら
再び あなたと出逢える 私たちの居場所

光に包まれし 花々の咲き誇る世界
二人の眠る場所

どうか もう一度 この手を握って
空へと伸びる 雲 胸の裡をさらけ出す
それはまるで 果て行く 花々の喧騒のように

それは 散り行く 夏草の季節を終えた 花びらのように
ただ輝かしく あの空を 虹色に染めるから

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